夢見る頃を過ぎても 6




 昨日は制限されていたことが今日はまったく無く、動きも声も自由だった。その分まざまざと感じている自分を感じた。
 カカシの手を拒めない。全身が湯に浸かったように熱くなって興奮する一方だった。腰のモノが熱い。
 イルカはモジモジと膝を擦り合わせた。性器が張り詰めてきつかった。誰も見ていなければ、扱き出したいぐらいに。
 気付いたカカシが腹の下に手を差し込んだ。指先が布地に触れ、イルカの昂ぶりを確かめる。
「ぁっ…くっ…」
 羞恥を感じて体を丸めるイルカの背を、カカシは優しく包んだ。
「イルカ、力を抜いて」
 ちゅ、ちゅ、と肩口を啄まれる。指先はイルカの熱に触れるだけだった。
「イルカ」
 もう一度呼ばれて、イルカはそろそろと強張りを解いた。甘い声に逆らえない。カカシの手は優しかった。腕も胸も、イルカの為にあるように触れてくる。
 カカシの指が褌を潜って直にイルカの熱に触れた。ぺたりと張り付いていた布が先端から離れて、先走りを零していた事に気付いた。
 かぁっと頬を火照らせたがカカシは何も言わない。揶揄されずにホッとすると、熱に絡んだカカシの手が柔くイルカを扱いた。
 穏やかに手を上下されて腹筋がひくつく。
「気持ち良い?」
 イルカが頷くと、ちゅっと頬で音が弾けた。
「イルカ、こっち向いて」
 振り返ると唇が重なった。
「んっ…ぅっ…」
 口吻けしながら扱かれると快楽が強くなった。
「ふぁっ…あっ…カカシ…」
 口吻けを返すことも出来ずに喘ぐイルカの唇をカカシは小さく啄んだ。
(またやって欲しい…)
 舌を絡めるやつを。
 カカシに向かって惑うように泳ぐ舌先をカカシは見逃さなかった。かぶり付くように唇を合わせると深く舌を差し込んでくる。根元から掬い上げ、ちうと吸い付かれると、ガクガクと全身が震えた。
 熱を扱く手が早くなり、くちゅくちゅと淫らな音が辺りに響いた。
「あっ…あぁっ…あっ…あ…っ」
 膨らんでいく快楽にぎゅっとカカシの袖を握った。
「あっ…でるっ…あーっ、あぁー」
 ぐりぐりと先端を苛まれて、イルカは精液を吐き出した。びゅくびゅくと白濁を飛ばす毎の快楽は深く、カカシの腕の中で息が絶え絶えになった。
 頬を火照らせて、はふはふと呼吸しているとカカシが体を起こした。温かかった体が離れてひやりとする。
 ぼうっと熱に浮かされたままカカシを見ていると、するりとカカシの肩から着物が落ちた。白い肌が露わになる。裸になったカカシは褌を着けておらず。自然体の中心が目に付いた。唯一色彩を持ったソコは赤黒く、隆々と天を向いていた。
 カカシはイルカの傍に座ると褌に手を掛けた。精液に濡れた褌を外される恥ずかしさにイルカは堪えた。
 洗濯の事がチラリと頭を過ぎる。
(あれをどうやって洗濯に出そう…)
 そんな心配はカカシの顔が股間に近づくと消えてしまった。
「あ…いや…」
 もじ、と膝を曲げて逃げを打つと、足首を引かれた。
「あっ」
 カカシの体の下に引き寄せられて、片足を高く持ち上げられる。大きく足を開く恰好になって、慌てて膝を閉じようとするが、カカシの手がそれを留めた。
「はぅっ…あぁっ…」
 達して敏感になった性器に舌が触れる。ひちゃひちゃと舐められて体が跳ねた。持ち上げて裏筋を舐められると、言いようの無い震えが全身に走った。
「あっ、あっ…ぅんっ…あぁっ」
 熱い口腔に包まれて、じゅわっと溶けた気がした。
 頭を上下に動かされると、あまりの気持ち良さに涙が溢れた。
「あぁっ…あっ…んっ…ふっ…んんっ…」
 じゅっ、ずっと忙しない水音が弾けた。先走りが溢れ、カカシの唇から溢れ出たそれは竿を濡らし、後口にまで達した。
 カカシの指がそれを塗り込める。固く閉じた穴を指で擦られて、背中を引き攣らせた。ぐっと力の入った指先が体の中に入ってくる。
「んんーっ」
 仰け反って逃げようとしたが、実際には体は動かなかった。カカシのせいじゃない。快楽に力が抜けて動けなかった。
 カカシの長い指が中で蠢く。ある一点を押されると、ビリビリと全身が震えた。
「はっ…あっ! だめっ…あーっ」
 射精した時の甘さの比じゃなかった。抉られると、涙がボロボロ出てきた。昨日もそうだった。気持ち良くて堪らなかった。
 前を舐めながら後を刺激されると、甘さはいっそう強くなった。
「あっ…また、でる…っ」
 込み上げてくる射精感にイルカが漏らすと、カカシが口を離した。
「あっ…なぜ…」
 淫らな質問だが、イルカはそうと気付いてなかった。頭の中は射精することでいっぱいだった。
「あ…、あ…、もう…出したい…っ」
 無意識に腰を揺すって強請るイルカにカカシの喉が鳴った。
「まだだよ、イルカ」
「やっ」
 我慢出来ないと眉間に皺を寄せると、奥を探っていた指がずるりと抜け出た。どれほど広げられていたのか大きな喪失感が襲う。
「あ…っ」
 煽られた欲が出口を求めて渦巻く。ひっ、ひっと嗚咽を零すとカカシが覆い被さって来た。両膝が引き上げられ、大きく足を広げられる。
「イルカ、力抜いて」
 カカシが耳元で囁いた。
「んっ」
 返事すると、熱の塊がさっきまで指で弄られていた所に触れた。入り口を広げて中に這入ってくる。
「は…あぁ…」
 ぬぬぬと腸壁を擦りながらカカシの熱は体の奥まで届いた。体がピタリと重なる。目を閉じて、はぁっと吐き出したカカシの呼気が頬に触れた。
 訳もなく涙が出てきた。
「…痛い?」
「いいえ…」
 何故か胸がいっぱいになった。この感情がどこからくるのか考えてみるが心当たりはなかった。
 こめかみに流れ落ちる涙をカカシの唇が吸った。顔中啄まれてくすぐったい気持ちになった。
 きっと恋人同士の交わりはこんな感じなんじゃないかと思った。そう思うと胸の中が温かくなった。同時にきゅうと捩れるみたいに痛くもなった。
 初めての感覚だった。
「動くよ」
「…うん」
 照れ臭くて小さく顎を引くとカカシが腰を引いて、中にあった熱がずるりと抜け出た。
「はぅっ…はぁ…あ…あ…」
 押し戻されると大きな波に飲み込まれる気がした。ゆさゆさと体を揺さぶられる。思わずカカシの背中に縋り付くと、カカシが嬉しそうに口許を緩めた。
 繋がった所が燃えるように熱くなり、擦れる度に快楽が溢れた。くちゃ、くちゅと水音が鳴る。
「あっ…ア…あぁ…はっ…」
 次第にカカシの動きが速くなって呼吸が追いつかなくなった。苦しくなって逃げを打つ体をカカシの手が引き留めた。肩を抱かれ、激しく突き上げられる。
「はっ…あぁっ…あっ…ぁっ…」
 カカシの呼気も忙しなく、聞いていると頭の芯まで熱に侵された。
 体の中に満ちた快楽が出口を求め始める。性器がビクビクと震えて今にも射精する素振りを見せた。
「あ、あ…カカシ…っ、も…」
「もう出そう?」
 ガクガクと頷くと、肩を掴んでいた手が離れて性器に絡んだ。追い上げるように扱かれて背筋が反り返った。
 押し寄せる快楽に意識が飛びそうになる。
「あぁっ、あぅっ…ああぁっ!」
 激しく穿たれながら前を扱かれて目の奥が白く焼けた。びゅくびゅくと性器の先から白濁が溢れ腹に飛び散る。同時に体の奥でカカシが射精して、どくりと腹が波打った。
「く…っ」
 噛み殺したカカシの声が聞こえた。抱き締める腕が締まり、やがて緩んだ。
 解けた手が額に伸びて、汗に濡れたイルカの髪を掻き上げた。ちゅっちゅっと口吻けられる。
 イルカはカカシの背中に手を残したまま目を閉じた。まだ早い鼓動が胸を波打たせていたが、慣れない情交に疲れ切っていた。
 心地良い眠りが押し寄せて来る。
「イルカ、寝ちゃうの?」
 カカシの声が聞こえたが返事出来なかった。
(目が覚めても居て欲しい…)
 眠りに落ちながら腕に力を込めると、カカシの重みが伝わって来た。


text top
top