夢見る頃を過ぎても 2
男の手が褌に触れる。たったそれだけで、濡れた褌が性器の先端に張り付いているのが分かった。興奮して、先走りまで零していた。
体を捩りたい、と願ったがそれも叶わなかった。大の字に体を広げたまま、男の視線の前に興奮した状態を晒す。じくりと目の奥が熱くなって涙が零れる。それを見た男がイルカの性器に触れた。布の上からでなく、直接。褌を緩める事をせずに、中に入れた手で勃起した性器を外に取り出した。
「あぁっ」
直接触れられる刺激に、甘い声を上げた。言う間でもないが、口吻けた事が無ければ、他人に体を触れられた事もないイルカは、性器を他人に触れられた事も初めてだ。自分でソコを擦ると気持ち良いのは知っていたが、他人に触れられると、もっと気持ち良い事を知った。
「やっ…ぁっ…やぁっ…」
男の手が上下に動き出すと、快楽が濁流となってイルカを飲み込んだ。
「ぁっ…ぁっ…ぁっ…」
さっきまで出せなかった声が、喉から押し出されて止まらなかった。瞬く間に射精への感覚が高まり、ピンッと足が吊った。
(もう出る…っ、イク…っ)
そう思った時、男の手が緩んだ。射精への感覚が遠退き、何故? と男を見ると、口を開いた男がイルカの屹立を銜え込んだ。じゅっと溶け出しそうなほど熱い口内に包まれて歯を食いしばった。そうしないと体が溶けていきそうな気がした。ひたりと張り付いた舌が性器を扱く。その快楽の甘さにただ喘いだ。
「ぁ、…はぁ、はぁっ、ぁ…」
忙しなく呼吸する度に嬌声が漏れた。ぐんっと性器が張り詰めると、男はイルカの先端をひちゃひちゃ舐めた。敏感な小穴を舐められて、腰がビクビク震える。
(あ、ダメっ、でる…っ、もう離してっ!)
伝えたかったが術が無かった。必死で男の口に出さないように堪えようとしたが、快楽の方が上回った。強く吸い上げながら根元を扱かれて、一気に階段を駆け上がる。
「ぁぁっ!」
快楽が背骨を焼き尽くしながら脳天へと駆け上がり、男に咥えられたままイルカは射精した。びゅるるっと吐き出された精液を、男は口を離さず受け止めた。その喉がこくりと動くのを見て、イルカは意識を遠ざけた。
(あんなの飲むなんて……)
それこそ夢だと、もう一度眠りの中へ戻りたかった。そして朝目覚めた時にはすべてを忘れていたい。
そう願っていたのに、男のすることはまだ終わりじゃなかった。ひちゃ、ぺちゃと萎えたイルカの性器に舌を這わすと白濁を舐め取る。
すっかり綺麗になると、男はにこっと笑顔を浮かべた。この場に不釣り合いな笑顔に、はっと見惚れる。どこかで男を見た事がある気がしたのを思い出した。
(どこで…? どこでだったかな…)
男がイルカの褌を解くと足を広げた。あんなに動けなかったのに、男はいとも簡単にそうした。試しにイルカも自分の足に力を入れてみるが、自分の意志では動かせなかった。
イルカの足を広げた男は、膝裏を掴んで押し上げると、まるで赤ちゃんがおしめを替えるような恰好にした。
(わっ!)
あまりの恰好に暴れたくなった。動けないのは嫌と言うほど理解していたから、じっと我慢していると、男はとんでもない暴挙に出た。なんとイルカのお尻の穴を舐めたのだ。
(ぎゃっ!)
あまりのことに、男の頭がおかしいのではないかと思った。でなければ、そんなこと出来る筈ない。
目蓋を伏せて、熱心にソコを舐める男に嫌がるそぶりは全く無かった。ネコが毛を舐めるように、当たり前の事のようにそうしていた。
男の手が尻を掴むと左右に割って、舌を潜り込ませてきた。ぐねぐねと体の中で舌を動かされて、叫び出したくなる。
だけど、暫くそうされていると、おかしな感覚が湧き上がってきた。
何故かお尻が気持ち良い。
イルカの性器が勃ち上がりたそうに、ふるんと揺れた。その変化を、男は見逃さなかった。快楽を増長させるように前を扱く。
「ぁっ…はぁっ…ぁ…」
声を出さないように唇を噛んだ。お尻を弄られて気持ち良くなってるなんて知られたくない。俺はそんな変態じゃない。男の指が中に潜り込んだ時も、そう思っていた。
だけど男が中のある一点に触れた時、イルカの体は変化した。凄まじい快楽が湧き上がって、前が勃ち上がる。ぐうっと腹側に押されると性器の先端まで痺れた。
「ぁっ……ぁっ…ぁぁっ…」
男の指が抉るようにソコを突く。イルカの性器はもう男に触れられていなかったが、たらたらと先走りを零した。
(やっ…、俺、おかしい…っ)
過ぎる快楽に顔をぐちゃぐちゃにして泣いたが、男は止まらない。ぐぅっとイルカの両足を肩に付くほど押し上げると、体を近づけた。
なにをするのだろうと見ていると、裾だけ割った男の着物から、昂ぶりが見えていた。イルカのよりずっと大きくて色も濃く、それが天を向いて勃ち上がっている。
そんなものが男に付いていたのが意外だった。男が綺麗だったから絵を見るようで、そんな生々しい行為が無縁だと無意識に思っていたのだ。だが、その男が自分の屹立を掴むと、イルカの穴に向けてくる。
何が行われるのか悟って、ぎゅっと体に力を入れた。だけど、イルカの体は押し込まれた熱を従順に飲み込んでいった。
(あっ…あっ…)
イルカは声にならない声を上げた。男が体の中に入ってくる様は、言いようのない快楽だったのだ。ぬぬぬぬと狭い腸壁を押し広げられて噎び泣いた。これで男が動き出したら、どうなってしまうのか…。
奥に届いた男が腰を引くとジンと痺れた。そして再び押し込まれると、その衝撃は脳天にまで届いた。男が抽送を始めると、腰が溶鉱炉のように熱くなる。そこから快楽が溢れ出して、イルカは啼き喚いた。
「あぁっ…だめっ…だめぇ…っ、あっ…いいっ…」
イルカが快楽を吐露すると、男は動きを激しくした。乳首や性器にまで手を伸ばすと、同時に弄ってイルカを責めた。
「あぁっ…あっ、あっ…あぁっ…」
快楽にイルカが泣きじゃくると、男は優しくイルカの唇を吸った。
「イルカ、イルカ? 気持ち良い?」
すぐ近くで優しく目を覗き込まれて、イルカはこくこく頷いた。
「いい…っ、いいっ…」
「そう」
男は安心したように微笑むと、イルカの唇を塞いで口の中を掻き回した。イルカは男の背に腕を回すと、その舌に応えた。上も下も男に満たされ、倒錯した気持ちになる。全身を男に包まれて、酷く安心した気持ちになった。
心を許すと快楽はもっと深まり、甘えた啼き声が上がる。いつの間にか声が出せるようになっていたことに気づかなかった。
「あっ…あッ…んあっ…あっ…」
「イルカ、そろそろイくよ? いい?」
優しく男に促されて頷いた。両手両足をしっかり男に絡めてしがみ付く。そうすると、男はイルカを見てふわっと笑った。イルカもこれで良かったのだと、安心して笑い返した。そうする事を本能で知っていた。男に微笑まれて、誉められたように嬉しかった。
男の動きが速くなる。快楽が増して出口を求めた。だが弾けない。先の詰まった水鉄砲みたいに押し寄せるモノが堰き止められた。
(ま、前…っ、前を扱きたい…!)
イルカははしたなくそう願った。だけど手を離すと、男から振り落とされそうだ。でも前を扱かない事にはイけなかった。
「あっ…あっ…あぁっ」
苦しいほどの快楽に、さっきまでとは違う意味で泣いた。
「あっ、…もうイキたいっ…! 前…、触って…!」
男の背中に爪を立てて強請ると、男はイルカの耳に唇を寄せた。
「イルカの中に出していい?」
耳に吹き込んだ熱い息に首筋を痺れさせながらイルカは頷いた。
「いいっ、い…っ、だから、はやく…っ」
「うん、りょーかい」
男はイルカの頬に口吻けると、イルカの性器を手に包んで扱いた。後ろと前の甘さに一瞬我を忘れた。
快楽は深く大きくイルカを飲み込んだ。自分の顎にまで白濁を飛び散らせてイルカはイった。射精したのを気づけなかったほどの快楽だった。
痙攣する体を男が押さえ込むように腰を押し付けていた。ビクビクッと中で男が震え、じゅわっと温かさが広がるのを、遠退いていく意識の中で感じた。熱い吐息を吐き出した男の唇が鼻傷に触れる。
「イルカ…」
愛しげに顔を撫でる手を感じながら意識を手放した。
とても大きな幸福感に包まれていた。
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