浮空の楽園 4
気付くと、背中にカカシさんの体温を感じた。俺は狭いベッドで、カカシさんに抱かれて眠っていた。
(あったかいな…)
夢見心地のまま体を動かせば、腕が締まった。
「イルカ先生…ゴメン…」
眠っているとばかり思ったカカシさんに声を掛けられて、ビクッとなってしまった。
声を返すタイミングを失い、何か言おうと思ったけど、酷く喉が痛かった。喘ぎすぎたせいだ。
「怒っていいよ」
ぎゅっと抱き締められて、逆に体から力が抜けた。
(仕方の無い人だ…)
カカシさんのした事は間違っている。忍として許されない。
だけど、俺にはカカシさんを責められなかった。俺がカカシさんの立場なら、同じ事をしたかもしれないから。
「怒ってません。俺はカカシさんを好きだから、怒れません。怒っていたとしても、アナタを許します」
「イルカ先生…」
首筋に強く顔を押し付つけ、体が撓るほど強く抱き締められた。泣いている気配がする。
「カカシさん…?」
振り返ろうとしたけど、抱き締める力が強くて動けなかった。そのうち「すー」と寝息が聞こえ始めた。
腕の力が緩み、振り返るとカカシさんが眠っていた。
手を伸ばし、額に掛かる髪を掻き上げた。カカシさんの目の下には濃い隈が出来て、あまり眠っていなかったのを窺わせた。
(カカシさん…)
何があってもこの人の傍に居ようと思った。脆くて愛情深いこの人を、一人に出来ないと強く思った。
良い匂いで目が覚めた。差し込んでくる光に入口の方を向くと、いつもは閉じているドアが開いていた。
キッチンを使う音が聞こえる。
時計に視線をやると朝だった。カカシさんは今日も任務だろうか?
いつの間にか体がさっぱりして服を着せられていた。体を起こすとベッドが軋んだ音を立てて、カカシさんが顔を覗かせた。
「おはよー。イルカ先生」
「お…おは…よ…ご…」
眠る前よりも喉が掠れて声が出せなかった。
「ちょっと待って」
一旦消えたカカシさんがコップを持って部屋に入って来た。
「はい」
手渡された水を受け取り、喉を潤す。コクコク飲んで、半分ほど空になったコップから唇を離すと、カカシさんがコップを受け取ってサイドテーブルに置いた。
「お腹空いてるデショ? もうすぐご飯が出来るよ」
さわりと髪を撫でられて、胸が震えた。カカシさんがいつもと違う。前みたいに優しかった。
思わずカカシさんの服を掴んでいた。離したくなかった。傍にいて欲しい。
「カカシ、さん」
「ウン?」
俺の話を聞こうと屈み込んだカカシさんの体に腕を回した。話すことなんてなかった。胸がいっぱいになりすぎて、言葉が出てこない。
カカシさんの胸に顔を埋めた。ただ抱き締めて欲しい。手が俺の後頭部に触れる。指が髪を梳き、強く抱き締められた。
ベッドが撓んで、カカシさんの体重を受け止めた。すぐに軽くなって、離すまいと腕に力を入れると頬を撫でられた。
「イケナイ子」
その言葉にハッとした。甘ったれになった俺を窘める時、カカシさんが使った言葉だった。
「カカシ、さんっ」
顔を上げると唇が重なった。深く口吻けられて唇を開いた。舌を絡め合い、ちうっと吸った。
服の裾から手が入り込んで、胸を撫でた。すぐに尖りを探り当てられ、指先で転がされた。
「あ…ふっ…ぅんっ…」
体中が熱くなる。ぎゅっとカカシさんの服を掴むと、カカシさんが体を起こした。
「やっ」
二人の間に入り込む空気に声を上げたが、カカシさんはさっと服を脱いで、俺の服を掴んだ。上に引っ張り上げられて、両手を上げる。
裸になった体の上にカカシさんが覆い被さって来た。温かな肌が重なり、胸がジンとなる。
キスの合間に下も脱がされた。足が広げられ、その間にカカシさんが体を割り込ませた。カカシさんのズボンが邪魔だったから、引っ張り下ろそうとすると、カカシさんはそれも脱いでくれた。
互いに丸裸になって抱き合う。
カカシさんが唇を離して、人差し指と中指を舐めた。唾液をたっぷり絡めて、二人の体の間に持って行った。後口に触れた指が触れる。
「まだ柔らかい。すぐに挿れてい?」
俺もそうして欲しかったから頷いた。入り口を濡らすように動いていた指が中に這入り込む。
カカシさんの言うとおり、指は抵抗なく這入って奥へ進んだ。中を濡らし、引き抜いた指をまた舐めて奥を濡らす。何回か繰り返した後、足を大きく広げられた。
熱が入り口に触れ、中に這入り込んでくる。それはすでに猛って、強く俺を貫いた。
「あっ…あぁっ…」
全てを埋め込んでからカカシさんが動きを止めた。ひぅひぅ息を吐いて圧迫感を逃がすが、痛みはまるでなかった。あるのは体を埋め尽くすカカシさんの存在感だけ。
めいっぱい体を広げられて、言いようの無い充足感に満たされた。
そのまま柔らかく唇が重なる。軽く啄まれ、啄み返して、舌先を触れ合わせた。
カカシさんの舌が口の中に這入り込み、口蓋を舐める。くすぐったさと痺れが走って体を震わせると、指が乳首に触れた。
もう片方の手が俺の性器を掴み、ゆっくり上下した。激しく感じさせようとするのではなく、穏やかに快楽を掘り起こされる。
「あっ…あっ…」
声を上げると、カカシさんは唇から離れて乳首を吸った。
くるりと全体を舐めた後で乳輪ごと吸い上げる。キチと乳首に歯を立てられて、ビクッと体が跳ねた。
宥めるように乳首を転がされ、唇で扱かれる。
「ふぁっ…アッ…」
強い刺激に身を捩れば、中にいたカカシさんがドクンと鼓動を打った気がした。二、三度中を揺すって、また動きを止める。繋がった所がジンジンした。
カカシさんの頭が隣に移り、乾いた乳首を舐めた。濡れた方は指先で弄られ、唾液の滑りを借りて円を描いたり、爪先で弾いたりされた。
「あっ…あ…っ…あ…」
性器も絶えず刺激され、硬く芯を持って勃ち上がっていた。いつの間にか先走りを溢れさせ、カカシさんの手が動く度にクチクチと濡れた音を立てた。
時折扱く手を早めたかと思うと、全体をもどかしい程ゆっくり扱かれる。緩急を付けた愛撫に悶えた。
もっとして欲しいのか、止めて欲しいのか分からなくなる。
「あ…やぁっ…あっ…あぁっ…」
濡れた先端を親指で抉られて、全身に甘い電流が流れた。
収縮した体が中の熱を締め付けて、カカシさんが小さく呻いた。
一瞬すべての動きを止めたカカシさんが、穏やかに動き出す。ゆっくり抽送されて、中が濡れているのを感じた。カカシさんの先走りだろうか?
その時になって、カカシさんが待っていてくれたことに気付いた。
(唾液だけじゃ、俺が痛いから…)
愛される喜びに全身が震えた。カカシさんに大切にされていた。
カカシさんの体に手を伸ばして脇腹に触れた。するとカカシさんが「しがみ付いて良いよ」と言うように体を倒した。
「カカシ…さん…っ」
「ん…」
吐息が耳に当たり、頬に唇が触れた。カカシさんの背中に手を回して、浮き出た肩胛骨を撫でた。それから俺の中に腰を突き入れ、しなやかに動く筋肉に手を添える。
「あっ…い…っ」
快楽が高まって、背が反り返った。俺の体が動いたことで、突き上げる角度が変わり、新たな波が押し寄せる。
カカシさんが乳首に触れていた手を突いて、突き上げる動きを速くした。
「ひぁっ…あっ…あっ…あっ…」
繋がった所からくちゃくちゃと水音が立った。同時に前を扱かれて、快楽の深さに生理的な涙が勝手に溢れた。摩擦に腸壁が熱くなる。
「アッ…あっ、だめ…っ、あ…っ」
早くなっていく動きに呼吸がついて行けなくなった。筋肉がバカになったみたいに背中が引き攣った。突き出した胸をカカシさんが思い出したように舐めた。
「…っ…あーっ!」
予期せぬタイミングで前が弾けて腹を濡らした。激しい快楽に目の前が眩むが、カカシさんの動きは止まらなかった。
突き上げられて、中から押し出されるように白濁が飛び散る。
「あっ、あっ、まっ…」
後から別の快楽が押し寄せて来て、カカシさんの背中に爪を立てた。それは繋がった所から全てを焼き尽くすように這い上がる。
「…くっ、イルカ先生…っ」
息をするだけで精一杯だった。痙攣する体がカカシさんを締め付ける。狭い腸壁を掻き分けられて快楽が強くなった。
頭の中が真っ白に焼けて弾け飛ぶ。
「…ぁっ」
「くぅっ…」
カカシさんの呻く声が微かに聞こえ、最奥を激しく突き上げられた。大きすぎる快楽に飲み込まれて、何も考えられなくなった。
声を上げていたかもしれないが、俺が感じていたのはカカシさんの精液が腸壁を叩く感覚だけだった。体が硬直して動けない。
だらだら溢れる涙をカカシさんの唇が吸い取った。
「イルカ先生…」
目元に堪った涙を何度も拭われ、次第に視界がクリアになった。
「カ…カシ…さん…」
唇が重なり甘く吸われる。柔らかなキスを繰り返している内に、体から力が抜けていった。
カカシさんが腰を引き、繋がっていた所がひちゃっと音を立てた。まるで皮膚が剥がれたみたいだ。
ぬるりと硬さを失った熱が引き抜かれと、さざ波の様に快楽が走って小さく達した。とぷりと抜けた先端の後を追って、精液が溢れ出す。
お尻が濡れて身動ぐと、カカシさんが中に指を入れた。
「アッ…ダメっ…!」
ヒクヒクと体が痙攣する。
「すごく柔らかくなってる…」
クチクチと中で指を動かされて泣きそうになった。また前が勃ち上がりそうになる。
「カカシ、さんっ」
「…もう一回だけ…」
押し込まれる熱に、脊椎を焼かれた。
体位を変えて何度も挑まれ、動けなくなった俺の体を、カカシさんは大事に扱った。
抱いたまま風呂に入れられ、綺麗にしたベッドに寝かされる頃には意識が朦朧としていた。
「イルカ先生、お腹空いてないの?」
そんな事を言われても、眠くて仕方なかった。うつらうつらする俺の髪を梳きながら、カカシさんは穏やかな顔で笑っていた。
(ああ…、カカシさんだ…)
嬉しくなってへにゃりと笑った。そんな俺の頬をカカシさんが指先で軽く摘んだ。
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