浮空の楽園 3







 三ヶ月が過ぎる頃になると、掴まり立ちをしながらだが、歩けるようになってきた。
 酷く疲れるから長くは立って居られないが、歩けなかった日々を思うと、未来に向かって光が射したようで、嬉しくなった。
 これなら近々家に帰れるかもしれない。
(外はどうなっているんだろう?)
 ここに来てから一度も外に出てなかった。
(もう冬だよな?)
 部屋は空調が効いて、外気にも触れてなかったので、今ひとつ冬になった実感が湧かなかった。それに篭もりっきりだったから、おかしな空想が芽生えていた。
 カカシさんが食材を持って来てくれるから、里は今までと変わりないんだろうけど、実は菌が発生して人類は滅亡したとか、核戦争が起こって、この空間しか人の住める場所が残ってないとか、SFまがいの空想をした。
 自分でも想像力が逞しいと思ったが、一人でいると本を読むか、考えるしか出来なかった。
(外に出てみようかな…)
 カカシさんは任務でいなかった。勝手に外に出たら叱られるかもしれない。
(……どんな様子か見てみるだけだ)
 日の光が見たかった。冬の空気にも触れたい。
 部屋を出て、隣の部屋のドアに向かった。この先がどうなっているのか知らない。
 壁伝いにゆっくり歩いてドアまで辿り着いた。ノブを捻って外に押したが開かない。引くドアなのかと引っ張ってみても開かなかった。
(鍵が閉まってる…)
 こちら側に鍵穴らしき物は見つからなかった。外からしか施錠出来ないみたいだ。
(どうして…?)
 これも安全の為だろうか? だが造りとして可笑しくないだろうか。隠れ家なら、内側からも鍵が必要なはずだ。
 それともカカシさんのチャクラに反応してドアが開くのか。
(ここじゃまるで石牢みたいだ…)
 納得出来なくて、ドアを力いっぱい押したり引いたりした。
 外がどうなっているか知りたくて、力を込めてドアを叩いて耳を澄ましたが、音の反響は返って来ない。
 もう一度叩こうとすると、背後から声が掛かった。
「どうしたの? イルカ先生」
「外に出たいです」
 現れた影に訴えると、困った顔をされた。
「それはオレに言われてもなー…」
「ちょっとだけで良いんです」
「う〜ん…、許可出来ない。オレはココでイルカ先生を守るように言われてるから」
「そんな…」
「本体が帰ってきたら直接頼んで」
 影の意志は硬く、いくら頼んでも外に出してはくれそうになかった。ベッドに運ばれて、しぶしぶ横になる。
「カカシさん、外の様子を教えて下さい。ここは里のどの辺りにあるんですか? 」
 質問を浴びせたが、影は俺に布団を被せ、逃げるように消えた。
 腑に落ちない気持ちだけが残る。
(これじゃまるで監禁されているみたいじゃないか)



 帰ってきたカカシさんに外に出たいと言った。
「ダメだよ、イルカ先生。まだ本調子じゃないデショ?」
「でも、たまには外に出たいです。それに一人でも歩けるようになってきたし。そろそろ家に帰って日常生活が出来る様にリハビリした方が良いと思うんです」
「まだ早いよ。火事になっても、イルカ先生一人じゃ逃げられないじゃない」
「そうですけど…。だったら、散歩ぐらい出来る様にしてください。ここは窓が無いし…。ちょっと外を見るぐらいなら良いでしょう?」
「だからダメだって。もし賊が里に侵入したら? 人質になっても応対出来ないデショ。…イルカ先生、この話は終わりにしませんか」
 次第にカカシさんが、この遣り取りにイライラしているのを感じた。だが、カカシさんの言うことはもっともだが、そうそう火事や人質になる事態は起こらない。
 守ってくれるのは嬉しいが、過ぎると軟禁されているのと変わりない。
 それに矛盾を感じた。最近のカカシさんの態度は以前に比べてそっけないぐらいだったのに、外に出ようとすると執着する。なにか変だった。
「…カカシさん、心配しすぎです。家に帰ったら火事にならないように気を付けるし、人質も、わざわざ貧乏アパートに住んでる俺を選ぶなんてないですよ。だから」
「いい加減にして!」
 突然怒鳴ったカカシさんに吃驚した。付き合うようになってから、カカシさんに怒られたことなんてなかった。
「イルカ先生は何も知らないからそんな事が言えるんだ。オレがどんな気持ちで…」
「あっ!」
 乱暴とも言える力でベッドに押さえつけられた。肩が軋んで痛みに顔を歪めた。
「カカシ、さん…?」
 様子が変だった。俺にこんな暴力的な事をするなんて。真綿で包むように俺に触れていたカカシさんはどこに行ってしまったのだろう。
 哀しくなって目が潤んだ。そんな俺をカカシさんがじっと見下ろしている。そして、徐に口を開いた。
「…里は、アナタを見捨てたんだ。爆発に巻き込まれたと聞いて捜索隊を出してくれたけど、遺体も遺品も見つかって無いのに、爆破の影響で何も残らなかったんだろうって殉職扱いにした。良く捜しもしないで…」
 俺は初めて聞く話にショックを受けた。目覚めた時に聞いていた話と、あまりにもかけ離れている。
(殉職扱いって…)
「俺は死んだことになってるんですか…?」
「そうだよ。オレはイルカ先生を見つけても、里には報告しなかった。連れ戻せば、また同じ事の繰り返しになる。こんな思いは二度としたくない。イルカ先生が居なくなるなんて絶対にイヤだ」
 ポタポタと頬の上で水滴が弾けた。
「…もっと早くにこうしていれば良かった。そうすれば、イルカは事故に遭わずに済んだのに…」
 肩を押さえつけていた手が離れ、頬を撫で、哀しい瞳で見つめられた。
「カカシさん…」
 言葉を続けられなかった。カカシさんを責めることすら出来ない。カカシさんがあまりに傷付き過ぎて、俺の胸まで痛くなった。
「…お願い、ここに居てよ。誰にも見られないで、オレだけの傍にいて…」
 カカシさんの顔が降りてきて、唇を塞がれた。パジャマの裾から冷たい手が入ってきて、腹を撫で、胸へ這い上がってきた。
「カカシ、さん…っ」
 乳首に触れられて身を捩った。話そうとするのを阻むように、口吻けが激しくなる。
 潜り込んだ舌で口の中を蹂躙され、瞬く間に体が熱くなった。カカシさんの愛撫に慣れた体だ。官能的に触れられると一溜まりもなかった。
 考えたいことは沢山あるのに、思考が熱に攫われた。
 唇が首筋に移り、手がパジャマのボタンを外していく。裸の胸を晒され、乳首に吸い付かれた。
「あっ」
 乳首を覆うぬるりと温かい感触に電流が走った。久しぶりだったけど、体はカカシさんの愛撫を覚えていた。くるりと乳首を転がされただけで胸が震えた。
 もう片方の乳首を指で刺激される。きゅっと捻られて嬌声を上げた。
「あぁっ…やぁっ…」
 強い刺激に膝を立てた。逃れようとすると体を押さえつけられる。久しぶりなのに、カカシさんの愛撫は容赦なかった。
 尖った乳首を舌先でたたたと叩く。逃れられない快楽に腰が熱を持ち、性器が頭を擡げ始めた。
「ひぅっ…あ…っ、だめっ…」
 気付いたカカシさんが腰を落として重ね合わせた。体の上で腰を揺すられる。熱を持った性器を捏ねられて、快楽に呻いた。
 服越しにカカシさんの熱も感じた。まるで繋がっているみたいに突き上げられる。
「あっ、あっ、あっ」
 両乳首を愛撫したまま性器を刺激され、目の前で白い光が弾けた。ビクビクと体が痙攣して、熱を吐き出す。
「あっ…あぁーっ」
 甘い快楽に体中が痺れ、はぁはぁ息を乱した。じっとりと濡れた下着が重く性器に纏わり付いてくる。
 カカシさんが動きを止めて、俺を見ていた。
「早いネ」
 顔が燃えるように熱くなる。
「なっ…」
 言い返そうとしたけど、それより早くパジャマを下着ごと脱がされた。
 濡れた股間を見られるのは恥ずかしく、足を曲げて隠そうとしたけど、カカシさんの手が膝を割った。
「あっ、いやだ…、あっ」
 膝を押し上げられ、大きく足を開いた。余すところ無く秘めた場所を見られた。濡れて横たわる性器も下生えも。さらにその下の奥まった所も。
「やだっ…やだっ…」
 恥ずかしい恰好に声を上げた。どうしてこんな意地悪をするのだろう。俺が外に出たいと言った罰だろうか。手を外そうとしても外れない。
 羞恥に体を震わせていると、性器に手が触れた。確かめる様に手で揉まれる。射精したばかりの性器は敏感で、そんな刺激にすら体を跳ねさせた。
「…っ、…ぁっ…」
 ゆっくり上下に扱かれる。中心に芯が通って、カカシさんの手の中で屹立していった。白濁に濡れた性器は滑りが良く、手のスピードは増していく。
「ひぁっ…あっ…あぁっ…」
 くちゅくちゅと音を立てて扱かれて、快楽に身を堕とした。気持ち良くて堪らなかった。
「あっ…ぅんっ…あ…はぁっ…」
 また射精感が競り上がってくる。先走りを溢れさせる鈴口をもう片方の手で弄られた。
「だぇっ…それ…やぁ…っ」
 今にも射精しそうになって、ブルブル震えた。すると先端に触れていた指が離れ、体の奥まった所に触れた。滑りで入り口を濡らされる。
「あっ」
 敏感な所に触れられて、ひくっと両足が跳ねた。指がそこを柔らげようと何度も円を描いた。
(最後までするんだ…)
 朧気に思っていると、窄まりを押されて指が中に這入って来た。腸壁がみっしりとカカシさんの指を包む。
 カカシさんが指を中に置いたまま手首を回した。狭さを確かめる様に二、三度抽送される。体がその先の快楽を思い出し、物足りなさに焦がれた。
 カカシさんの剛直で貫かれる喜びを、早く味わいたい。
 はしたなくそんな事を考えたが、カカシさんはゆっくりと俺の体を解した。
 何度も指を引き抜いて先走りを掬い、体の奥を濡らす。感じそうになると指を引き抜かれてもどかしくなった。
「あ…あ…、…っ…ふっ…」
 強請りがましい声が出るのを指を噛んで耐えた。
「イルカ先生、体から力を抜いて」
 そんな事を言われても、力なんて入れてなかった。久しぶりだから後が狭くなってしまったのだろうか。
(前は柔らかい後口をめいっぱい広げて、カカシさんを飲み込んでいたのに…)
 その時の姿が脳裏を横切って、体をきゅんとさせた。ますますカカシさんの指を銜え込んで動けなくする。
「イルカ先生…」
「あ…だって…」
 切なくて涙が零れた。カカシさんが屈み込んで、噛んでいた手を外した。ちゅっちゅっと頬に口吻けられる。
「カカシさん…」
 両腕をカカシさんの首に回して引き寄せた。唇が重なり、舌が柔らかく絡まる。そうしながら中で指を動かされた。
「ん…んふっ…んん…はぁっ…ぅん…」
 絡まる舌に水音が立つ。カカシさんの唇が離れて、耳を愛撫した。熱い舌が耳朶を舐め、唇で舐られる。尖った舌先を耳の奥に突っ込まれて心臓が跳ねた。
(早くそんな風にして欲しい…)
 穴という穴をカカシさんに塞がれたい。
「ああ…カカシさん…カカシさん…」
 強く好きだと言う感情が湧いて、抱き締める腕に力を込めた。
「イルカ先生」
 カカシさんの声が熱く濡れて、ゾクゾク背骨が震えた。首筋を甘く食み、また唇に戻って深く口吻ける。
 ふいに体の奥まで指が這入り込んだ。
「あっ」
 甘い声を上げて仰け反る俺をカカシさんが体で押さえ込んだ。全部這入っていると思っていたが、そうじゃなかったらしい。奥深くを撫でられて身悶えた。
 しばらくカカシさんはソコを撫でていたが指を引いた。指先だけ残して、別の指がもう一本潜り込んでくる。
「あっ!」
 きついような気がして声を上げた。
「痛い?」
 痛みは無く、首を横に振ると、カカシさんがホッと息を吐いた。
 二本の指を抽送される。さっきより充足感が増して、奥からも快楽が芽生えた。
「あっ…カカシさんっ…あぁっ…」
 指を動かされて堪えきれない声が漏れた。いつの間にか前を放って置かれたけど、気にならないぐらい感じていた。
「あぁっ…あぁ…あっ…は…っ」
 さらに指が増やされ、後孔を広げられる。指がある一点に触れて電流が流れた。
「あぁっ!」
 何度もソコを擦られて、感電したみたいに背中が反り返る。
「おんなじ…」
(え…?)
 カカシさんが何か呟いて、聞き返そうとした時、カカシさんがズボンの前を寛げた。中から性器を出し、数度扱いて硬度を持たせた。ソレを俺の後口に宛がう。
 いよいよだと身構えたが、ひたりと先端を当てたまま、カカシさんの動きは止まった。
「…カカシさん?」
 不思議に思って名前を呼んだがカカシさんは応えず、ぐっと腰を進めて中に侵入した。
(なんだったんだろ…?)
 疑問は残ったが、奥に進まれて四散した。カカシさんの亀頭が腸壁を押し開く。指でされるよりも、ずっと奥まで侵入されて、圧迫感に呻いた。
 苦しい。中から破裂しそうだった。
 ひっ、ひっと息を吐いて、圧迫感を逃がす。
「キツい…?」
 止めて欲しくなかったから、首を横に振った。
「大丈夫、です」
「そう」
 その言葉を信じたのか、カカシさんが腰を引いた。ずるりと性器が抜けて、腸壁が引かれた。
「…っ」
 衝撃に声も出せなかった。声を上げるとカカシさんが止めてしまうんじゃないかと恐れたせいもある。再び押し込まれる熱に息も吐けなくなった。
「んっ」
 奥まで進み、動きを止めてくれたカカシさんに、はふはふ息を吸った。勝手に生理的な涙が溢れ出す。カカシさんがそれを唇で吸い取った。
「カ、カシ、さん…」
(どうして上手く受け入れられないのだろう…?)
 カカシさんと距離が出来てしまったようで哀しくなった。前は一つになるみたいに重なり合えたのに。
 またずるっと引き抜かれる。待って欲しかったが言えなかった。
(あっ…ひっ…)
 我慢している内に体が慣れたのか圧迫感は減っていった。カカシさんの動きもスムーズになり、動きが速くなっていく。
「はっ…あっ…あ…っ」
 ぐちゃぐちゃに掻き回されて、訳が分からなくなる。
 カカシさんが足を持ち上げ、突き上げる角度を変えた。指で触られてとても感じた所に先端が触れる。ぐっと突き上げられて、目の前に星が飛んだ。
「あぁっ!」
 連続してそうされると、苦しみは消えて快楽しか感じなくなった。
「ひっ…ぁぁう…あ…っ…あ…」
 カカシさんの呼吸が荒くなり、抽送が早くなった。絶えず突き上げられて、喘ぐしか出来なくなる。
「あ、あ、あ、あ、あ、」
 快楽が深まり、射精感が強くなる。
「ま、前…っ」
 扱きたいと言おうとしたのか、扱いてと言おうとしたのか。
 カカシさんが俺の性器を掴んで激しく扱いた。
「…っ」
 大きすぎる快楽に耐えきれず、涙を溢れさせた。これ以上されたら死んでしまう、そう思ったとき、
「イルカ…」
 耳元で名前を呼ばれて、頭の中が白く焼けた。
 カカシさんの熱が弾けて最奥が濡れる。同時に俺の前も弾けて、白い精液がびゅくびゅくと腹に飛んだ。
 酸欠気味の脳に、どっと砂糖が落ちてくる。
 出している間も、カカシさんが全てを出し切るように動いて、俺の快楽を長引かせた。
「あ…は…」
 俺も全てを出し切った後、快楽が引くのを待たずにふつりと意識が途切れた。
 




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