時を重ねた夢を見る 6
向かい合い、しゃがみ込んだ膝の上で与えられる快楽に没頭する。下腹に渦巻く熱は出口を求め、熱い奔流となって駆け上がろうとする。
扱く手に、もう…とカカシさんの服を掴むことで訴えた。
あと少し、強い刺激が欲しい、と。
だけど、カカシさんの手の動きは相変わらずでこちらの望むものをくれる気配がない。頬や唇への口吻けはどちらかと言えば穏やかなものに変わり、宥められているような気さえしてくる。
(カカシさん、カカシさん、カカシさん…)
望みを叶えて欲しくて心の中で呼び掛ける。
ふと、顔を離したカカシさんは目が合うとにっこり笑って深い口吻けをくれる。
「うぅ・・っ、んっ・・ぅ・・んっ・・っ」
声に不満が混じりそうになる。舌先で口内を突付かれても辛いばかりだ。
(ちがう、ちがう、ちがう、今、ほしいのはそれじゃない…)
焦れて揺すりそうになる腰を微かな理性で押さえつける。
「あ・・、ゃ・・だ・・っ」
「ん?どうしたの?」
唇を離してのんびりカカシさんが聞いた。
「も・・、ぅう・・んっ・・」
「イルカセンセ、言ってくれないとわかんないよ」
(どうして?)
頑是無い想いに伏せた顔を覗き込もうとしたカカシさんの手が止まりかける。緩慢に感じられた刺激さえ失いかけて思わず腰が浮いた。
ぬるっとカカシさんの手の中を自身が滑り、それに驚いたのかカカシさんの手がきゅっと絞まる。予期せず絞り上げるような動きに堪えようも無い射精感が込み上げた。
「アァっ・・!」
「ん?イルカ先生、動きたいの?いいよ、イルカ先生の好きなように動いてくれて――」
「ちがぅ・・っ」
瞬間、脳裏に自ら動いてカカシさんの手に擦りつける姿が浮かんだ。それは自慰に似て、でもそれ以上に恥ずかしい行為。
(そんなの…できない……)
「ふっ、ううっ・・カカ・・さぁん・・・」
「ダイジョーブ、ちゃんと合わせるから。……動いて」
そうじゃない。そうじゃなかった筈なのに。
言葉が糖蜜となって耳の中へ流れ落ちる。
頑なな羞恥をも溶かす甘い声。
促すように柔らかく背中を抱いた腕に腰を引き寄せられ、その動きにまたカカシさんの手の中を自身が滑る。
「あぁっ!」
二度目は耐えられなかった。
堪えきれず腰を動かしカカシさんの手に自身を擦りつける。熱い手の筒を潜り引くタイミングで扱かれると、そこはたちまち膨れ上がり、「もっと」と更なる刺激を欲しがった。
「・・んっ・・んっ、うっ・・・ん・・んっ・・」
次第に動きを早くするとカカシさんの手と唇が動きを再開した。唇は首筋を愛撫し、手は胸から下へ降りて鈴口を刺激する。
「ひぅっ、あっ、だめっ・・でるっ・・」
「いーよ。いつでもイって・・」
クチュクチュと水音が立ち、ぬかるんだ手が性器を苛む。
「あっ、あっ、カ、カシ・・さぁ・・ん・・」
過ぎる快楽に自然と涙が溢れ、それらはすべてカカシさんへと落ちた。ぱたぱたと落ちる涙をカカシさんは微笑んで受け止める。
「キモチイイ?」
どこか満足げに聞かれて、額をカカシの額に重ねる様にして頷いた。
気持ちいい、すごく。
体を動かすたび、甘い刺激がカカシさんの手の中から生まれて腰を溶かす。
熱を開放することだけに意識を集中させる。
だけど、不意に、過去の経験と記憶が重なった。たった一度だけの経験。あの時もこんな風に腰を振った。
性器を包む女の膣。
性器を包むカカシの手。
よく似ているけど、あの時とは違う。
声を抑えることも出来ない。羞恥を忘れさせ、理性が遠のくほどの快楽。
(カカシさんの手、だから…?)
朦朧と考えていると、急にカカシさんの手の動きが激しくなった。
「まっ・・!あっ!ああっっ!」
射精へと促す動きに、あっという間に上り詰め、カカシさんの手の中で精液を吐き出した。
「あ!あ!・・っ!」
その最中も根元からぎゅ、ぎゅっと扱かれ、イったときよりキツイ快楽が体を襲う。
(もう・・だめ・・っ!)
声を上げる事も出来ず、カカシさんにしがみ付いた。言葉の代わりに涙が零れる。
全てを吐き出して力の入らなくなった体をカカシさんは畳の上に横たえた。腰を膝に乗せたまま足を持ち上げるとズボンと下着を抜き取り、むき出しになった足を体の両脇に下ろした。
カカシさんの視線が下に落ちる。
きっとカカシさんの体の幅に開かれた足にどろどろになった中心は丸見えだろう。
カカシさんが手を伸ばし、性器を撫ぜた。ぬかるみを手に取ると下腹に撫で広げた。体の上から腸を掻き回すような動きに下肢が震える。
下肢だけじゃない。
体中が快楽の余韻を思い出したように勝手に跳ねた。しゃっくりが止まらないみたいにカカシさんの手が動くたびにヒクッと引き攣る。
熱くて、熱くて体の輪郭が膨張しているような気がする。
徐にカカシさんが頭と胸の脇に手をついて覆い被さった。大型の肉食獣が仕留めた動物に歯を立てる様な動き。目が光って見えた。
(喰われそう…)
ぼんやり思った。
カカシさんの首筋に赤い筋を見つけて手を伸ばした。
きっとさっきしがみ付いた時に引っ掻いてしまった。
血が滲みそうなそこに手で触れると、カカシさんが擽ったそうに首筋を寄せた。猫が痒いところを掻いてもらう様な仕草。
「センセ、くすぐったいよ」
ふふっと笑って、唇が降りてきた。入ってきた舌を反射的にちゅうちゅう吸い上げた。
「イルカセンセ、かわい・・、すごく、かわいい」
「・・・・・・」
「飛んじゃってるの?」
服を捲し上げながらカカシさんが聞いた。
とぶ、の意味が分からなくて、ぼぅと濡れた唇を見ているとしているとカカシさんがゆっくり胸に顔をうずめた。僅かに隙間を空けると舌を伸ばして乳首を突付いた。くりっと乳輪を舐めると糸を引いて離れ、もう片方も同じようにした。
息を乱すと、激しく舌先で叩かれる。
「ふっ、ぅ、んッ・・ア・・っ!」
興奮はすぐカカシさんに伝わり、カカシさんは顔を離すと体の間を覗き込んだ。
腕を立て俯いたカカシさんの背。服の上からでも隆起する背中の筋肉の動きがはっきりと分かった。それがしなやかに波打ち、カカシさんの髪が腹の上を掃いた。熱い息が茂みにかかり、膝裏から足を広げられる。つぅーっとか細い刺激が竿を這い上がり、頂点まで来ると熱い口腔に飲み込まれた。柔らかい肉に包まれる。
「ふぁっ、あっ!あぁっ!ァあっ!」
ずっ、ずっ、と唇が性器を扱き、口腔で吸い上げられる。口の中では舌が裏筋を押し上げ、急激な射精感に襲われる。
「アっ、や・・っ!でる・・っ!はなっ・・てっ!」
ブルブル足を震わせながら射精感を堪えていると、後口をぬるっと指が滑った。何度か襞を撫ぜると、ぐっと中に潜り込む。
イきそうな衝撃に体を硬くすると一旦動きが止まり、様子を伺うようにして指が動き出した。
「あっ、んあっ、・・あっっ」
探るように中を撫ぜられる。何時の間にか指が2本に増え、腸壁を柔らかく押す。いいところを場所だけ確かめるようにそうっと押して、決定的な刺激を与えず去っていく。もどかしさに足が突っ張った。
中心を含んだカカシさんが何度も喉を鳴らす。外に晒されていたなら白濁した先走りを先から零して床をべたべたにしたことだろう。
「あ・・、あ・・、かかしさぁん、かかしさ・・んっ」
焦れた体がカカシさんの指を締め付けた。くちゅっと音を立て指を飲み込もうとする。
だけど足りない。
飢えた体はそれ以上を欲して、焦げ付くように熱くなる。
知らず腰が揺らいだ。
その腰をカカシさんが撫ぜ、それすらも俺を煽る刺激となり。
「やぁ・・っ、カカシ、さん・・カカッ・・さァん・・」
この焦燥を消してくれる存在の名前を呼んで乞う。唯一満たしてくれる存在の名を。
ゆっくり指が引き抜かれ、同時に自身が空気に晒された。
目を閉じて、やがて訪れる瞬間を待つ。どきどきと心臓が高鳴る。
衣擦れの音がして足が広げられる。それを恥かしいと思ったのはほんの一瞬で、ぐっと蕾を押す熱にすぐに意識を持っていかれた。
蕾をめいっぱい押し広げ、カリの部分が過ぎると勢いでぬっと奥深くまで入り込む。ひっと声を上げるとカカシさんは入り口まで引いて馴染ませるように腰を揺らした。
「ふっ、んっ、・・あっ・・・ぁ・・っ」
ぐちゅぐちゅと音が立ち、次第にカカシさんの動きが早くなる。先ほどは指ではぐらかされたところをカカシさんに何度も突かれ一気に駆け上る。
「やっ・・アッ・・カカシ・・っ、ァアッ!イクっ・・」
「イって・・見ててあげるから、いっぱいイって・・」
「やっ・・みな・・でっ、あっ、あぁ―っっ!!」
見られるのは恥かしい。
見せまいと腰を捩ったところで叩きつけるように腰を突き入れられ、隠す間もなく絶頂を迎えた。同時に体の奥に熱が滾るのを感じ、それが温かくて気持ちよくて、体の力を抜くとやんわり抱きしめられた。