すこしだけ 68
カカシさんがそっと俺の胸に唇を落とす。カカシさんがチラリと視線を上げて、俺がなにも言わないでいると舌を伸ばして胸を舐めた。トクトクと鼓動を早める心臓の上で唇を押し付けたり、吸い上げたりとくすぐったくなるような愛撫を繰り返す。
明るい日差しの中で行われる愛撫は刺激的で、見ているだけで興奮した。
脇腹を這い上がった手が胸の尖りに辿り着いて、カリと引っ掻いた。まだ柔らかなソコを指先で転がして捻り上げる。硬く芯を持ち始めると、ぎゅっと上に押し付けるように潰した。
「んっ！」
強い刺激に甘い電流が走って鼻を鳴らす。腰にかぁっと熱が籠もって、落ち着かない心地になった。
ソコが擦れて赤く熟れ始めると、カカシさんが唇を寄せた。唇を開いて真っ赤な舌を伸ばす。ツンと先端に触れられて、それだけで体が跳ねた。ねっとりと絡められて、その温かさと柔らかさに言いようの無い快楽が沸き上がる。唾液が纏わり付いて、くちゅ、ぴちゃと音が鳴った。
「ん…っ、はふ、…はぁっ…んっ」
吐き出す息に甘い声が混じる。唇を付けて、じゅっと吸い上げられると下肢が熱を孕んだ。頭を擡げようと狭い下着を押し上げる。
その間もカカシさんの手は動いて、もう片方の乳首を弄んだ。絶え間なく与えられる両方の刺激に、だんだん声を抑えられなってくる。
「あ…、あぁっ…」
手の甲を唇に押し当てて漏れそうな声を殺すと、カカシさんが視線を上げた。色違いの瞳でじっと見つめられる。
「イルカ先生、手」
離して、と手首を引かれて頭を横に振った。こんな明るい中で喘ぐなんて恥ずかしすぎる。それでなくてもカカシさんと肌を合わせるのは久しぶりで、緊張しているのに。
「……」
じっと俺を見ていたカカシさんが掴んでいた手を離した。それからニッと挑むように口の端を上げると、徐に体を下げて俺の腰に手を伸ばした。ズボンを掴むと、下着ごと一気に引き摺り下ろす。
「わあっ！」
ぶるんと弾け出たモノに慌てふためいた。手で隠そうとすると、それより早くカカシさんの手に包まれた。刹那、きゅんと快楽が走り抜ける。
「んっ！」
硬直して動きを止めると、カカシさんの手が上下に動き出した。半端に勃ち上がっていたモノが一気に膨らんで芯を持つ。時折親指で裏筋やカリの付け根をぐりぐり押されると、蕩けそうなほど快楽が沸き上がった。
「あっ、あっ、あっ…」
抑えきれない声が漏れて、全身がぶるぶる震え出す。すぐに透明な液が先端から溢れてカカシさんの手を汚した。滑りが良くなると手の動きが速くなった。体が裏返ってしまいそうな快楽に背中が仰け反った。
「ひっ、…あ、だめっ…あっ…あっ…」
どんどん射精感が高まっていく。このまま解放へと導かれていくのかと思った時、ふわりと先端に何か触れた。目を開けると、カカシさんが俺の先端に口付けしていた。角度を変えて何回も。先走りが溢れて、カカシさんの唇に白い糸を引いた。
「あ…、だめ…っ」
カカシさんの口を汚すことを恐れてシーツを蹴って後ろに逃げた。ずっと出していなかったから、俺のは濃くなっている筈だ。
「…カカシさん、い…、そんなこと…」
しなくていいと頭を横に振るが、カカシさんは片手で俺の足首を掴むと易々と引き戻した。そして足を自分の肩に乗せると、もう片方の足は手で押さえて動けなくする。
自然と大きく足を開く恰好にされて、かあっと頬を火照らせると、カカシさんが屈んで中心を飲み込んだ。熱い口腔に包まれて、下肢が溶け出す。カカシさんが頭を動かすと、どっと砂糖に漬け込まれた。そこから生まれる快楽に全身が戦慄く。
「ヒァッ…、あっ、アッ…あ…んっ…あぁっ…」
ずっちゃ、ぬっちゃと音を立てて、自分のモノがカカシさんの口の中を行き来していた。その卑猥な光景から目が離せない。駄目だと思うのに、見ていたかった。カカシさんが俺を受け入れるのを見ていたい。
「アッ…あっ…はあっ…あ…っ」
快楽は凄まじく、目の前まで解放が迫ってきていた。手を伸ばせば掴めそうな距離。だけど、それはなかなかやって来なかった。
カカシさんが加減して、俺をイカせないようにした。
「やっ…あっ…どう…して…」
答えないカカシさんの唇の橋から唾液が溢れ、竿を濡らした。それは後口まで伝わり尻を濡らす。
ひた、とカカシさんの指が濡れた奥に押し当てられた。前触れもなく指が一本押し込まれる。するすると挿入した指に吃驚した。痛みも抵抗もなく付け根まで押し込められる。
「アッ！」
指は中で馴染ませるように動いてから抽送の動きに変わった。カカシさんと繋がった時を思い浮かべて頭の中が煮え滾る。
カカシさんが欲しくて堪らなくなった。早く、早くと頭の中を駆け巡る。指が増えると歓喜した。少しずつ、カカシさんと繋がる時間が短くなっていく。
前と後ろを同時に弄られて甘く鳴きながら、俺の中はカカシさんでいっぱいになっていた。
（早く…、早くカカシさんと繋がりたい）
奥を探る指が三本になって、カカシさんの口が中心から離れた時、やっとだと思った。だけどカカシさんはすぐにはそうせずに、中に指を残したまま俺の隣に寝転がった。
くちゅくちゅと俺の中を弄りながら、耳朶にキスをする。その顔は酷く穏やかだった。俺に笑いかけると、頬を撫でて汗で張り付いた髪を退けたりする。
乱れてるのは俺だけで不安になった。
（もう俺に勃たなくなったのかも…？）
思い起こせば、前に押さえ込まれた時は勃ってなかった。あの時は喧嘩していたけど今は違う。
「…カカシ、さん？」
不安になって、カカシさんの下肢に手を伸ばした。ズボンの上から股間を探り熱の塊を探した。
すると、あった。コチコチに固まったモノが。ズボンの前を寛げると下着の中に手を突っ込んだ。はしたないことをしている自覚はある。でも止まらなかった。直に触れるとソレはますます硬くなる。
「カカシさん…、カカシさん…」
どうして挿れてくれないんだと見上げた。だけどカカシさんは笑って見ているだけだ。カカシさんの指は未だ俺の中にある。
（もう広がったでしょう？）
焦れてぎゅっと握った。カカシさんの眉間に僅かな皺が寄り、フッと息を零す。
「そんなにしたら、イっちゃうよ…」
「あ…っ、だめ……」
握る力を緩めたが、手は離せないでいた。どうして？どうして？と目で訴えるが、カカシさんは何もしてくれない。
（……もう、俺を抱くの嫌になった……？）
――ホラ。イルカ先生はすぐにオレを否定する。
前にカカシさんに言われた言葉が蘇った。
俺はいつもカカシさんにして貰ってばかりだ。そして望みが叶わなかった時は自己否定してきた。そうするのが楽だったから。でも――。
変わりたいと思った。カカシさんの気持ちに正面から応えたい。受け身なのはもう嫌だ。俺もカカシさんを愛したかった。
「……あ、あの、い、いれ…、その、」
必死に自分の中から言葉を探す。こんな時はなんて言えばいいのだろう？パニックで頭の中が混乱した。
「あの、あの…」
カカシさんがじっと俺を見ている。
（あ、あわわ…っ、早く言わないと…！）
「これを俺の中に挿れろ！」
一瞬の間を置いて、ぷーっとカカシさんが吹き出した。背中を丸めてクツクツ笑う。カーッと顔が火照ったが、後の祭りだった。色気もへったくれもない。
笑い転げるカカシさんに涙目になりながら背を向けると、
「ごーかっく」
と、笑いながらのし掛かってきた。くすくす笑われて、耳が熱くなる。
「イルカ先生って男らしい」
「ば、馬鹿にして！」
「してなーいよ！オレ、もうガマンの限界」
「我慢なんてするな！」
「ウン、そーだね」
言うより早く、体を起こしたカカシさんが俺の足を割り開いた。窄まりに熱が押し当てられ、一気に挿入される。
「あぁっ！」
あまりの衝撃に硬直した。だけどカカシさんは止まることなく狭い腸壁を押し広げて奥へ到達した。つま先まで痺れて息が出来なくなる。
「イルカ先生、イっちゃった」
そんなことないと思ったけど、カカシさんが腹を撫でるとヌルヌルした。独特の青臭い匂いもして、あれ？と思う。確かめようとすると、カカシさんが動き出した。ヌクヌクと小刻みに体を揺らされて漏らしそうになる。
「あっ、やぁっ…ま、まって…」
「待てない」
さっきまでと違って、カカシさんは性急に俺を求めた。ずんずん突き上げられて快楽の火花が散る。
「ア、アッ…、カカシさん…、カカシ、さん…っ」
名を呼ぶと、カカシさんの動きはますます激しくなった。俺の体の両脇に手を突いて、ただただ突き上げる。
「あぁっ、あーっ、あぁーっ」
大きく波がうねり、攫われそうになった。手を伸ばしてカカシさんにしがみつくと、抽送していた熱が大きく膨れ上がった。
「…っ、イルカ先生…ッ！」
「あーっ、カカシ…あぁっ」
ビクビクッと体の奥で弾ける熱を感じて、俺もまた解放させた。俺がイク間もカカシさんはぐっと腰を押し付けたままで、最後の一滴まで俺の中に出そうとしているようだった。そんなカカシさんが可愛くて、愛しく思える。
（カカシさんが好きだ）
胸の中に春が広がる。
カカシさんがとても、とても好きだ。