すこしだけ 35



 ヨタヨタしながら何とか自力で家に帰って来たものの、玄関先でまた挑まれそうになって腰砕けになった。くっついては離れる忙しない口吻けに息が上がる。
「ま、待って…っ、カカシさん、待ってください。俺、風呂に入りたいです」
 乾きかけた精液が足の間でねちょねちょして気持ち悪かった。それに足の裏が土でざらざらするし、汗だって流したい。
「……おフロから上がったら、続きしてもいーい?」
 一晩に何度も誘われることなんてなかったから吃驚したものの、強請るように見つめられてコクンと頷いた。さっきのですごく満足したはずなのに、誘われると体がその気になった。俺だってまだまだカカシさんにくっついていたい。それが顔に出ていたのか、カカシさんが体を寄せると俺を抱きしめてきた。
「……イルカセンセ、オレも一緒に入ってい?」
「えっ?!だ、駄目です!」
 耳元で囁かれてぎょっとした。慌てて体を引き離そうとするが、腕が強く締まって抜けられない。
「……どうして?どうして一緒に入ったらダメなの?」
「だって、カッコ悪い…。体洗うところなんて見られたくないです」
「ならオレが洗ってあげる。それならいいデショ?」
「えっ!?」
 返事をする前にひょいと足が地面から浮き上がり、脱げた下駄がカランコロンと音を立てた。風呂場へ運ばれながら、確かにそれなら良いような気がしたが……、
「ちょわっ…まっ…!」
 パチンと点いた風呂の明かりにじたばた暴れた。煌々とした明るさに羞恥心が沸く。こんなに明るい所で素っ裸になる自信は無かった。
「まって…!ま――」
 バタついて、はだけた浴衣の裾から現れた足にぎょっと息を飲んだ。泥と白濁に汚れた足は酷い有様だった。帰り道、幾人かとすれ違ったが気が付かれなかっただろうか?それに買って貰ったばかりの浴衣が汚れている。
 ショックに戦慄いていると、カカシさんが呟いた。
「……イルカ先生、エロい」
「カカシさん!それどころじゃないですよ!」
「え?」
「誰かに見られたかも知れないし、浴衣がドロドロです!」
 泣きそうになって訴えるが、カカシさんはケロッとして笑った。
「大丈夫だよ。浴衣は洗えばいいし、誰も気付いてなーいよ。オレがイルカ先生のこんな姿を誰かに見せるワケないデショ」
 言う間にするすると帯を解いて浴衣を脱がしに掛かった。
「いやっ、いやです…っ」
「…イルカ先生。その姿で抵抗されたら、オレ手加減出来ない」
「なに言ってるんですか!あっ!」
 抵抗むなしく浴衣を掴んでいた手を開かされると、風呂場に放り込まれた。隠れる場所を探してオタオタしてる間に裸になったカカシさんが入ってくる。咄嗟に風呂桶を掴んで前を隠すとカカシさんが「ぷっ」と吹き出した。
「くくくっ、イルカ先生おもしろい…」
「なっ!」
 笑われたことにかあっと顔を火照らせていると、カカシさんがシャワーを出して手招いた。
「ホラ、こっちにおいで。すっりきしたいデショ?」
 誘われて、おずおず近づくと顔にシャワーを当てられる。ゴシゴシ擦られて、ぷはっと息を吐くと桶を取られた。
「あぁっ」
「いつまで持ってるの。オレはね、イルカ先生の体で見てない所なんてないんでーすよ。唇で触れて無い所もないと思うけど?」
 誘うような目で赤裸々なことを言われて赤面した。
「そんなこと言ったって、恥ずかしいものは恥ずかしいんです!」
「イルカ先生の羞恥心って……」
「……なんですか?」
 中途半端に言葉を切ったカカシさんに問い返すが、笑って誤魔化された。
「頭洗うから目を閉じて」
 ん、と目を閉じると纏めた髪を解かれて、肩に髪が落ちた。
「あ、紐!」
「ここにありますよ」
 カカシさんが無造作に置こうとした紐を受け取って眺めた。解かれたことによって初めて見ることの出来た紐は細い糸で編まれ、玉虫色に光っていた。
「綺麗…」
「気に入ったなら、また買って来てあげる」
 ひょいと俺から紐を取り上げると、濡れない所へ遠ざける。その気持ちが嬉しくて、目の前の体に抱きつくと、カカシさんが困ったように言った。
「イルカ先生、そんなことしたら勃つよ?」
 慌てて体を離して反射的に下を見ようとしたら、頭からシャワーを浴びせられた。
「わぷっ」
「…っとに…」
 呆れた声に顔を上げると、カカシさんがしゃこしゃこ頭を洗った。シャワーは蛇口に切り替えられ、湯船に注がれた。
「目を閉じてないと泡が入るよ」
 優しく言われて、ぎゅっと目を閉じる。カカシさんが怒って無くてホッとした。カカシさんの指が地肌を擦る。蕩けるような心地良さにウットリしているとシャワーの音が聞こえた。
「流すよ」
 頷くと頭から泡が流された。手の平で顔を擦られて、カカシさんの手ごと自分の顔を擦った。
「ふふっ、イルカ先生可愛い」
 ただ顔を洗っただけでそんなことを言うカカシさんは変だ。変だと思ったけど、嬉しかったから黙っておいた。カカシさんは頭を洗い終わると、今度はタオルで石けんを泡立てた。体に押しつけられるタオルに身を任せてもいいのか考える。足とかはシャワーで流しても汚れてるし、そこまでさせるのは悪い気がして身を引いた。
「カカシさん、体は自分で洗えます」
「でもイルカ先生、オレの前で体洗うのイヤなんデショ?」
 小首を傾げてそう言うと、カカシさんは俺の腕を取ってゴシゴシ洗った。
(確かに言ったけど……!)
 いいんだろうかと思っている内に背中を洗われる。これがまた、うっとーりするほど気持ち良くて、拒めなくなった。人に洗って貰うのは気持ちいい。時折タオルを掴んだ手が肌を滑ってくすぐったくなった。戸惑っている内にカカシさんがしゃがんで足を洗い出す。カカシさんを見下ろす光景に、さっきのことを思い出してかあっと体が火照った。
「か、カカシさん、もういいです」
「まだだよ、じっとしてて」
 カカシさんは一生懸命洗ってくれてるのに、なんだか勃ちそうだ。もじもじしていると、さあっと素手が足を這い上がって「ひあっ」と声を上げた。こびり付いた精液を剥がそうとしているのか、コリコリと皮膚を引っ掻かれて息が乱れそうになる。油断すると勃ち上がりそうな中心を必死で堪えた。他にもこびり付いた所がないか探すようにカカシさんの手が動く。その手が、するっと尻の狭間に滑り込んで慌てた。
「な、なんで?そこはいいです!」
「ココも洗っておかないと。オレのたくさん注ぎ込んだし」
「平気ですっ」
「だぁーめ」
「あっ」
 後ろに回り込んだカカシさんが俺を押さえ込むと、指を挿入れてきた。深く差し入れて指先を折り曲げると掻き出すような動きをする。
「や、やだ…っ」
「すぐ終わるから我慢して」
 指が入り口へ進むとトロリと生暖かいものが太股を伝った。すぐにまた指を深いところまで差し込むと柔らかく腸壁を掻く。ゆったりした動きを繰り返されて息が上がった。カカシさんの指が動く度にビリッと甘い刺激が走る。角度を変えて擦られると、あのどうしようもなくなるところに触れそうになって息が跳ねた。
「はあ…、あっ…」
 堪えようとしたのに息に混じって声が漏れた。その甘ったるい響きに顔が火照る。カカシさんはただ綺麗にしようとしてるだけなのに、俺の体は勝手に快楽を拾い上げた。それどころか穏やかな指の動きがもどかしくて、もっと強くシテ欲しいと望んでいた。ともすれば揺れそうになる腰を足に力を入れることで堪えようとしたが、そうすることでカカシさんの指をきつく咥えてしまった。
「…気持ちヨクなっちゃったの?」
 不意に問われて体がビクッと跳ねた。
「あ…」
 酷く自分が浅ましい気がして身体が竦んだ。だけど体は隠しようの無いほど昂ぶっている。
(嫌悪されたらどうしよう…?)
 泣きそうになりながら勃ち上がった中心を隠そうと手で掴むと、その上からカカシさんの指が絡んだ。
「カカシ、さ…」
「ゴメン、イルカ先生。シたくなっちゃった。ココでしていい?」
 返事する代わりに首筋に顔を埋めると、ぎゅっと抱きしめられた。カカシさんは優しいから、俺を労って言ってくれた。
「カカシさん……」
 好き、と唇が動いた。だけど胸がいっぱいで喉が詰まって声にならなかった。ぽろりと頬に涙が零れる。
「イルカセンセ…」
 吐息の様な熱い息が首筋に触れて、カカシさんに体を預けた。中を綺麗にしていた指の動きが俺を煽るものに変わり、ぐるりと強く襞を撫でた。前に絡んでいた手が俺の手ごと動きだし、上下に昂ぶりを扱く。
「あっ、あぅっ…、はあっ…」
「イルカセンセイ、こっちは自分でシテくれる?」
 俺の手を掴み直すと自慰するように動かされる。それは恥ずかしいとカカシさんを仰ぎ見ると目元に口吻けられた。
「もっとヨクしてあげる」
 するっと離れた手が腹を撫でて胸へと這い上がる。泡で滑る肌はいつもと違う感覚を残した。まるで舐められてるみたいだ。やがて胸の突起へと辿り着いた指はソコを摘もうとしたけど、つるんと滑って逃げた。
「ひゃんっ!」
 胸から体の奥へ強い電流が流れた様な刺激が走る。思わず後ろへ逃げるとカカシさんにぶつかった。掴めない突起を掴もうとカカシさんが強くソコを捏ねる。
「やっ!やぁっ…!あぁっ…あ…っ」
 胸への刺激は下肢へ直結して熱を滾らせた。込み上げる快楽に堪らず手を動かす。くちゅくちゅと濡れた音が立って、カカシさんが後ろの動きを速くした。前立腺を突きながら中をかき混ぜられて熱が競り上がる。イこうとすると中の動きが止んで指が引き抜かれた。同時に前を掴んでいた手を引き離されて、失速する射精感に頑是無い声が漏れた。
「やぁ…っ、なんで…っ」
 イきたくて暴れようとする体をカカシさんが抑え、腕を纏めて壁に押しつける。
「やだぁっ…あぁっ!」
 ぐっと尻の窄まりに熱を感じ、それが勢いを伴って体の中に這入ってきた。硬く太いものに後孔を擦られる充足感に一気に体が駆け上がる。
「ああっ!あっ!」
 触れられていない前から精液が弾け飛んだ。びゅく!びゅくっと白濁を壁に飛ばすと、まだ未練があるようにゆらゆら揺れる。
「はあぁ!」
 「くっ」と短く息を詰める声がしたかと思えば、カカシさんが動き出した。射精に痺れる体を突き上げられて嬌声が上がった。
「だめぇ…ああっ…!ひあっ…あっ…」
 繋がったところからずぶ、くちゅと卑猥な音がした。腰を回すように突き入れられ、前立腺が擦れた。滑る手に絶えず体を撫で回され、快楽に悶える。
「あ、あっ…あぁっ…、だめっ…しんじゃう…あぁっ…」
 息が追いつかなくて苦しいのに、体は次の快楽を目指して駆け上がろうとした。
「あ…あ…くる…っ、あぁっ、カカシさん…っ、んぁっ…」
「いいよ、イって」
 苦しげなカカシさんの声に下肢が燃え滾った。
「はぁっ…あぁっ…あ!ああぁっ!あーっ!!」
 大きな波が押し寄せて、俺を飲み込んだ。前の射精感より後ろの快楽の方が大きくて酷く体が痙攣した。その弾みでカカシさんを強く締め付ける。
「う…あ…」
 掠れた声が聞こえて、痛いほど体に指が食い込んだ。カカシさんが強く腰を押しつけて腰を振るわせる。ドクッドクッと体の中が跳ねて、奥に精液が溢れるのを感じた。
 全身から力が抜けてしゃがみ込むと、ぬるっとカカシさんが抜け出た。
「イルカセンセ、大丈夫?」
 荒い息の下カカシさんに聞かれたけど、頷くのがやっとだった。


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