すこしだけ 30



 一緒に暮らすことになったのに、カカシさんが持って来た荷物は思ったより少なかった。任務に出掛けるみたいにリュック一つと緑豊かな植木鉢を持って俺の家にやって来た。
 あまりの荷物の少なさに、カカシさんが俺の家に居着くと言ったのは冗談だったのかと思った。でもリュックの中から子供達と一緒に撮った写真と、4代目と写ったカカシさんが子供だった頃の写真が出てくると、本当にカカシさんがここで一緒に暮らしてくれるのだと実感出来て、胸がじんとした。
 植木鉢と写真立てはベッドの傍の窓際に置かれた。洋服は引き出しを一列空けて、そこを使って貰う様にした。今まで俺だけの空間だった所にカカシさんのものが増える。それだけでとても幸せな気持ちになれた。


「あっ…はぁっ…」
「どう?イルカ先生。気持ちいい?」
 その夜、カカシさんはとても俺を丁寧に抱いた。昨日みたいな荒々しさは無く、穏やかな抽送を繰り返した。前立腺意外にも俺が感じる所がないか、体の奥まで埋め込んだ熱で探索する。俺がちょっとでもヘンな声を上げると、何度もそこを擦り上げた。
「あぅっ…やあっ…あ…っ」
「ココ?…覚えておくね」
 そう言うと、違うところに移ってしまうから、俺はもどかしくて仕方なかった。快楽の蕾をあちこちに散りばめられて花開くことが無い。
「…あ、…カカシ…ぁん、あ、……も…」
「イきたいの?」
 ガクガクと顎を引くとカカシさんが胸から唇を離した。
「オレはまだ終わりにしたくないんだケド、……後でもう一回していーい?」
 体中を埋め尽くすもどかしさから何度も頷くと、カカシさんが本格的に腰を使い出した。同時に前を扱かれて、高みへと駆け上る。
「ああっ!あーっ」
 カカシさんの手に包まれたまま射精すると、カカシさんがぐっと腰を押しつけた。「くっ」と短い声が上がり、カカシさんがイッたのだと思う。眉間にシワを寄せて快楽に耐えるカカシさんの顔がすごくエッチで、俺はイッたばかりだと言うのにまた欲情した。
 はっと詰めていた息を吐き出すとカカシさんが腰を引く。熱で痺れた所を擦られて、体がヒクンと跳ねた。
「あ…あ…」
 抜け出そうとするカカシさんを引き留める様に後ろが締まる。つぷんと先端が後口から離れると、体の中が空っぽになったように寂しくなった。
「大丈夫だよ。またすぐに挿れて上げる」
 どんな顔をしていたのか、カカシさんは俺の髪を撫でながら慰める様に額に口吻けた。
 快楽の余韻に浸りながらカカシさんのすることをぼうっと眺めていると、カカシさんは付ていたゴムを外して新しいのに付け替えた。
(…あれって付けたらどんな感じがするんだろ…?)
 そう思うと手が勝手に伸びていた。ゴムを付けて屹立したカカシさんの中心に触れてみる。
「…っっ!」
 突然のことにビックリしたのかカカシさんが腰を引いた。
「あ、ごめんなさい…」
「ううん、いいんだけど…。どうしたの?触ってくれるの?」
「えっ!」
 そんなつもりは無かったからカカシさんに言われて焦ったが、よく考えてみると俺ってして貰うばかりで何もしてない。
 ごくっと唾を飲み込むと頷いた。一度離れて行ったカカシさんの中心を手で包んで握ってみる。
 そこは俺のより大きいカンジがした。ぎゅっと握ると押し返す様に張り詰める。自分にするみたいに上下に擦るとゴムの中でグンと張り詰めた。
 ドクドクと脈打ちそうなほど熱い塊を夢中になって扱く。
「イルカセンセ!」
 噛みつく様に唇を塞がれて喘いだ。カカシさんのをしているだけなのに気持ちイイ。イキそうになる。そのうちカカシさんの手が俺のに絡むと快楽に意識が飛びそうになってカカシさんにしがみついた。
「カカシさんっ、あっ…もう…っ」
 カカシさんは握っていた俺の手を上から掴むと、空いた手で俺の片足を押し上げた。広がった足の間に手を導かれる。自分の手でカカシさんを招く様で酷く興奮した。
「アァ…ア…」
 俺の手を通ってカカシさんが中に這入って来る。根元に辿り着くとカカシさんが俺の手を外して背中へと導いた。
「カカシさん…、カカシさぁん…っ」
 ぐっと肩胛骨に捕まると、カカシさんが動き出した。激しく中を擦られて熱くなる。
「はぁ…、あぁっ、あ…っ」
 カカシさんが動く度に下半身が足の先まで痺れたみたいになって、おかしかった。皮膚の感覚が遠離って、ただ快楽にだけ包まれる。
「あっ!…カカシ、さん…っ、なんかヘンっ…あっ…だめぇっ…」
 動かないで。
 そう言いたかったのに、カカシさんの動きはますます速くなる。
「イルカせんせっ!」
 狂った様に穿たれて、『来る!』と思った時には波にさらされていた。射精する時とは違う、大きな快楽が押し寄せる。
「ああっっ」
 体中がぶるぶる震えて痺れた。歯を食いしばってカカシさんにしがみ付いて、波を受けとめようとした。だけど押し寄せる波は大きくて、カカシさんの動きは止まらない。
 体の中心を熱い波が駆け抜けていった。足の先から脳天までどろどろに溶かされる。
「あっ、あっ、だめっ、だめぇ…っっ」
 ふっと意識が途切れて、ブラックアウトした。

「イルカセンセ、イルカセンセ!」
 ひたひたと頬を叩かれて目を開けた。目の前に心配そうな顔を下カカシさんがいた。
「…カカシさん」
 どうしたんですか?と聞こうとしたら、カカシさんがほーっと大きく息を吐き出した。
「ああ、良かった。突然力が抜けて動かなくなったからビックリして…。ゴメンね、苦しかった?」
 泣きそうな顔で謝られて、もじっとした。
 苦しくなんてなかった。ものすごく気持ち良かった。だけどそれをカカシさんに言うのは恥ずかしくて、もじもじしながら視線を逸らすと、怒ってると思ったのかカカシさんが何度も謝りだした。
「ゴメン、イルカ先生。ほんっとーにごめんなさい」
 癒す様に顔のあちこちに口吻けられて、なんて言おうか考えた。
   足は開いたままだし、カカシさんも中に這入ったままだった。俺が気を失っていたのはほんの一瞬だったらしい。俺のが勃ち上がったままなのが不思議だった。
(あんなに気持ち良かったのに…)
 ずるっとカカシさんが中から抜け出そうとするから慌てて足で体を挟んだ。
「イルカセンセ?」
「…カカシさん、まだイってない…」
「ううん、いいんです。ゴメンね、無茶して。…もうあんなことしないから許して…」
 悄気るカカシさんに隠していられなくなった。
「…違うんです、カカシさん…。俺、気持ち良くて…、あんまりにも気持ち良かったから、気が遠くなっただけなんです」
「でもイルカ先生、イってないよ?」
 腹の間を見てカカシさんが言った。
 そんなの俺が聞きたいよ。
 どうなったんだろ?と首を傾げていたら、カカシさんの顔がみるみる綻んだ。
「もしかして。イルカ先生後ろでイったの?ネ、そうなの…?」
 照れた様な、嬉しそうな顔で聞かれて、俺まで照れくさくなった。
「…そんなの、分りません…!」
 ふいっと顔を背けると両手で戻されて、ちゅうされた。
「嬉しい…。すごく嬉しい」
 言いながら、俺の中から抜け出てしまったカカシさんに「あっ!」と声を上げた。
「カカシさん…」
「いいの。今日はこれですごく満足なんです。……イルカ先生は?シテ欲しい?」
 聞かれると、俺もすごく満足だ。
「いいえ、俺も満足です」
 俺の上から退いたカカシさんが横に寝転がって、ニコニコと俺を腕の中に包んだ。
「イルカ先生、スキ。大スキ」
 髪を弄んだり、頬を撫でる手が甘くてくすぐったかった。肌を重ねるだけじゃなく、こんな風に過ごすのもいいなと思いながら、キラキラと笑うカカシさんの顔をいつまでも見ていた。


text top
top