スキマ 8
再び触れ合った唇に心臓が早鐘を打つ。急かされる様に体が熱くなっていくのを止められない。キスをするには後ろから抱かれた姿勢が窮屈で、きつく絡んだ腕の中で身を捩るとカカシさんに向き直り、その唇を求めた。
もっとキスして欲しい。もっと抱きしめて欲しい。もっと求めて欲しい。
唇が重なるたび欲求が高まる。互いの唇の間から立つ水音が更にその気持ちを煽った。
服の裾から入り込んだカカシさんの手が肌を撫ぜ、その久しぶりの感触に肌が粟立った。
「怖い・・?」
不安げにカカシさんの瞳が揺れ、違うとかぶりを振った。今は触れてもらえないほうがよほど怖い。
「きもちい・・」
はっきりとは告げられなくて、赤らんだであろう顔をカカシさんの肩口に隠して背中に手を廻せば、カカシさんの手の動きが再開して肌を大きく撫ぜ上げた。
「あっ・・」
ざわっと走った刺激に体を震わすとカカシさんの手が服をたくし上げた。促されるまま両手を上げ、服を抜き取られる。その手を下ろす間もなくカカシさんの髪が胸元に触れた。
「んぁっ・・あっ・・」
乳首がぬめり、突然の刺激に驚いて背が撓る。後ろに倒れそうになった体をカカシさんの手が支え、突き出すような形になった胸の尖りを唇に含まれた。
吸う、食む、捩る。
見えない刺激に翻弄される。瞬く間に勃ち上がった乳首を、今度は唇の隙間から覗く舌が強く弾いた。そして弧ね、押し潰す。赤い舌が蠢いて乳首を転がす。
「ぅん・・あ!・・はぅ・・っ」
閉じていたカカシさんの瞼が開き、下から視線が合ってもその動きから目が離せない。
妖しげにカカシさんの瞳が揺らいで体を横たえられた。
「このまま、いい?」
忙しなく口吻ける合間に聞かれ、がくがくと首を振る。ひやりとした畳に体が跳ねると、ちゅっと音を立てて離れ、ベッドから掛け布団を引き摺り下ろすと背中に敷いた。すぐ傍にベッドがあるのに少しでも離れてしまうのが惜しい。カカシさんがすばやく服を脱いだ。両手を廻して首にしがみ付けば口吻けは深くなり舌が絡んだ。入り込んだ舌に上顎を舐められ仰け反る。今まで舌が絡んでいた乳首に指先が触れ、ぬめりの残るそこを摘まんだり弾いたりした。
「あっ!あ!」
今までとは違う強い刺激に甘い声を上げると、首筋を食みながら唇が降りてもう片方の乳首を含んだ。
「アァッ!やっ・・まって、・・っ!」
どういう訳かいつもより感じ方が強い。熱に向かってひとりでに走り出しそうな体に戦いて制止を掛けようとするが、ひっきりなしに背筋を駆け上がる快楽に喉が引き攣り上手く声が出せない。そうこうしてる間にズボンの前が緩んでカカシさんの手が入り込んだ。ぎゅっと握り込まれて声も出ないような快楽に見舞われる。息を詰めると探るように下着の中に入り込んできた手が直に性器を握り込み上下に扱き始めた。それはすぐに芯を持ち、カカシさんの手の中で頭を擡げる。
「・・キモチいい?」
顔を覗きこまれているのを感じるが答えられずにいると、ふわっと唇を啄ばまれた。マシュマロのように柔らかく押し当てては離れる。薄っすら目を開けば目尻に溜まった涙が流れた。目も前には不安げなカカシさんの顔。
「イルカセンセ・・キモチい?」
再び尋ねられ、顎を引いた。
気持ちいい。
(でも出来ればもう少しゆっくり・・)
伝えたかったがカカシさんが視界から消えた。髪が胸を滑り、腹を降りていく。ズボンを下着ごと下ろされ、そこに息が触れた。
「あっ、まって・・だめ・・っ!」
これからカカシさんがしようとしたことに気づいて慌てて制止を掛けたが、温かな口腔に包まれ仰け反った。
「ひゃ!だめ・・っ、カカ・・さ・・、きたな・・」
「汚くなーいよ」
くぐもった声と共に先端を吸われた。尖らせた舌で鈴口を擽られてビリビリとした刺激が性器を滾らせる。くちゅりと下肢から湧き上がる音に煽られて体が熱くなる。上顎と柔らかい舌に挟まれ抜き差しされる。カカシさんがいつも動くようなタイミングで、ぬっくぬっくと追い上げられて溜まった熱が出口を求めて競り上がった。
「あ・・あ・・だめぇ・・でる・・っ、くっ」
離れて、と肩を押すがカカシさんは離れない。限界を感じて息を詰めて耐えるが、抽送する動きがいっそう早くなる。
「やっ!あ!もうっ、・・あああぁっ!」
深く咥えられ、裏筋に舌を当てて吸い上げられると、堪えきれずにカカシさんの口の中に精液を放った。息も吐けないほどの快楽に体を支配される。口を付けたまま、こくりとそれを嚥下されて羞恥が走った。全身の痺れるような刺激に脱力していると、カカシさんの手が膝を押す。開脚するように足を広げられて腰が浮き、その腰の下に布団を詰めらた。
(なんだ・・・?)
濡れた視界を手で擦って目を凝らすと、双丘の間に顔を伏せるカカシさんがいた。
広げられた大腿を押さえる白い手と銀色の前髪から見え隠れする唇と舌。
それが性器に触れ、ドクリと心臓が高鳴った。
すべてを曝け出す格好に足を引こうとするが、宥めるように内腿を撫ぜられ抵抗できなくなる。むちゅっと袋に吸い付かれ、ひくっと体を震わすと、ぬるり、と今まで感じたことのない感触が奥に触れた。
「ひっ!・・あ・・っ!」
駄目!と止める間もなく、ぐっと舌が中に入り込んだ。
汚いと思わないのだろうか。不安にじわりと涙が浮かぶが意に反して体が熱くなる。柔らかな舌が体の中をぬめると、初めての刺激にじゅくじゅくとした熱が生まれ、じゅわりじゅわりと染み込むように体中に広がる。
「ひゃあっ・・ああっ・・」
舌の動きが抜き差しに変わると甲高い声が喉から迸った。壁を擦る感覚に今まで感じたことのないような焦燥が湧き上がる。
熱い湯に浸かったように体が火照り、性器が勃ち上がる。触れられもしないのに先端からぽたぽたと先走りを零してお腹を濡らした。だけどイくには至らなくて、体の中でどんどん熱が溜まる。
「アァッ・・あッ・・カカッ・・っ」
なんとかして欲しくて名を呼べば、視線を上げてにへらっと笑った。
それはもうなんとも嬉しそうに。
(・・・・俺、なんでこの人のこと疑っちゃったんだろ)
あんな顔でこんなこと出来る人が俺のこと好きじゃない訳ないじゃないか。
息も絶え絶えにそんなことを考えているとカカシさんが視線を合わせたまま指を咥えた。唾液を絡めて引き抜くと、また顔を伏せてぬくぬくと舌を動かす。
「や・・もう・・ああっ・・っ」
限界を訴えようとすると舌を掻い潜って指が潜り込んだ。舌よりもずっと奥の壁を擦って広げる。唾液に滑って中が濡れているのを確認すると指は一気に2本に増えた。入り口や中を緩めるように抽送される。
「あっ!ひぁっ・・やぁ・・カカシさん・・ああっ・・」
「ちょっと待ってね・・」
待てない。もうイかせて欲しい。
涙ながらに訴えるがカカシさんの指が中を探る。腸壁を先を曲げた指に擦られ、
「ああぁっ・・っ」
強い快感が体を貫いた。
「見つけた」
カカシさんが指の腹で何度もそこを擦る。コリコリと抉るようにされると体が跳ねた。
「ヤダッ・・やめっ・・アァ!・・ァアッ」
あまりの刺激に涙が止まらない。
あの感覚だった。あの時感じたお腹の底から湧き上がるどろっとした甘い感覚。
肩に付きそうなほどぐっと膝を曲げられ、浮き上がった双丘の狭間にカカシさんの熱が押し付けられた。それは赤黒く滾り、先は濡れている。
「入れていい?このまま入れてい?」
切なく懇願されて何度も頷けば、カカシさんの腰が沈んだ。緩んだ後口にカカシさんの先端が沈み込む。入り口がゆっくり限界まで広げられ、ぶるぶると足が震えた。
「大きく、息して・・」
「あっ・・はあっ・・ああっ」
深く吐き出したところで、ヌヌっとカカシさんが入り込んだ。大きく、熱とぬめりを持ったものが中を広げる。
「はいったよ・・、辛くない・・?」
カカシさんの手が額に張り付いた髪を剥がした。いつの間にか足は下ろされ楽な姿勢になっている。足の間にカカシさんを挟んで、はっ、はっと息を逃しながらお腹の中を感じていた。
今、ここにカカシさんがいる。中でカカシさんを包んでいる。
それがはっきり分かる。
ものすごい充足感に満たされる。
「おっきい・・、それに熱い・・」
ビクビクっと中のカカシさんが震えて、目の前のカカシさんの眉がくっと寄った。
「もう・・なに言いだすの・・」
困ったような声が溜息と共に耳元を擽る。
「・・またおっきくなった・・」
「この・・っ」
ぱくっと耳を食んでカカシさんが動き出した。頭を抱えて、くちゅくちゅと耳朶を捏ねながら慣らすように前後に腰を揺する。ぬっくぬっくと腸壁とカカシさんが擦れ合って熱を持つ。粘着質の水を捏ねるような音が二人の間から上がり、それと同じ感覚が中を支配した。
「あぁ、あぁ、あぁ・・」
弱弱しい声を上げて成すがまま揺さぶられているとカカシさんが動きを変えた。抜き差しから擦る動きに変わり、先端で中を探られる。そこはすぐに見つかり、下から擦り上げられた。
「うぁっ!あ!あぁ・・っ、やだ・・っ」
途端にどろっとした甘い痺れが湧き上がる。突かれるたびに前から先走りが零れる。強い快楽に支配されてわたわたと動く手をカカシさんが押さえ付けた。唇が喉元を降りて乳首に触れる。歯で軽く扱かれてビリビリとした刺激が背筋を駆け下りた。
「ああ・・う・・んっ、あーっ」
逃れられない快楽に仰け反る体を抱きかかえ、カカシさんが抽送を激しくした。擦られ熱くなったそこから甘い痺れが湧き上がる。溶けて形がなくんるような気持ちよさ。繋がってる部分しか体がないような浮遊感に包まれる。
(堕ちそう・・、堕ちる・・っ)
頭の中に光が満ちた。体が強張って痙攣する。堪えきれない射精感に性器が滾る。
啼き声を上げるとカカシさんの手がそれを包んだ。扱かれて、ぬるぬると手の中で滑る。
「アアッ・・ア・・、も・・ダメっ・・」
「はっ、・・あ・・キモチいい・・」
熱く震える息でカカシさんが言った瞬間、目の前で光がスパークした。きゅううとカカシさんを締め付けて、それに抗うように数度、カカシさんが最奥を突き上げた。
「ぁぁっ・・・ァ、・・・っ!!」
泣きそうな声を上げながら、どっと射精した。快楽は一度に納まらず、大きなうねりを持って何度も押し寄せる。ぐうっとカカシさんが体を押し付け動きを止めた。カカシさんの精が腸壁を叩く。温かい液体がお腹を満たし、ビクビクと跳ねるのを体の中で感じた。胸に頭をつけて快楽に耐えるカカシさんになんとも言えない愛しさが湧き上がる。
はっと詰めていた息をカカシさんが吐き出した。脱力しながらも自らの体を支えていたカカシさんを引き寄せて、その重みを感じながら目を閉じた。
顔がくすぐったくて目を明けた。すぐ傍にカカシさんの手があって鼻のキズを撫ぜている。
「ゴメンネ、起こしちゃった」
目を細めてカカシさんが笑う。幸せそうな満ち足りた顔で。
愛しい、と見つめられて視線を逸らした。さっきのことを思い出してまともに顔が見れない。
床の上で掛け布団に包まれているところをみるとそんなに時間は経っていないのだろう。でもソコはじんじんと痺れ、まだカカシさんがいるような感覚を残している。
「・・眠らないんですか・・?」
布団に顔を擦り付けると眠気が襲う。倦怠感が満ちて動くのも億劫だった。カカシさんはそうじゃないのだろうか。
「ん・・なんか勿体無くて・・。なんか・・イルカ先生がすごく感じてくれたから嬉しくって・・。忘れたくないから・・眠りたくないんです」
かあっと顔が火照った。
「そんなこと言ってないで早く寝てください。明日も仕事あるのに・・」
我ながら可愛くないこと言ってるなと思ったがカカシさんは気にした風もなかった。にこっと笑うと、すすっと寄って額を付き合わせる。
「それにね・・ここ」
するっとカカシさんの手が腰を滑った。跳ね上がりそうになった息を耐えて、手を押さえ込む。
「中で出しちゃったから綺麗にしないと・・」
さわさわと悪戯に動く手を引き剥がした。
眠気が吹っ飛ぶ。
そうだった。それをしないといけなかった。
「じ、自分でします。カカシさんは寝てて・・」
「だめだよ!オレがするの。オレが出したんだからオレにやらせて?」
「いいです、自分で――」
「だってイルカ先生やったことないデショ?ちゃんと出来るの?」
「だいじょうぶ・・・!」
だと思う。何とかなる・・筈。
「じゅあ不安だから今回は見てます」
「は?」
「今回が大丈夫だったら次からは一人でしてもいいけど、今回はちゃんと出来るかどうか不安なので、オレ見てます」
「いいですって!」
「ダメです!オレがするか、オレが見てる前でするか、どっちか選んで!!」
「選べるか!!わあ!離せーっ」
怒鳴りつけると問答無用で風呂場に連れて行かれた。抵抗する体力も残ってなくて、結局、カカシさんに洗われてしまった。
ごちゃごちゃ考えてた自分が馬鹿に思える。
それほどのカカシさんは笑顔で俺の世話を焼いた。楽しくて仕方ないって顔ですみずみまで。
焼きすぎるぐらいに。