はなつ光 5





 ぽろぽろと零れ落ちる涙に唇を寄せる。堰を切ったように溢れるイルカ先生の涙が愛しい。
「たくさん不安にさせてゴメンネ、いっぱい辛い想いさせてゴメンネ」
「・・ほんとですよ」
 赤く染まった目元や鼻が可愛い。じゅるっと鼻を啜りながら口を尖らせるのが可愛い。不貞腐れた顔をしながらもオレのしたいようにさせてくれるイルカ先生を心底可愛いと思った。
(もーダメ。たべちゃいたい。)
 思ったまま尖った唇に口吻けると尖りはすぐに解けて顔を赤くした。涙を拭うそぶりで顔を隠してしまう。
(あぁ、もう、かわいいな!)
「イルカセンセイ、だーいすき!」
 腕を押しのけると口吻けた。ぎゅううと閉じた瞼にも。顔中に口吻けるとイルカ先生の表情がくすぐったそうに綻んだ。くすくす笑い出すのに嬉しくなる。イルカ先生が笑うだけで胸が熱くなる。
「好きだよ、好き。イルカ先生がすごく好き」
 熱っぽく訴えるオレにイルカ先生の唇が震えた。
「俺も・・、俺もカカシさんが好きです」
 薄く開いた瞳の端からぽろりと涙を零してイルカ先生が言った。
「うん、・・嬉しい。イルカ先生ありがとう」
 歓喜は感謝に変わってイルカ先生を尊く思う。
 イルカ先生はオレにとってとても大切な人になった。今までも大切だったけど、もっとずっと強く、だ。
 ひたりと寄り添って見詰め合う。そうすると今までの空気とは違った空気が二人の間にあるのが分かった。
 惹かれ合う。とても強く、大切な人になった。
 どちらが先に唇を寄せたのか覚えていない。
 気が付けば夢中で唇を重ね合っていた。イルカ先生がオレのキスに応えてくれる。同じような力で押し返す唇が愛しい。手が髪や頬を撫ぜ回すのを止められない。
(繋がらないと。)
 もっと強く。もっと深く。
 そんな想いに押されてイルカ先生の服の下に手を滑らせた。なめらかな背中を撫ぜ上げると背を反らした。重なった唇から鼻に掛かった声が漏れる。
(シたい。)
 イルカ先生と抱き合いたい。裸の肌を重ね合わせてそれから、とその先を漠然と想う。
「んっ、・・ふっ・・」
 重なっていた唇が離れた。イルカ先生の瞳がおろおろしている。無意識の内に昂ぶった所をイルカ先生に擦り付けていた。かっと羞恥に頬が熱くなる。だけどそれをひた隠して、イルカ先生の瞳を覗きこんだ。
「抱いていい?」
「あ・・、ぅ・・」
 言葉を捜すようにイルカ先生の瞳が彷徨う。その瞳が俯くように伏せられ、やがて頷いた。恥じるように胸に顔をうずめ、背中に回される手にその体を抱きしめれば小さく震えている。
「・・こわいの?」
 横に振られる頭にほっとする。
「き、んちょう・・してる・・だけ・・」
「うん、オレも・・」
 胸に縋りつくイルカ先生から体を離して表情を窺がう。そこに嫌悪は見当たらない。そうっと顔を近づけて唇を重ねた。髪を撫ぜるとイルカ先生が瞼を伏せて顎を上げた。差し出された唇に夢中になる。力の抜けた唇に舌を差し込み、イルカ先生の舌を吸い上げたり擦りつけたりしながら、服の下に手を入れて素肌に触れた。脇腹を撫ぜて、腹や胸を撫ぜる。胸の尖りに触れると先程の痴態を思い出して服をたくし上げた。僅かに唇を離すとその間に首から服を抜き取って下に落とし、自分の服も急いで脱いだ。裸の肌を重ね合わせ、露になった乳首に吸い付く。「あっ!」と声を上げて慌てたように髪に触れてくるのに、舌を出して舐めあげることで止める意思がないことを伝えた。
「ふっ・・うぅ・・っ」
 押し殺した息が時折跳ねてカンジていることを教えてくれる。口に含んだ小さな粒を捏ねて押しつぶせば、イルカ先生の唇から泣き声が上がった。
「あぁっ・・そこ・・や・・っ、もう・・いやだ・・」
「ダメなの?ここはもうダメ?」
 うんうん頷くのに、「わかった」と唇を離して、――隣に移動した。乾いたそこにちゅっと吸い付くと甲高い声で啼く。
「ア!ア!・・だめって・・そこ・・だめって・・」
「それはこっち側でしょ?」
「ひっ、ああぁ・・っ」
 唾液に濡れた乳首を指で挟んで軽く捻ると、イルカ先生が背を反らして身悶えた。つるんと滑って逃げてしまう粒をぎゅっぎゅと挟んで刺激しながら口の中の粒を舌先で弾くとイルカ先生の唇からは喘ぎ声しか漏れなくなった。瞳が蕩けて焦点を失っていく。次第に快楽に溶けていく姿に酷く興奮した。
(もっと乱れるところが見たい。)
 下衣に手を掛けると下着ごと引き摺り下ろした。
「あっ!」
 急に下肢が外気に触れて驚いたのかイルカ先生の瞳に力が戻る。そしてふるんと飛び出したものに頬を染めると咄嗟に手を伸ばした。
 たぶんオレの目からそこを隠したいのだろう。
 だけど己のモノに手を伸ばす様は違うことを想像させてひどく卑猥だ。
「やらしー・・」
 イルカ先生の手の上から指を絡めると扱き上げた。
「ヤ、やだっ!」
 さっと手を引き抜かれてしまったが、さっきの姿は頭の中にこびり付いた。
 本気でやらしかった。この先一番のおかずになることは間違いない。
「へ、へんなこと、しないで・・っ」
「へんなことなんてしてなーいよ。それにココ、どうするの?こんなになってるのに、イルカ先生自分でしないでここはどうするの?」
 こんなに、と数回上下させて手を離すとイルカ先生の唇が泣きそうに歪んだ。瞳が咎める様にオレを睨みつける。
「シてほしい?」
「し、知りません!」
 真っ赤な顔してぎゅっと目を閉じるのに、ねぇと甘く呼びかけた。
「ねぇ、言ってよ。オレにシて欲しいって・・」
 ちゅっちゅっ、と胸元を啄ばんでから乳首を食むとイルカ先生の体がびくびくと震えた。じゅっと音を立てて強く吸い上げると体が跳ねる。その拍子にイルカ先生の先端がオレの腹に擦れて、引き攣れたような啼き声を上げた。
「や・・やだ・・あ・・っ、やぁ・・っ」
 耐え切れないようにイルカ先生の踵がシーツを蹴る。その姿がたまらなくエッチで可愛かった。
「ねぇ、言って?恥ずかしいことなんて何もないよ?もっとイルカ先生にキモチいいこといっぱいしてあげたい。だから、ね?言って――」
「カカシ、さ・・ん・・」
「うん」
 手を伸ばしてさわさわとイルカ先生の頬を撫ぜる。
(さあ、堕ちて来て。そしてイルカ先生がオレのだって確かめさせて。)
 成功確実の任務だって結果をこんなに楽しみに思ったことはない。
 促すように唇を撫ぜるとイルカ先生が唇を開いた。
「・・カカシさん・・・・・シテ・・」
「うん、いいよ」
 心臓が止まるかと思った。生きてきた中でこんなに嬉しかったことはない。
 胸元から肌を辿ってお腹の辺りまで唇を滑らせると、顔を上げて勃ち上がったイルカ先生のモノをぱくっと口に咥えた。


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