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輪っか 11 薬指に光る指輪を見ていたら、カカシさんが手を引いた。顔が近づき、瞼を下ろすと唇が重なる。 だけど、カカシさんの唇じゃない、布の感触が不満で瞼を開いた。 いつもなら、唇が触れる前にさっと下ろしてくれる。 (どうして家に居る時まで口布してるんだ…?) 何の考えも無しにカカシさんの口布を下ろして、ぎょっとした。カカシさんの口元が赤紫色に腫れている。 「あっ!俺が…」 俺が殴ったから…。 「ごめんなさい…」 「違うよ!イルカ先生は悪くない!」 強く腕を引かれて言葉を切ると、ぎゅっと抱きしめられていた。幸せだった気持ちが沈んで後悔に苛まれる。 「イルカ先生は悪くないです!病室であんなことしたらイルカ先生が怒るって…。こうなるって分かってやったから…。オレが悪いんです」 「どうして…?」 戒めのように背中に回された腕を解いてカカシさんを見ると、カカシさんの方が怒られてるみたいに俯いた。赤々しい頬が痛くて手を伸ばす。唇の端が切れ、そっと傷口に触れるとカカシさんが顔を歪めた。弾かれたように手を引くと、カカシさんがその手を掴む。 「心配だったから…。周りは男ばっかりだし。溜まってたら、誘われて流されるかもしれないから…。そんなこと無いと思ったけど!…万が一の事があったらいけないから、それで…」 「俺のこと、信じてなかったんですか…?」 「信じてます!!でもイルカ先生にプロポーズを断られたと思ってたから、他の人に盗られたらどうしようって…、不安で不安で…」 (…この人なんでこんなに自信がないんだろう?) しょぼくれるカカシさんに溜め息が出た。俺が想うのも体を開くのも、カカシさんしかいないってのに。プロポーズされたら、返事なんて一つしかないってのに。 「他の男なんて御免です。想像するのも嫌です。俺が寝たいと思うのはカカシさんだけで、結婚したいのも、愛しく想うのもカカシさんだけです!」 これだけはっきり言えば少しは伝わるだろうと胸を張ると、がばっと抱きつかれた。 「イルカセンセ!」 「いだだだだだっ」 骨が軋みそうなほどの馬鹿力で抱きしめられて息が詰まる。力を抜いてくれるようにバシバシ肩を叩いたけど、耳元でぐすん、と鼻を啜る音が聞こえて諦めた。 俺が結婚したと思って人生最高に浮かれている間、まったく正反対の位置でヘコんでいたカカシさんのことを思うと、その腕を振り解けなかった。 (骨の一本や二本、カカシさんにくれてやる!) そんな心意気で好きにさせていると、やがて力が抜けてカカシさんが顔を見せた。 「イルカ先生、好きです、大好きです。愛してます。一生大切にします!」 「俺もですよ」 ちゅっとカカシさんの傷に口吻ける。真剣なカカシさんが可愛くていじましくて、そうせずにはいられなかった。ちゅっ、ちゅっと啄ばんで、ぺろっと舐めた。 「…くすぐったい、イルカセンセ」 ようやく笑顔になったカカシさんに、じゃれつくように纏わり付いた。恥ずかしがって俯くカカシさんを下から覗き込んで口吻ける。 そうしていると、あっという間に組み伏せられて、カカシさんの舌が口の中に潜り込んだ。絡み合わせると、くちゅくちゅと水音が鳴る。すぐに体が熱くなって、カカシさんを見上げた。 「カカシさん…」 シたいと瞳で訴える。 「でもイルカ先生…、退院したばかりデショ?」 なに言ってんだ、こんな時に。 結婚して、想いが通じたらすることなんて一つじゃないか。 「シたいんです。風邪引いてても、シたいものはシたいんです」 「でも…」 「するったらする!カカシさんに抱いてほしい…!」 「!」 かあーっと顔を真っ赤にしたカカシさんが俺を抱き上げた。お姫様抱っこで寝室へ運ばれる。熱がまだあるのか、自分から誘ったことに羞恥心が沸いて来なかった。いや、安心感のせいかもしれない。 もう、どんなことをしたって俺とカカシさんは夫婦なんだから。 背中からベッドに下ろされて、カカシさんを見上げた。俺の腰に跨ったカカシさんは、すぐに上着を脱いだ。白い肌としなやかな胸元が露わになる。色気を纏った首筋に俺は釘付けになった。 (…カカシさんって本当に綺麗だ。) 続いて俺も脱がして貰えると思ったのに、カカシさんは掛け布団を被って覆い被さって来た。 「…カカシさんっ」 「分かってる。こうした方が寒くないデショ?」 尖らせた唇にちゅっとされて機嫌を直した。ここまでして、もう眠るつもりなのかと思ってしまった。そう言うことならと、俺が布団の端を掴むと、カカシさんの手は離れて服の下に潜り込んだ。口吻けながら肌を探られて鳥肌が立つ。 「寒い…?」 止められたら嫌だと必死に首を振ると、カカシさんの唇が綻んだ。 「イルカ、センセ…」 甘く囁かれて瞼を閉じると唇を啄まれた。唇を割った舌が歯列を舐めて、口を開けると深く入り込んだ。舌を伸ばしてカカシさんのと絡め合う。熱い舌に陶然としていると、手が胸を撫ぜた。指先が小さな突起を捕まえて押し潰す。挟んで、擦り潰されるようにされると甘い痺れが走った。 「んぁっ…あっ…」 喉の奥から甘い息を洩らすと、舌を吸い上げられた。口の外へと導かれて、舌を差し出す。敏感な舌の淵をつーっと舐められて首筋に電気が走った。 「ぁ…、あぁっ…ふっ…ぅん…っ」 口を開けたまま悶えると、カカシさんがぱくっと舌を含んで、口吻けは一気に深くなった。乳首への愛撫は止まず、転がしたり、弾かれたりされて強い快楽が湧き上がる。 「あっ…ふぁっ…んんっ、あっ!はぁ…あぁ…あ…っ!」 一際強くぎゅっと押し潰されて嬌声を上げた。胸への刺激は下肢へ伝わり、まだ触れられてもいない足の間を熱くする。履いたままのズボンの中で勃ち上がろうとしていた。 (触れて欲しい…) でも自分から言い出せなくて、カカシさんの意識がソコへ向かうのを待つ。 服をたくし上げられて両手を上げると裸にされた。拍子で髪紐が解けて髪が散らばった。こめかみから差し込まれた手が髪を撫でつけ、露わになった額に唇が触れる。ちゅっと吸い上げると唇はこめかみへ移動して、つっと離れると舌先で耳朶の淵をなぞった。首筋が痺れるような繊細な刺激に耐えていると、唐突に耳の中に舌を差し込まれた。 「あ!…あっ!やっ、カ、カカシさぁん…っ」 ぐねぐねと狭い所で動く舌は、別の所への愛撫を思い起こさせ、触れられていない体の奥まで熱くする。甘い刺激が全身を駆け巡って身悶えた。足の間が痛いほど張り詰める。 (あぁ…、だめ…っ) 我慢出来ずにカカシさんに腰を押し付けて揺らした。服の中で擦れた性器が張り詰めて、熱を吐き出す。 「ひぁっ!…あぁっ!」 ドクドクッと震えた中心から快楽が走り抜け、下着の中を濡らした。トロトロした熱と甘い痺れが性器を包む。 快楽が引いていくのに合わせて詰めていた息を吐き出した。そして、我に返って赤面した。 「…まだイかせるつもりなかったのに…」 「ごめんなさい…、でも我慢出来なくて…」 カカシさんの顔がまともに見られなかった。俺だけ気持ち良くなって射精したのが酷く恥ずかしかった。しかも自慰するみたいに腰を押しつけて…。 「久しぶりだから、いつもよりカンジてるの?」 「そんなこと…、あっ、やだっ…」 重ねた腰を動かされる。ぐちゃぐちゃになったパンツの中で性器が泳いで気持ち悪かったが、体は快楽を拾っていた。 いたたまれない。体は快楽を求めていて、些細な刺激でも大げさに反応してしまう。 恥ずかしくて、カカシさんの腕の中で小さくなった。背を向けると、カカシさんが剥き出しの肩に唇を付けた。たったそれだけの刺激に体がビクッと跳ねて、背中が引き攣った。 「あ…ぁ…」 「…可愛い。付き合ってからこんなに長く触れなかったことって、無かったよね。リセットされちゃったのかな…?気持ちイーイ?」 肌を撫でられるだけで甘く痺れた。身を捩って体を丸めようとすると、カカシさんはそれを許さず、俺のズボンを膝まで下ろして濡れた茂みごと性器を掴んだ。 「スゴいぐちゃぐちゃ。そんなに気持ちヨかったんだ?いっぱい出てる。こんなとこまで濡れてるよ?」 カカシさんの指が奥へ届く。前から流れ落ちた液を窄まった所に塗り込められて身悶えた。 「や、やだ…っ」 「ウソ。ヒクヒクしてる。…コッチもいつもよりカンジてる?」 「アァッ!」 刹那、体の中を甘い刺激が駆け抜けた。挿入れられた訳でもないのに、カカシさんの言葉だけでそうなった。これから与えられる快楽を想像して体が先走った。期待に性器が勃ち上がる。 媚薬を飲んだように体が暴走していた。 「あ…、カカシさん…、シて…、もうシてください…」 カカシさんの腕に縋りついた。今すぐ挿れて欲しかった。 「…ウン」 曖昧な返事をしたカカシさんに顔を上げると、 「ああっ」 指が中に這入り込んだ。ぐーっと奥まで押し込むと引き抜かれる。 「はぁっ…あっ…」 また這入り込んだ指に仰け反った。腸壁を擦られる快楽に涙が浮かぶ。だけど、どこか物足りなかった。指だけじゃ足りない。今すぐカカシさんのモノが欲しい。大きくて太いモノで擦って欲しい。 しかし、カカシさんは、いつまで経ってもそれ以上のものをくれなかった。指だけで抽送を繰り返して俺を焦らした。腹の奥が煮えたぎる。もっと強い刺激が欲しくて体が捩れそうになった。 「あっ、あっ、やだ…、カカシさん、…カカシさん…っ」 「ん…」 手が胸を這い、唇が首筋を食んだ。だけど欲しいのはそんな刺激じゃなかった。もっともっと確かなものだ。 「カカシさん…、早く…もう……」 「ダメ。久しぶりだから狭くなってる。もっと緩めないと…」 「へいき…、お願い…」 「ダメだよ、イルカ先生。そんなに煽らないで…」 「イヤだ!…おねがいだから…、おねがい…あぁっ!」 カカシさんが指を増やして中を掻き混ぜた。きっと早く解そうとしたんだろうけど、それは逆効果で、余計に俺の熱を煽ることになった。焦げ付きそうなほど体が焦がれて、涙が溢れた。 「いやだ…!カカシさん、おねがいっ、も…ほし…っ」 しがみ付いた腕に爪を立てる。 「おねがい…!傷付けていいから…っ」 「…っ!イルカセンセ!」 カカシさんが苦しげに呻いて、俺の足を左右に大きく開いた。後口にカカシさんの熱が当たる。ぐっと体を倒すと、凶暴なほど尖りきったカカシさんが這入り込んでくる。 「あっ!…んんっ、…あぁっ!」 カカシさんの言ったとおりだった。狭くなっている。カカシさんが押し進むほど痛くて苦しい。 だけど胸に広がったのは歓喜だった。体を満たすカカシさんに喜びが広がる――。 「――センセ!…イルカセンセ、大丈夫?」 ぺちぺちと頬を叩かれて、薄く目を開けた。目の前に心配そうなカカシさんがいる。 (……あれ?イったのか…?) 頭が蒸気に包まれたようにぼんやりした。 (イって気絶したんだろうか?) そう思うと残念な気がした。あれほど欲しかったのに、何も覚えてない。 胸や腹を触ると射精した痕跡は無かった。自分の性器に触れるとちゃんと硬い。 (まだ大丈夫だ…。あれ?じゃあなんで…?) 「…カカシさん?」 「はあーっ…」 脱力したようにカカシさんが俺の上へ覆い被さった。 「ビックリさせないでよ…。急に失神するんだもん…。なのに笑って…」 ほっぺたをぎゅっと引っ張られる。まだイってなくて嬉しいのがバレてしまった。 「もうダイジョーブ?」 カカシさんは俺の中に深々と突き刺さったまま動きを止めていた。これ以上ないほど広げた足が恥ずかしかったけど、コクンと頷くと、カカシさんが動き出した。 恐れるようにゆっくりと。そうっと引き抜かれた剛直に、ずるずると腸壁が擦られた。 「あっ…あっ…ん…」 さざ波のような快楽が生まれる。抜けきる前にぐっと押し返されると、狭い腸壁を突き上げられた。 「あっ!」 「痛い…?」 すぐに動きを止めたカカシさんが心配そうに俺を見る。 (…これで気絶しちゃったんだ…) 思ったけど、 「もっと…」 苦笑したカカシさんがゆっくり腰を進めた。頬や首筋に唇が触れる。柔らかく食んだり、捏ねるように押しつけて心地良かった。指先が乳首を摘んで捏ねた。 「ぁっ!…あっ…んっ!」 甘い刺激が性器や後口にまで伝わる。ジンと性器の先まで痺れて汁を溢れさせると、後ろが緩んだ。その中をカカシさんが自由に行き来する。 「あっ、あ…んっ、はあっ…あっ、ぁっ…」 体はすぐにカカシさんを思いだした。こうして抽送されると気持ち良いことを細胞の隅々まで知っている。腰を回すように奥を捏ねられて甘い嬌声を上げた。 カカシさんの舌が乳首を舐めて転がす。 気持ち良かった。全身がトロットロに溶けていく。先走りが零れて竿を流れると、カカシさんがそれを塗りこめるようにして性器を扱いた。 「やあっ…んあっ…、あーっ、あ…っ」 「気持ちイイ?ちゃんと、気持ちイイ?」 何度も聞かれて不思議になった。 (こんなに乱れてるのに、何故聞くのだろう?) 考えているとカカシさんが体の中のしこりを擦り上げた。括れの所でコリコリされて全身が震える。 「あぁっ…!!」 強すぎる刺激に背中が反り返った。弦を引かれた弓のように自由を失う。あまりの刺激に首を横に振った。 (おかしくなる…!) 加減して欲しいのに、「ウソ」と言うとカカシさんは動きを早めた。 「ああっ、あーっ」 「こんなに濡れてるのに。気持ちイイってココもこんなに…」 ちゅくっと乳首を含むと形状を示すように舌先で弾かれた。硬くしこった乳首をきちっと食まれて、瞼の裏で光が爆ぜた。 「アッ、あっ!イク…ッ、ア…イクっ」 カカシさんの背に爪を立ててしがみつく。そうしないと、どこかに落ちて行きそうだった。 「もうイくの…?いーよ。イかせてあげる」 いっそう抽送が激しくなって体の奥が焼けた。足が突っ張り、繋がった所から快楽が溢れる。カカシさんが激しく俺の性器を扱き、鈴口を指先で抉った。 「あぁっ、アーッ、アアァーッ!」 全てを焼き尽くすような快楽が沸き上がり、性器の先から白濁が飛び出た。腸壁が痙攣して、カカシさんを締め付ける。カカシさんが動きを止めると、体の奥に熱が広がった。 「…くぅっ」 その甘く切ない声に、もう一度快楽が走って、またカカシさんを締め付けた。その中をカカシさんが穏やかに行き来する内に、強張りが解けていった。 「はあっ、はぁ…っ」 荒い呼気に唇を閉じられずにいると、カカシさんが俺の唇を啄んだ。それから手が汗で張り付いた髪をかき上げて、涙に濡れた目元を拭ってくれた。 「イルカ…」 名前を呼ばれて目を開くとコツンと額が合わさる。潤んだ視界の先に、頬を上気させたカカシさんが映った。 薄紅色に頬を染めて、はにかんだ笑顔を浮かべるカカシさんを心から愛しいと思った。