こころみる人たち
6日目
なんてことだ!!
カカシさんがいなくなった。
泊まりがけの任務に出たと言う。
知らせに来たパックンが愕然とする俺に、
「心配するな、明日には帰る」
と慰めて消えたが、あの人は優秀なんだ。
心配なんてしちゃいない。
そんなことより。
この体の疼きをどうしてくれるんだ!!
元々明日の予定だったから今日一日だって我慢できたはずなのに、それを今日って言うから期待して、耐えきれないところまできてしまった。
今すぐにでも抱かれていいほど心の準備は整っているのに、それが出来る人が居ないなんて!!
「かーっ!!」
意味のない雄たけびを上げてカバンを放り投げた。
熟れた体を持て余して風呂場に飛び込む。
水を浴びて体を冷やす。
頭のてっぺんから足の先まで冷たい水が流れた。
その途中にある睾丸が心なしか重い。
一週間・・。
約一週間分の精子がここに溜まっている。
健全な男子は思春期を迎える頃から1日約7〜8千個の精子を作る。
それが1週間分で約5万個。
俺+5万個の精子がカカシさんを待ち侘びている。
「・・・・・・・・」
俺って馬鹿?
5万個の精子がカカシさんを待ってるのを想像したら嫌になった。
怒りが萎んでぺこんと凹む。
俺ってなんて奴だ
ごめんなさい。
怒りに任せて酷いことを思ってしまった。
カカシさんは任務に出て大変なのに。
カカシさんは俺なんかより、ずっとずっとすごい人なのに。
後悔に涙が零れる。
風呂から出るとご飯を食べて早々に布団に入った。
一人寝の布団はやっぱり冷たくて、切なくなって涙が零れる。
早く帰ってきて欲しい。
遠くにいるカカシさんに想いを馳せた。
怪我なんかしないで帰ってきて欲しい。
でも。
一人で先にヌいてたりしたら、ただじゃおかないからな!!!
「がーー!!」
「うっせぇぞカカシ、静かにしねぇか」
でねぇと賊が逃げるなどと悠長にぼやく髭の横ですばやく印を切ると両手を地面についた。
地の奥からゴゴゴゴと地響きが鳴る。
「おい・・、なにをした?」
「1分だよ。1分で人質を奪還。でないと命がなーいよ?」
「おい!・・ちっ」
アスマの舌打ちに口角を上げると、賊のアジトに踏み込んだ。
「バケモンか、テメーはよ」
大きく落ち窪んだ大地を眼前にアスマがごちた。
「んな訳ないデショ?たまたまこの下が枯れた水脈筋だったから天井崩して落としてやっただけだーよ。いくら土遁が得意でも何にもないとこココまで耕せないよ」
クキコキと首を鳴らして帰り支度を整える。
「アスマ、その人頼める?」
気を失い地面に横たわる人を指差すと、しっしっと手を振られた。
「アリガト」
「ああ」と煙が吐き出されたのを目の端に留め、地面を蹴った。
とにかく早く帰りたかった。
目的地に着いてから任務完了まで僅か10分。
任務内容は囚われた人質の奪還と賊の殲滅。
賊と言っても忍び崩れが2,3人混じっただけただの山賊。
簡単な任務だ。
実際、揺れる地面に足を取られた賊は立ち上がることも儘ならぬまま地面に飲まれていった。
そんな中をオレ達は難なく歩き、人質を担いで外に出た。
ちなみに命がないと言ったのは人質のだ。
時間を掛ければ誰でも出来る。
それを何故、オレやアスマが受けなければならなかったのか。
ヒマしてたからだ。
なにも最初っからヒマだった訳じゃない。
イルカ先生との夜を想って、早く前の任務を片付けただけだ。
それで家に帰れば良かったのだが、待ってしまった。
イルカ先生を。
ただ一緒に帰りたかっただけなのに、それが裏目に出た。
迎えに行こうと待機所から廊下に出たところで捕まった。
依頼書を見せられたらイヤとは言えない。
イルカ先生に使いを出し、同じくヒマしてたアスマを道連れに里を出た。
あと1分早く部屋から出ていたら、今頃イルカ先生とイチャパラしてたのに!!
今頃イルカ先生はどうしてるだろう・・。
オレが今日だと言ったばかりに、待ちきれなくなって一人でしてたらどうしよう・・。
あんなに、あんなに楽しみにしてたのに・・っ!
突然、約束を破って怒ってるかな・・。
一人暗い森の中を駆けていると、思考が悪い方悪い方へと傾いていく。
情けなく下がっていく口角を噛み締め、早く弁明したくて里へと走り続けた。
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