こころみる人たち




3日目



「おかえりなさい」

出迎えるとカカシさんがふわりと笑った。
会えない日があったとき、カカシさんはとびきり優しい笑顔になる。

「イルカ先生もおかえりなさい」

帰って来たばかりのカカシさんに出迎えられて、迷わずその胸の中に飛び込んだ。
ぎゅうぎゅう抱きしめ合って互いの存在を確かめる。

「かわりない?」
「はい、カカシさんも?」
「うん。――ねぇ、・・ガマンした?」
「もちろんです」

カカシさんは?と見上げると、「オレも」と返ってきた。
熱く潤んだ瞳に見つめられて心臓が高鳴る。
目を閉じると唇が重なった。
だけどすぐに離れる。
会わなかった後のキスは危険だ。
盛り上がって最後までいってしまうことが多い。
追いかけてくる唇をかわして台所に逃げ込んだ。

「ご、ご飯にしますね!」
「・・・・・・・うん」

カカシさんの声に不満がありありと滲み出ている。
でもこれも一週間後の為だ。
心を鬼にして気付かないフリをする。



「イルカせんせ・・」

夜、すごく甘い声を出してカカシさんが背中に張り付いた。
聞いただけでドキドキするような濡れた声。

カカシさんの限界が近い。
まだ3日しか経ってないけど、3日といえばいつもなら触りっこぐらいはしてるから仕方ないのかもしれない。

そろそろくっついて寝るのは危険だ。

そう思っても1日ぶりのカカシさんの体温が心地よくて離れられない。

だけど負けるもんか。

ここは先に寝たもの勝ちだ気付いて、速攻で寝てやった。









早く、早く。

一秒でも早く会いたくて家路を急いだ。
アパートの近くまで来るとイルカ先生の味噌汁の香りがして、嬉しいや愛しいが体の中で溢れかえる。
一人では抱えきれない幸福をイルカ先生に伝えたくて、トンと2階まで駆け上がる。
部屋の中でイルカ先生が動く気配がする。

「おかえりなさい」

玄関を開けると同時に声が掛かった。
濡れたおたま片手にぱあっと笑顔になる。
大好きな人に出迎えられると、どうしてこんなに嬉しくなるのだろう。
この喜びをイルカ先生にも感じて欲しい。

「イルカ先生もおかえりなさい」

アナタがそこに居てくれて、嬉しい。
そんな想いを込めて抱きしめようとすると、イルカ先生の方から腕の中に飛び込んできた。
1日ぶりの体を抱きしめ、ぎゅっと頬を合わせた。
僅かに言葉を交わすも内容よりそれを紡ぐ唇に意識を取られ、イルカ先生が瞳を閉じたのを合図に口吻けた。
熱い唇に触れ、足元から電気が走ったような歓喜に包まれる。
もっとイルカ先生を感じたい。
だけど唇を合わせたまま角度を変え、もっと深く重ねようとするとイルカ先生がすっと引いた。
離れた唇を追いかけると、するんとイルカ先生が腕の中からすり抜ける。

え!
まだだよ、まだ。
まだ、足りないよ。

歓喜が切ないほどの焦燥に変わる。

「イルカせんせ・・っ」
「ご、ご飯にしますね!」
「・・・・・・・うん」

イルカ先生が逃げるように台所に駆け込む。
約束したから。
一週間、我慢しようって言ったからなんだろうけど。

イルカ先生は今ので満足したの?
もっと抱き合いたいって思わないの?


こんな時、確信する。
絶対オレの方がイルカ先生を好きだ。
俺の方がずっと、もっと、たーくさん、イルカ先生を好きだ。

でも前にそれを言ったら、ふふんとイルカ先生は鼻で笑った。
ものすごく勝ち誇った顔で、言葉にすると、「なに言ってんだ、こわっぱが」みたいな感じで。

それなら言葉にして言って欲しい。
オレみたいに、イルカ先生の方がずっと、もっとオレのことを好きだって言って欲しい。
だけどそうしてくれないイルカ先生は意地悪だ。

そして今も。
オレに背中を向けて眠るイルカ先生はすごく意地悪だ。
どうしていつもみたいに腕の中に入ってくれない。

「イルカせんせ・・」

背中に張り付いて促す。

こっちにおいでよ。

「ねぇ・・」

腕を回して引き寄せるがイルカ先生は反応しない。
起きてるくせにじっとして、体の向きを変える気配がない。

それならそれで。

ぴったり体に沿ってへばりつき、首筋に顔をうずめる。
項に唇を這わせて誘いを掛ける。
もう今回は無理。
間にイルカ先生が居なくなったりしたから、普段と比べると著しくイルカ先生が欠乏している。

補充しなくては。

滾ったイチモツをイルカ先生のお尻に押し付けて首筋から頬へと唇を移動させる。
うっすら開いた唇に唇を重ねようとして。
ふーんっと強い鼻息で吹き飛ばされそうになった。

・・寝てやがる。

オレがお色気全開で迫ったのに、ものともせずにイルカ先生は眠ってた。
気持ち良さ気に涎を垂らして。

「・・・いるかせんせぇ」

起きないものかと揺すってみるが「んごごご」と鼾まで聞こえ出し。

やがて諦め一人眠りが訪れるのを待った。








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