*注意* 大人向け。読み飛ばしても問題ありません。


いまさら(W.D編) 6





 薄っすらと沈んでいた意識が浮上する。

 あれ・・・俺どうしたんだっけ・・・?

 目を閉じたまま考えるがよく思い出せない。僅かに体を動かしてみれば、肌の下を滑る冷たいシーツの感触。

 あ・・・俺、裸だ

 不思議に思ったがさらっとした感触が心地よい。寝返りを打って冷たいところに移動すると火照った体を冷ました。

 目を開けてみれば明かりの消えた寝室。その向こうの居間も明かりは消え部屋の中は暗い。冷蔵庫の開く音がして僅かな明かりが台所から漏れたが、それもすぐに消えた。

 カカシ先生起きてるんだ

 いま何時だろう・・・。
 そんな考えも浮かんだがすぐ霧散した。何故か考えるのが億劫だ。
 再び襲ってきた眠気に身を任せ目を閉じた。

「イルカセンセ」
 静かなカカシ先生の声が掛かる。
「起きれる?」
 頭を横に振った。
 このまま寝てしまいたい。
 ひんやりした手が髪を撫ぜる。
(髪・・・濡れたまんまだ・・・)
 かき分けられる髪の重たい感触をぼんやり感じた。そのまま意識を沈めようとして――・・。
「っ!」
 突然唇を襲った刺激に身を竦めた。
(な・・に・・・?)
 つぅと冷たい水が唇を滑って頬に流れる。
(氷?)
 知覚した途端、急に喉の渇きを覚えて氷を飲み込もうと口を開けた。だが口に入ってくると思われた氷はつるんと唇を滑って遠ざかる。
「ん・・ぁ・・」
 顎を上げて氷を追いかけた。喉が渇いて仕方がない。
「かかし・・・せんせ・・・・・んっ」
 焦れて名前を呼べば、唇を塞がれた。
 冷たい唇。
 合わさった唇の隙間から少しずつ水が流し込まれる。こくっと喉に流し込めば更に水が与えられた。冷たい水が喉を潤す。だがそれはすぐに無くなってしまった。
「ぁ・・・もっと・・・」
 離れようとするカカシ先生の唇を強請るように啄ばんで水をせがんだ。
 足りない。僅かに与えられた水に喉の渇きが増した。
「待って」
 まてない。
 喉が張り付きそうになって、けほっと咳き込めば背中とシーツの間に手が入り込んで肩が浮いた。そしてまた唇が塞がれる。流れ込む水を貪るように飲んだ。
 離れては重なり、離れては重なり、ようやく渇きが癒えてひとごこちつくとカカシ先生の背中に腕を廻して離れようとするのを引き止めた。
「もういいの?」
 頷けば背中がシーツに下ろされた。ふーと息を吐いて体から力を抜くと、カカシ先生が横に滑り込んできた。カカシ先生も裸だった。
 冷たい体。
 俺に水を与えてる間に冷えてしまったのだろう。カカシ先生の場所を空けながら体を寄せてぴったりくっ付いて、冷えた背中を擦って体を温めた。

「覚えてる?のぼせちゃったんだよ」
 お風呂で、と告げられて、朧気ながら記憶が浮上する。
(そういえばそんなことも・・・・、あった。)
 気を失うまでの醜態を思い出して頬に血が集まった。
 なんだかすごくはしたないことをしたような気がする。
 あの後どうなったんだ?
「思い出した?」
 くすくす笑う声がおでこに降ってくる。
 恥ずかしくて顔を背けようとしたら、猫が頭をこすり付けるみたいにしてカカシ先生が額を顎の下に押し付けてきた。ぐいぐい押されて自然と顎が上がると首筋を吸い上げられた。
 カカシ先生の手がさあっと体を撫ぜる。それにびくっと体が反応を返すとカカシ先生が瞼を撫ぜた。目を開けるように促されて薄く開く。
「イルカセンセ・・・」
 俺の大好きな低く甘い声。俺を見下ろす何かを耐えるような眼差し。
「していーい?」
 ゆっくり近づいてきた唇が鼻筋を食んだ。瞼を撫ぜていた指先が頬を撫ぜ、唇を押し上げるように撫ぜた。そのまるで壊れ物を扱うような手つきが気恥ずかしい。
 いいですよ、なんてとても言えないから、カカシ先生の頬を引き寄せると口吻けた。



 * *



 どうして・・・?

 体の上を這い回るカカシ先生の指と舌の動きに唇を噛み締める。
(ほんとうだったら、もうとっくに快楽の底に沈められてる筈なのに。)
 胸を這うカカシ先生の舌が乳首に近づく。期待に息をつめると、付近を軽く啄ばんで離れていた。
「・・っ!」
 恨みがましい声が上がりそうになるのを必死で抑えた。
 もどかしい刺激に足がシーツを蹴る。
(どうして?どうして?)
 決して尋ねることの出来ない言葉が頭の中を駆け巡る。
 いつもだったら俺の体から自在に快楽を引き出して翻弄してくるのに、今日は何故か性感帯の扉を開けるだけで奥まで踏み込んでこない。触れるように舐めて擦って、その存在だけ知らしめては次の扉へと移る。
 じれったい。
 あまりのじれったさに、欲しいものを与えて貰えない子供みたいにじたばたと暴れだしたくなるのを何度も理性で捻じ伏せた。

「ひあっ!」
 ふいにカカシ先生の手が中心に絡んだ。待ち望んだ刺激に声が抑えられない。だが、次にカカシ先生が口にした言葉にきゅうと体が縮こまった。
「すっごいドロドロ。イルカセンセ、キモチイイ?」
 触られてもないのに。
 そこを硬く勃ち上がらせて汁を零していることを指摘されて消え入りたくなる。答えられず顔を覆い隠すと、
「ヨくないんだ」
 ゆるゆると上下に擦っていた手が離れそうになって身を捩った。
「あっ、やっ・・・カカシ、センセっ・・やぁ」
「んー?どーして欲しいの?」
 そんなの知ってるくせに。
 どこをどうしたら気持ちがいいかなんて俺よりカカシ先生の方が知ってるくせに。
 カタカタと体が震えだす。
 体の中が吐き出すことの出来ない熱で滾った。
 こんなの気が狂う。
「ちゃ・・とっ、ちゃんと、・・してっ」
 耐え切れず頑是無い声が喉から漏れた。
 ここ?と強く握ってくるのにこくこく頷く。そのまま上下に擦りだした手に、内心安堵の息を吐いた。
 カカシ先生が手を動かしながら閉じていた俺の足を押し広げて、間に体を割り込ませた。

 ――見られてる。

 気づいたが、そのことに対する羞恥よりも快楽の方が勝った。体の中で滾っていた熱が一気にそこに集中する。勝手に腰が揺れそうになると、カカシ先生の手が大腿の内側を撫で擦ぜた。その手の行き着く先に、風呂場での行為を思い出して期待が膨らむ。
「キモチイ?」
 必死で頷いた。ここで止められたら堪らない。
「そう。じゃあもっとキモチよくしてあげる」
 イかせてくれるのかな。
 熱に爛れた頭でぼうっと考えていたら、とんでもないところに温かい吐息を感じて急いで頭を起こした。
 目の前ではカカシ先生が口を開けて、今にも俺のを口に含もうとしている。
「あっ、だめっ、駄目です!」
 慌てて腰を引くとカカシ先生からそこを隠した。目を見開いたカカシ先生が顔を上げる。その視線が体の上を走って泣きたくなった。
 なんて格好。
 大きく広げた足の間にカカシ先生を挟んで、まるで自慰でもして見せるように自分のモノを掴んで・・・。
「イルカセンセ?」
 首を振ってカカシ先生から距離をとろうとしたが膝を掴まれて戻される。
「やめっ」
「どうして?恥ずかしいの?」
「ちがうっ」
 そんなんじゃない。
「だって、こんなこと・・カカシ先生が・・」
 していいわけない。させられない。今までだってどこをどんな風にされてもこれだけは絶対させなかった。
「オレが・・・なに?」
 カカシ先生が顔を覗き込んでくる。急速に去っていく熱に口を開けると恨み言が漏れそうで唇の端を引き結ぶと顔を背けた。
「ちゃんと言ってよ」
「そんなこと・・・してほしくありません」
「どうして?」
 どうして、なんて俺が聞きたい。
 どうしていつもみたいにしてくれないのか。そんなことしなくてもちゃんと気持ちよかった。気持ちよくしてくれてた。
「イルカ先生もしてくれたじゃない。オレのココ、口で――」
「それは・・っ」
 瞬間、ぶわんと耳鳴りがして流れた血流の多さに目の前が大きくブレた。
 そんなこと言われるなんて思ってもみなかった。
「だ・・だって、あれは・・・」
「あれは?」
「・・・・・いつも俺、してもらってばかりだから・・・・・カカシ先生にも気持ちよくなって欲しくて・・・」
 言ってる傍から悲しくなってきた。
 もしかして、インランだとか思われたんだろうか。
 ・・・そうかもしれない。
 だってあれは俺が勝手にやった。頼まれて、でもなく俺がそうしたかったから、した。
 したかったんだ。
 俺だって男だ。
 好きな人を感じさせたかった。それで・・・。

 つんと唇を突付かれてはっとした。
「なーに考えてるの?唇尖ってるよ」
 むにむにと唇の真ん中を押しながらカカシ先生が笑う。
 とても嬉しそうに。
 俺がへこんでるってのに。
 頬や首筋にカカシ先生の髪が当たってくすぐったいと思ったら鎖骨の所に擦りつける様にしてカカシ先生が額を寄せた。
「イルカセンセ、オレのこと気持ちよくしたかったの?」
 面と・・・じゃないけど、ストレートに確認されて顔が熱くなった。さっき自分で言ったことだけど、すごくふしだらなことを言ったと気づかされる。動揺して答えられないでいると、「違うの?」と悲しげな声。
 違わない。
 違わないから、カカシ先生の髪に顎をくっつけて頷いた。
 ふっと首筋に息が掛かったと思ったらきつく吸い上げられた。
「いたっ・・!」
 痕が付きそうなほど吸い上げられて痛みに体が逃げようとすると、宥める様にカカシ先生がそこに唇を押し当ててくる。
「気持ち良かったよ。だから、オレも・・・」
「・・・え?」
「オレも。イルカ先生に気持ちよくなってもらいたい。だから、したい」
 だめ?とカカシ先生が下から見上げてくる。
 ずるい。
 そんな風に聞かれたら駄目と言い難い。
 困った。
 でもでもでも。
 やっぱり、それは・・・。
「イイって言ってよ」
 未だ掴んだままの手の上にカカシ先生の手が重なるように置かれて、ひくっと体が跳ねた。
 ねぇと言いながらカカシ先生の髪が胸を滑り落ちる。
 どうしよう、どうしよう、どうしよう。
 迷ってる間にもカカシ先生が下腹部に顔を寄せる。
 見ていられなくて、ぎゅっと目を閉じた。再び「ねぇ?」と問いかけてくるのに首を横に振る。
 だって、そんなの。
 カカシ先生が・・・。
 そんなこと・・・。
「イルカせんせ・・もっと、オレを・・・・・・」
「え・・・・?」
 聞き返す暇なんてなかった。
「あっ!」
 ちゅっと指の上にキスを落とされて足が痙攣した。直にされた訳じゃないのに体が錯覚したのか直接受けたような刺激が走る。
「カ、カ、カカシセンセっ」
 目を開ければ、カカシ先生が悪戯を楽しむ子供みたいな顔でにっと笑う。その唇の間から赤い舌をだして、ちろりと指を舐めた。
「・・・っ!」
 上がりそうになった声を必死で抑える。
 カカシ先生が目を細めた。
(逃げられない。)
 そんな思いが頭を過ぎった。
「この手、どけて?」
 指の間に舌を滑らせ、時折捻じ込むように強く押してくる。
 舌が這い回るたび跳ねそうになる体を誤魔化したくて必死で首を横に振った。
「いたい!」
 突然襲った鋭い痛み。その痛みは去ることなく、指の関節をぎりぎりと締め付ける。
 見ればカカシ先生がオレの中指を噛んでいる。
「いたいっ!痛いです、カカシ先生!」
 カカシ先生の歯が指に食い込む。
 叫んでもカカシ先生はもうこっちを見ることはしないで、歯に力を入れると指を引っ張った。
「いたい!いたい!いたい!」
 抵抗しようにも痛みに指先から力が抜けると、浮いた指の下にカカシ先生が指を滑り込ませて下ろせなくした。
「ひあっ!」
 浮いた指の下を何かぬるっと温かいものが滑った。
「アッ!」
 何か、じゃない。カカシ先生の舌だ。
 オレの指に顔を押し付けるようにしてカカシ先生が舌を伸ばしている。
「あっ、だめっ」
 カカシ先生の頭を押し退けたくても、それは自身を掴んでいる手を離さないと出来ない。
「や、だっ・・んっ、・・あ!」
 ぬるぬると中心を這う生暖かい感触。そこから湧き上がる、疼くような浮き上がるような快楽。
 舌先で強く押したり、くすぐるようになぞったり。
 己の手の中でぐんと中心が張り詰める。
 たった指一本分の隙間から与えられる快楽に腰が溶けた。
 カカシ先生にそんなことさせたら駄目だと思うのに腰が揺れそうになる。もっと、と強請りそうになる声を抑えるために歯を食いしばったが、隙間から漏れる息は甘い響きを伴った。
 つー・・っと人差し指と中心の狭間を舐めて、カカシ先生がこっちを見上げた。
 その何かを訴えかけるような視線。
『この手、どけて』
 きっとそう言ってる。
(どうしたらいい・・・。)
 目の前がじわっと滲んだ。
 また、カカシ先生がつぅと舌を滑らせる。
「はっ、あっ」
 もどかしい刺激に焦れた。
 もっとして欲しい。でもそんなこと言えない。
(カカシ先生が手をどけてくれたらいいのに・・・。)
 そんな勝手な思いすら湧き上がる。
「んっ、んん・・・・っ」
 強請るような声が喉から漏れた。
 触れていた舌が中心から離れて指を舐める。失った刺激にすごい勢いで体の中を焦燥が駆け巡った。
「あ、あ、あ」
 やだ。やめないで。
 やめたら、やだ。
 ぽろぽろと零れた涙が腹に落ちた。
 もっとして。
 もっとして。
 もっとして。
 もう、それしか考えられなくて――・・、
「カカシ、せんせぇ・・・」
 中指に絡んだ指をぎゅっと握ってから力を抜いた。
 意を汲んでくれたのか、そうっとカカシ先生の手が俺の中指を引っ張る。
 手が外れる瞬間、にちっと濡れた音がして、カカシ先生が指の内側を確かめるように指を滑らせると、ぬるぬるとした感触。
 嫌がってたくせに感じてしまってたことがバレて居た堪れなくなる。
 カカシ先生の口元がふっと緩んだ。
 でもそれは嘲る感じじゃなくて、なんとも優しげな感じでほっとした。この手のことで蔑まれるのはひどく辛い。
 でもカカシ先生はそんなことしなかった。ただ優しく笑うと顔を伏せて、ゆっくり俺を先端から口に含んだ。
 カカシ先生の形の良い薄い唇にみるみる飲み込まれていく。
 とても現実離れした光景だった。
 でも包み込む温かい感触は本物。
(あ・・そんなとこまで・・・)
 それでも信じがたくてぼうっと見ていたら、もう片方の中心を掴んだままの手にカカシ先生の唇が当たった。
「ひっ!あ、あぁっ!!」
 飲み込めるとこまで飲み込んだカカシ先生の唇が今度は吸い上げるようにして中心を出していく。突如襲った強い快に全身を貫かれた。
 感じたことのない刺激が背骨を駆け上がる。カカシ先生が舌を這わせるたび感電したみたいに背中が引きつった。
 こんなの、知らない・・・っ。
 先端まで来るとまた飲み込まれる。そして、また――。
 繰り返される行為は緩やかにスピードを増していく。カカシ先生の唇からずちゃ、ぬちゃっと濡れた淫靡な音がひっきりなしに上がった。
「んっ・・んぁっ・・ふぁっ」
 聞くに堪えない甘ったるいが漏れるのを抑えたくて唇を噛み締めると鈴口を尖らせた舌で抉じ開けるように抉られて更に甲高い声を上げた。
「ひゃっ・・ぅんっ・・、ああっ、・・ぁあっ」
 体の奥から突き上げるように湧き上がる要求。
 もう、イク・・・っ。
 ぴぃんと腿の内が張り詰める。
 イクッ、イクッ、イク・・ッ。
 たまらない。
 我慢できない。
「カカ・・、ァ・・、はな・・って・・・」
 ――はなれて。
 願いはすぐに聞き入れられた。このままではカカシ先生の口の中に出してしまうと空いた手でカカシ先生の肩を押すとすべての刺激が止んだ。
「ァあっ・・・」
 ぴんと体を張り詰めてその瞬間を待つ。




 ・・・・がいっこうにその刺激は訪れない。




「あ・・・・・・」


 くしゃっと顔が歪んで目の淵から涙がするする零れた。
 足りなかったのだ。あと一歩の刺激が。
(イけると思ったのに・・・。)
 悔しくて辛くて泣いた。
 今際の際、みたいなところで放り出されていじけた。
 ほんとうに嫌になった。
 焦らされては煽られ、そしてまた焦らされて。
「イルカセンセ」
 その穏やかな声が憎らしい。
 おいで、とでも言うようにカカシ先生の手が伸ばされる。
 その手に縋り付くと、カカシさんの膝の上によじ登った。
 も、やだ。
 こんなことばっかり。
 膝の上に乗り上げて顔が近くなると夢中でその唇に唇を重ねた。頬にも唇を押し付けて耳たぶを食んだ。首の後ろに手を回すとぎゅうぎゅうしがみ付いて、すすり泣いた。
 限界だった。何度も途中で放り出されて、体もそうだが精神的に参ってしまった。
 カカシ先生の大きな手が背中を撫でる。
「イルカセンセ、もっとオレを求めて」
 耳をくすぐるようにカカシ先生が囁いた。でも疲弊した思考ではその意味がよく理解できない。どうしてそんなこと言うのか、どうしてこんな風に抱かれるのかも。今日のカカシ先生はいつもと全く違っていた。
 腰を掴んだカカシ先生の手に力が入る。
「やっ、やだ」
 引き離されると思って必死にしがみ付いた。これ以上放っておかれるのは堪らない。
「大丈夫。大丈夫だから、腰上げて?」
 くずってカカシ先生の首にしがみ付くと力任せに腰を持ち上げられる。
「いやっ、やぁっ」
 相当力を込めてしがみ付いてたのに、あっさり膝立ちにさせられた。腰を下ろそうとしても腰を掴んだ手がそれを許さない。
「んぅー、いやぁ。離れたらやだぁ」
 ひっ、ひっと泣きながらごねると、
「離れない。離れないよ、イルカセンセ。ずっと傍にいる」
 腰を掴んでいた手が背中に回ってぎゅうっと抱きしめられた。
 その言葉に、抱きしめる腕の強さに安心して体から力が抜ける。
 でも俺が今望んでいることとカカシ先生が言っていることがちょっとズレてる気がした。
 きっとカカシ先生が言ってるのはこれから先のことも含んでいる。
 そんな気がする。
 だって、ずっとって言った。
「ほんと・・ですか?」
「うん。」
 嬉しくて体が溶けるかと思った。
「ずっと?」
「うん。ずーっと」
(そうか。ずーっとか)
 はちきれそうに嬉しくなって、へへっと笑った。
 さっきまで散々焦らされたことも忘れて笑った。
 カカシ先生の「ずーっと」という言葉が胸の奥まで染み込んでいく。
 すごく幸せだった。

 いつまでもその幸せに浸っていたらカカシ先生の手が背中を撫ぜた。
「イルカセンセ、続きしていい?」 
 掠れた声にちょっと体を離して見てみると、カカシ先生の眉が切なげに寄せられてて、目は熱く潤んでいる。そんな表情を見ているとたまらない気持ちになって、その唇にちゅと口吻けした。でもそれはつい、というか無意識にやってしまったことだったので、その後追いかけるようにカカシ先生が口吻けてくるのに恥ずかしくなった。口吻けの合間にカカシ先生が自分の指を口の中に含むところを目の前で見せられて更に羞恥は増したが、心臓はどくんと跳ねた。さっきまでの興奮が蘇る。
 双丘の間に滑り込んだカカシ先生の指がぐっと後口に入り込んだ。
「んぁ・・っ」
 空気に触れてひんやりした指がゆっくり奥まで突き入れられて大腿が震えた。何度か抜き差ししている間に指から冷たさは無くなって、代わりにじわじわと疼くような刺激が広がる。
「ふぅ、ぅんっ、ァッ・・」
 波が押し寄せる。
 指が増やされるたびに波は大きくなって体を飲み込んでいく。
「カカシ・・・センセ・・・カ、カシ・・センセ・・・」
 たまらなくなって求めるように名前を呼べば、入り込んだ指が入り口を広げるように引き抜かれ、抜けきる瞬間ぬるっとした熱いものが襞を舐めて、びくっと腰が浮いた。
「んっ」
(カカシ先生の――・・。)
 今触れたものが何かを理解して――。ゆっくり腰を沈めた。
 後口を限界まで押し広げながら焼けるように熱いものが体の中を満たしていく。
「くぅ・・ん・・ぁっ・・」
(やっと・・・)
 自分とは違うリズムで脈動するのを体の内側から感じる。
(やっと・・・ひとつになれた)
 安堵して体から力が抜けそうになると、カカシ先生の手が腰を支えた。
 中途半端な膝立ちでひどく不安定な体勢。
 こんな体位は初めてだった。
(・・・どうやって動くんだろ・・・?)
 疑問はあっさり解決された。
「イルカセンセ・・・もうちょっとこっちに」
 引き寄せられてカカシ先生の胸と俺の腹がぴったり重なった。自然と中心が互いの間に挟まれる形になって慌てて腰を引こうとしたら臀部を掴まれ揺すり上げられた。
「えっ、あっ、まっ・・ひっ、ああっ」
 逃げる暇なんて無かった。揺すられながら下から突き上げられる。体が浮いたと思った次には激しく突き上げられて息が出来ないほどの快楽が突き抜けた。
「うぅんっ、はぁっ、ぁあっ、イっ、あ、もっ・・」
 次第に激しくなる動きに呼吸もままならない。それでも集中して快楽を追いかけた。カカシ先生の熱い息が肩にぶつかる。無理やりしがみ付いた背中は汗で滑って上手く掴めない。そのことが益々体を熱くする。
「イっちゃ・・カカ、っ・・もぉっ・・ぁあっ」
「イって・・、オレ・・、も・・、っ」
 カカシ先生に体を強く押し付けられたら一溜まりもなかった。
 中と前を強く擦られて考える間もなく吐精していた。同時にぎゅうっと強く抱きしめられて体の奥まで入り込んだカカシ先生が叩きつけるように射精するのを感じて、びく、びくと体が跳ねた。


 ぺたりとカカシ先生の膝の上に座ったまま、しばらくの間互いに凭れるようにして余韻に浸った。


「イルカ・・・センセ・・・」
「・・はい?」
「・・はやかったですね」
 おかしそうにカカシ先生の肩が揺れている。
「カカシ先生こそ」
 言ってるうちにおかしくなって噴出してしまった。
「うん。だって、気持ちよかったから」
「そうですね。俺も気持ちよかったです」
 くすくす笑っているとカカシ先生が唇を食んだ。
 それから、もう一回しましょう、するんですか?、したくありませんか?、したいです、なんてことを言い合いながら布団の上に転がった。


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