(定期的に繰り返せば、イヤでも分かるか…)
「そんな事言って、本当は欲しくて堪らない癖に」
「違う!」
イルカの手がシーツを握りしめるが、勢い良く剥いだ。現れたのは、動かす事も出来ないほどガリガリに痩せた肢体だ。
「アンタが飢えると、コッチまで喉が渇くの。ホント、迷惑だよね」
言い捨てて、イルカが来ていたシャツに手を掛けると引き裂いた。
「やだ! やめろっ、嫌だ」
振り回すイルカの手が頬に当たって、パンッと音がするほどイルカを叩き返した。勢いでイルカの顔が反対側を向いて、黒髪が頬を隠した。切れた口の端がじわりと血を滲ませた。
「手を掛けさせないでくれる? オレだって面倒なんだから」
「…っ、い…やだ…、いや…ぅ」
それでも抗うイルカに、頭の上で両手を纏めると破れたシャツで拘束した。
「いやだ…っ、止めろ…」
(よくもまぁ、これだけイヤが言えるものだ)
憎々しげに思うと、カカシはイルカのズボンを下着ごと脱がせた。痩せ細った下肢に思わず目を逸らしそうになる。
「さっさと済ませるか」
呟いて、イルカの足を掴んだ。抵抗するように足に力が入ったが、開くのはたやすかった。
指先を濡らすと、いきなり後口に触れた。ビクッと跳ねたイルカの体が強張ったが、構わず窄まりを濡らした。指が動く度に、イルカの体が跳ねる。
「なに? もうカンジてるの?」
「ちがう!」
揶揄すると鋭い否定が返ってきた。
「ふぅん。どーせすぐ強請るくせに」
「違う! そんなことしない」
「だったら耐えてみせなよ」
イルカの膝裏を掴むと足を押し上げた。浮き上がる腰に、イルカが「ひっ」と声を上げたが、知らん顔で顔を伏せると窄まりに舌を這わした。ねっとり舐めて細かい襞を濡らすと、ツンツンと舌先で入り口を突いた。
「や、やめろっ」
体を捩って逃げようとするイルカの後口に舌を突き挿れる。抽送させて唾液を流し込むと、イルカの体が小刻みに震えだした。
「あ…」
堪らないはずだ。久しぶりの体液だ。流し込んだ唾液は染み入るようにイルカの体に吸収されただろう。望もうが望まなかろうが、イルカの体はそう出来ている。吸血鬼なのだから当たり前だった。
だけどイルカはその当たり前を嫌う。吸血を嫌って人の血を飲まず、飢えてもじっと堪えていた。
飢えても吸血鬼が死ぬ事はないが、イルカが飢えると『子』であるカカシまで飢えた。喉が渇いて堪らなくなる。
だからカカシは、定期的にイルカを抱いた。抱いてイルカの体に体液を注ぎ込む。そうする事でイルカを満たした。人の血を吸う事を嫌うイルカの、唯一の栄養補給源がカカシだった。
「ぅ…」
息を殺す音が聞こえて、カカシは顔を上げた。見れば、イルカが手の甲を噛んで声を殺していた。きつく目を瞑って、カカシのすることに耐えていた。
(ふん…)
面白く無い気持ちを堪えて、イルカの足の間を陣取ったまま体を起こした。手を突いてイルカを見下ろすと、中指と人差し指を根元まで舐めた。それをさっきまで舌で弄っていた所に差し込む。「あぁっ」と呻き声を上げたイルカの背が反り返った。
中の唾液を塗り込めるように柔らかな襞を撫でた。
「あっ…、あぁっ…、あっ…」
もっと、とでも言うように腸壁が指に絡みつく。試しに前立腺を押してみたが、イルカの性器は反応しなかった。ココはちょっとしたバロメーターみたいなもんだ。イルカが満ちれば、前も勃つ。飢えてる時点では、吐き出すモノも無いらしい。
「あ…、やっ…、ふぅっ…んっ…」
まだイヤだと言うイルカを憎たらしく思う。噛み付いていた手の甲はとっくに離れ、口を押さえるだけになっていた。その手を退けると、カカシはイルカの顎を掴んだ。口を開けさせると、そこに唾液を垂らした。すぐに喉をこくんと動かした癖に、飲み干すとイヤイヤと首を横に振った。
力を込めて顎を押さえつけると、舌先を噛み切って血を垂らした。唾液よりも濃い体液に、イルカの喉が喘いだ。
「ホラ、欲しいって言いなよ。欲しいくせに」
「ちが…っ、いや…だめ…ぇ」
閉じたイルカの瞳から涙が零れ落ちた。
「いや…いやだ…」
(まだ、言うか)
イルカの顎を掴んだまま舌を差し込むと、口の中をぐるんと舐めた。顔を上げると、離れて行く舌をイルカが追い掛けた。
「あ…っ…まだ…っ」
だんだんイルカの理性が崩壊していく。本来、吸血鬼が飢えに耐えられる筈ないのだ。それは壮絶な飢えだ。人から吸血鬼に変わった時、カカシも吸血は嫌だったが、その嫌悪感は一日も保たなかった。血を吸いたい欲求に抗えない。
イルカが吸血鬼になって何年経つのか知らないが、良く耐えていられるなと思う。
「…ちょーだいは?」
歯をガチガチ鳴らして耐えるイルカに聞いた。
「あ…、くっ…」
唇を噛み締めるイルカの唇が切れて血が溢れた。
「勿体ないなぁ」
イルカの唇を舐めると血が混ざり合った。イルカの舌が出てきて、チロチロと血を舐める。そこに舌を絡めてやると、イルカはもう抗わなかった。
一度にたくさん与えるより、少しずつ与えた方が理性の崩壊が早い。長年培った経験で、カカシはそれを知っていた。
イルカとの付き合いは、もう百年にもなる。
ちうちう舌を吸い上げるイルカに、後口を弄っていた指を引き抜くと、勃ち上がった己の性器を当てた。ぐっと突き挿れると、迎え入れるようにイルカの腸壁が蠢く。根元まで埋めると、得も言われぬ心地良さに包まれた。
イルカの鼻筋を横切る傷が赤く染まるのを見て、そっと舌を引き抜いた。
「あっ! だめっ…もっとぉ…」
「ホラ、イルカ。中にあるの分かるデショ。自分で動きな」
二、三度突き上げてやると、波が押し寄せるようにイルカの腰がうねった。収縮する腸壁に包まれて、あまりの気持ち良さに呻きそうになる。イルカの中で先走りを零すと、ますますイルカが腰を振った。
「あっ…はぁっ…はぁっ…は…」
こうなるとイルカは何も考えていない。忠実に本能が赴くまま快楽に従う。いや、今の時点では快楽も感じていないに違いない。体の飢えを満たす為だけに、カカシと体を重ねているのだから。
「あっ、あっ、カカシ…早く…」
「早く、なに?」
促すように唇を啄むと、イルカが口を大きく開けた。カカシの舌を欲しがって、舌を突き出す。
「あっ…、早くちょうだい…っ、奥に…、あっ…奥っ…」
「…どうしようかな」
意地悪を言うと、イルカが泣きそうに顔を歪めた。
「おねがいっ…、カカシ…っ」
「だったらイルカからキスして?」
強請ると、うっすら瞼を開いたイルカが拘束された腕をカカシの首に回して顔を寄せた。唇を重ねる時、瞳がまた瞼に隠れた。イルカがきゅっと切なく眉を寄せて、カカシに舌を差し出した。それに深く舌を絡めると、イルカの肩に腕を回した。恋人のように抱き合うと、カカシはイルカに埋めていた腰を引いた。
「んぅっ」
口を重ねたままイルカが抗議の声を上げようとする。それを塞いで腰を突き入れると、イルカの舌が痺れるように震えた。連続して抽送を繰り返すと、イルカの喉から甘えた声が漏れた。
唇からも繋がった下肢からも、クチュクチュと濡れた音が立った。
「はっ、…イルカッ」
「あっ、あっ…カカシっ…」
早く、と搾り取るようにイルカの腸壁が収縮して、射精を促された。抗わずにすべてを出すと、ハッと詰めていた息を吐き出す。
だけど、これで終わりじゃない。カカシの精液を腹に抱えたまま、イルカが腰を振る。
「もっと…、カカシ、もっと…っ」
「ウン、分かってーるよ」
チュッと頬に口付けて宥めると、イルカの腹の中で育てられた性器を振り立てた。
「あっ、あぅっ、あっ、あっ」
イルカの声が艶を帯びる。下を見るとイルカの性器が僅かに頭を擡げ始めていた。
ふっと口の端が緩む。ぬーっと性器を引き抜くと、前立腺を押し上げるように突き挿れた。
「あーっ、あぁっ」
イルカの背が綺麗に反り返る。突き出された胸に唇を落とすと、小さな突起を口に含んだ。ちゅくちゅくと吸い上げて舌先で転がす。
「ひぁっ…、あっ…、だめっ…あぁっ…」
先までとは違う『だめ』にほくそ笑んだ。反対側にも唇を落とすと、今まで口に含んでいた方は指先で潰した。
「あぁっ…ひっ…あっ…はぁっ…」
イルカの腰が、カカシを求めて動いた。カカシの動きに合わせて腰を揺らす。イルカの勃ち上がり掛けた性器に手の平に包み込むと、ぎゅんと手の中で反応した。張り詰める性器を上下に扱いてやる。過ぎる快楽にイルカがぽろっと涙を零した。舌を伸ばして舐め上げると、それは酷く甘い。
再び唇を重ねると、ずり上がらないようイルカの肩と頭を腕の中にしっかり抱いて、ガツガツ腰を振った。駆け上がる瞬間、イルカにきつく締め付けられて、意識が飛びそうになった。
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