任務だろうか? 「うわぁ」 急に何故だかすごく照れくさくなった。ポスターの中のカカシさんはカッコよくて心臓がどきどきする。 「あ、そうだ、CM!」 テレビを点けて青麦ビールのCMを探す。チャンネルを変えながら、初めてCMを見た時にドキドキした訳に気付いた。 「カカシさんだったからだ・・」
まさかテレビ画面の中にいるなんて想像もしなかったから、あの人がカカシさんだとは思いもよらなかった。カカシさん以外の人にどきどきして、もしかして俺は自分でも気づかないうちに浮気性なのかと心配してしまった。よくよく考えたら男を好きになったのは後にも先にもカカシさんだけなんだけど。 『私もあんな風にぎゅっとされてみたーい』 たしか、よつば先生はそう言っていなかったか? 「・・ぎゅっ?」 途端に心穏やかではいられなくなって、ムキになってCMを探した。 (ぎゅってなんだ、ぎゅって。) もしかして、女の人を抱いたのだろうか?カカシさんが・・?
想像するとものすごく嫌な気持ちになった。悔しくて哀しくて涙が出てくる。これが任務なら俺が口を出すことじゃないが。 絶対、綺麗な人に違いない。 そんな確信が俺にカカシさんを責めさせた。仕事でもなんでも俺はカカシさんが女の人に触れるのはすごく嫌だった。すごくなんて生ぬるい。ものすごく、途轍もなく、最大級に、
鼻を啜りながらチャンネルを変えていると、麦畑が流れた。 「あっ」 手を止めて画面を食い入るように見つめる。 ちょうどカメラがカカシさんに迫って行くところだった。
カカシさんの手が麦を撫ぜる。 「やらしい撮り方するな!」 ムカムカしながら次のシーンを待った。女の人はいつ出てくるんだ。 だけど。
この後は、腕いっぱいに麦を抱えたカカシさんがそこに顔を埋めて、ふうわり笑うだけだった。ポスターはこのシーンから作ったのだろう。 「・・・なんだ」
『ぎゅっ』としたのは麦だった。 「・・・・・・・・・・」 だけど気持ちが沈んで、ポスターを片付けると布団に潜り込んだ。
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