絶対言わない 21


食事を終えて風呂に入るとすることが無くなってしまった。
寝るにはまだ早い時間だからテレビを点けてみようかと思ったが、カカシの邪魔になるかもしれない。
先にベッドに入って本を読むカカシを窺って、頭から被ったタオルの下で赤くなった。

あの半分開けられた空間は俺のだろうか・・?

狭いベッドの左側を開けるように座るカカシに一人照れる。
恥ずかしくて近寄れないから、居間に立ったまま濡れた髪をごしごし擦った。
気持ちを落ち着けるためにせめて髪が乾くまでの間に時間稼ぎをする。
でも髪が乾いたらどうやってあの空間に入ろう、と悩んでいたらカカシに呼ばれた。

「イルカ、イルカ」

にわかに走った緊張を隠しつつ、濡れた髪の間からカカシを窺うとおいでおいでと手招きされた。
てくてく歩いてカカシに近寄ると、カカシは左にずれて今まで座っていたところを空けた。
手を引かれてそこに座ると被っていたタオルを取られた。

「あ」
「そんな風にしたら痛んじゃうよ」

毛先をタオルで包んできゅっと捻って水気を絞る。
タオルを広げて濡れた髪を拭き始めたカカシに頭を差し出した。
柔らかな手つきが気持ち良い。
頭を撫ぜるように拭かれると、いい子いい子とされてるようで緊張が解けた。
あまりの心地よさに意識がとろとろしてしまう。

「眠いの?」

カカシに顔を覗かれて、頷いた。
いつもはこんなに早く眠くなったりしないのに、瞼が重くて開けていられない。

「じゃあ、電気消しておいで」

頷いて、部屋の隅のスイッチを消すとカカシの待つベッドへ戻っていった。
眠たさに恥ずかしさも忘れて捲られた布団の中に潜り込む。
横たわると体の上に布団が掛けられ引き寄せられた。
カカシの腕の中に入って、うつらうつらまどろむ。

「イルカ・・」

カカシの唇が額に触れる。
屈み込む気配に、顎を上げると唇が重なった。
啄ばむように軽く触れ合わせ、優しく食まれる。
甘いキスと眠気にふわふわ意識を漂わせていると、指が唇に触れた。
ふにふにと押したり、そうっと撫ぜたりする。
くすぐったくて、眠りを妨げる悪戯な手を捕まえた。
目を開けるとカカシは口元に笑みを浮かべて俺のことを見ていた。
また眠たくはないのか視線ははっきりしている。
捕まえていた手が動いた。
指が俺の指の間を滑り、深く絡む。
その指の美しさにはっとした。
今まで気付かなかったけど、カカシの手はとても綺麗だった。
細く長い指の先には短く切りそろえられた形の良い爪が付いている。
夜の光に青く染まった指先は氷のように滑らかに見えて、唇を開くとその指先を口に含んだ。

・・・・・冷たくない・・。

思惑と違って少しがっかりしながら口を離すと絡んでいた指が解けた。
口に含んで濡れた指が唇を撫ぜる。
くいっと唇を押されて、口の中に戻ってきた指が舌を引っ掻いた。
含んでいた分よりも奥へと指は進む。
戸惑っていると指は2本に増えて、舌の上をぬるぬると動いた。

「ははひ・・・?」

唾液が溢れそうになって上手く呂律の回らないまま問いかけると、カカシが覆いかぶさってきた。
唇が重なり指よりも柔らかいものが口の中に入り込む。
自由に動き回るそれがカカシの舌だと気付くのに時間が掛かった。
だって、こんなキスしたことない。
舌を絡め取られ、くちゅっと濡れた音を立てるのに首筋から熱が広がった。
息が苦しいけど、柔らかい舌が絡まるのは気持ちのいい。
カカシにされるまま大きく口を開けていると、カカシの舌が歯列を辿ったり口蓋を舐めたりする。

「ふあっ・・んっ・・あ・・っ」

最初はくすぐったかったものが快楽となって体の中を駆け下りて、下肢が形を変え始める。

「ア・・、カカシ・・」

恥ずかしさに身を捩って逃げようとすると、カカシの手がそれを引き止めた。

「イルカ、もう少しだけ・・。いい・・?」

カカシの懇願に夕方のキスが蘇る。

カカシがキスに満足するまで・・。

満足したら、カカシに気付かれないうちに寝てしまおう。
そんな気持ちで頷くと、カカシが唇を離して言った。

「怖かったら言って」

その意味を図りかねてぼんやりしているうちにキスが再開した。
入り込んだ舌に柔らかく舌を絡められると、その気持ちよさに陶酔する。

怖いことなんてなにもないじゃないか。

カカシの首に腕を回して引き寄せると、もっととキスを強請った。
カカシの手も俺の背中を抱き寄せる。
強い抱擁と口吻けに心臓がドキドキして息が上がった。
呼吸が苦しくなって胸をあえがせるとカカシが宥めるように背中を撫ぜる。
その手がするりと服の下に入り込んだ。
素肌を撫ぜる手が気持ちいい。
カカシのすることに身を任せていると、手は前に回りこんで胸の突起を引っ掻いた。
意識しないでいると、カカシが何度もそれを繰り返す。
そのうちおかしな感覚がして、カカシの手をそこから引き離そうとすると、カカシがきゅっとそこを捻った。

「あぅ・・っ」

瞬間、びりっと走った刺激に声を上げた。
大仰に体が震えて恥ずかしくなる。
やめてさせようとカカシの名を呼ぼうにも、口を塞がれて声が出来ない。
そうこうしているうちにカカシがそこを弄び始めた。
尖りを転がしたり押しつぶしたりする。
その刺激は下肢に直結して甘い痺れをもたらした。

「ふぅっ・・んっ・・はぁ・・っ」

逃れようと背を反らしても、カカシは離してくれない。

「やめて・・っ、カカシ、おかしくなる・・っ」

重なっていた唇を、頭を振って離すと懇願した。
下肢はとっくに形を変え硬く屹立している。
カカシが気付かなければどうこう出来るといった状態ではなかった。

「・・・いや?」

嫌とかそう言う問題じゃない。
切羽詰ってカカシから逃げたかった。
カカシのいないところに行って、欲を開放したい。
だけどそんなことが言える訳も無く、答えに窮しているとカカシが上着を捲り上げた。

「うわっ、はぅっ!」

散々弄られたところをぬるりと生暖かいものが這う。
あまりの刺激に背中が引き攣った。
ぐねぐねと柔らかな舌で突起を押しつぶされて身悶える。

「やっ・・あっ・・あっ!・・あ・・っ」

胸元をくすぐる髪に手を掛けた。
だけど力が入らなくて押しのけることも縋ることも出来ない。
ちゅぱちゅぱと濡れた音が響く。
その音にすら煽られて、限界を感じた。

イきたい。

「カ・・カシ・・、あっ・・あっ・・」

我慢しすぎて涙が零れた。
熱をどうにかしたいのに、カカシが体を離してくれない。

「や、だぁ・・っ」

腕を突っぱねてカカシから離れようとすると、するっと腰を撫ぜた手が下着ごと下衣を下ろした。

「いやだっ!やめろっ」

咄嗟に体を丸めてカカシの視線から勃起した性器を隠す。
恥ずかしくてどうにかなりそうだった。
ぼろぼろと涙が溢れ出す。

「カカシのばかっ」

こんなとこ見られたくないのに。

がつっとカカシの胸を叩くと、カカシの腕が一瞬緩んだ。
だけど、すぐに腹の下を掻い潜ると勃起した性器を掴んだ。

「あぅっ・・」

正直な体の反応に羞恥した。
どんなに恥ずかしいと思っても、そこはカカシの手に包まれて歓喜した。
びくびくっと脈打った自信に顔が赤らんだが、もう引き返せなかった。

「カカシ・・」
「泣かないで。オレがスルから・・」

優しく口吻けられて、ほっとした。
包むようにカカシが俺を抱え込んだ。
浅ましい姿に嫌悪されなくて、ますます泣きそうになった。

「大丈夫だよ、力抜いて」

耳元で囁いたカカシの手がゆっくり上下に動き出す。
ふわーっと蕩けるように腰に広がっていく熱に、次第に羞恥が薄れた。
きゅ、きゅっと先端に向かってカカシの手が動く。
単純な動きなのに、カカシにされると今まで感じたことないほど気持ち良かった。

「あっ、・・ああっ・・あっ・・」

手が動くたび、ひっきりなしに口から嬌声が零れる。

「イルカ・・可愛い・・」

カカシの言葉と早くなった手の動きに仰け反った。
突き出した胸元をカカシの髪が擽る。
ねろっと乳首を口に含まれて、気持ち良さが増した。
カカシの舌の動きに合わせて下肢が甘く痺れる。

「カカシ・・カカシっ・・あっ・・でる・・っ」
「いいよ、イって」
「あっ、あっ、あっ、ああっ、ああぁっ!」

我慢する間もなく、追い上げるように激しくなった手の動きに体の奥で畝っていた快楽が一気に駆け上がった。
びゅくーっと射精した後も、波は何度も襲って白濁を拭き零す。
カカシの手がそれを助けるように扱いた。

「あ・・っ、あ・・」

吐き出すものが無くなってもカカシの手は離れない。
甘い痺れの残る性器をカカシの手に包まれたまま、ゆっくり意識を手放していった。




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