「どうしたの?イルカ。座ったら?」
いつまでもドアを見ているイルカの手を引いてぎょっとした。振り返ったイルカの目に大量の涙が堪っている。
「えっ!?わっ!なんで…!?」
「…どうしてカカシさんはあの人に頼むんですか?お使いなら俺だって行けますっ」
ぽろぽろと零れ落ちた涙に慌てふためいた。うぅ〜と悔し泣きするイルカに思い出す。忍犬達にもライバル心を燃やしていたことを。
「違うよっ!イルカが役に立たないって思ってるんじゃないよ。イルカは傍に居て欲しいから。…二人きりになりたかったし!!」
「……そうなんですか?」
「そうだよ!いつもアイツいるから…。ね、イルカ泣かないで」
ごしごしと頬を拭って涙を拭いてやるが、イルカはまだ納得しない顔だ。
「…カカシさん、あの人と仲良いですよね。なんでも言えるみたいだし…。あの人も、カカシさんのこと良く知ってる……」
イルカの拗ねた口ぶりに、口許がもぞもぞした。イルカがヤキモチを焼いている。嬉しくて笑い出しそうになるのを必死に堪えた。
「イルカ、テンゾウはただの後輩だよ。オレがスキなのはイルカだーけ」
「好き!?」
「そうだよ」
吃驚した顔をするイルカに不思議になるが、思い返せばあまり言ってやってなかったか。
「スキだよ、イルカ。スーキ」
繰り返すとイルカの瞳がとろんと蕩けた。
「俺も好きです…」
膝の上に頭を乗せたイルカがごろごろと喉を鳴らすように呟いた。
(ああ、可愛い)
なでなでと頭を撫でながら幸せに浸る。
帰ってきたテンゾウは、結界を張って閉め出した。
○月×日 追記 テンゾウは役に立たない。