○月×日 イルカを医者に診て貰う。
イルカはご飯を食べないのではなく、食べられなくなっていた。
苦しげに嘔吐くイルカにナースコールを押すと知り合いの医者を呼んだ。直ぐさまイルカを診て貰ったが、結果は――、
「病気じゃなくてストレスだよ。ストレスから来る食欲不振と睡眠不足。もう随分寝てないみたいだよ」
医者は事も無げに言った。今は別室で点滴を受けていると言う。
なんでストレスなんか。
まさかアカデミーで虐められてるんじゃないかと気を揉んでいると、医者がオレを指差した。
「原因は、お前」
「どうしてオレが…」
まさか、もう別れたいと思ってるんじゃないだろうな。
それが言い出せずに悩んでるのではないかと思った。この前は嫌がるイルカを抱いたし、思い当たるフシはいくらでもある。
「あの子、ずっと来てたよ」
「え?」
「1週間、面会謝絶の間もずっと来てた。朝から晩までそこの椅子に座って、カカシの面会謝絶が解けるの待ってた」
「……………」
そこ、と壁の向こうを指差す医者にイルカの姿を思い浮かべた。一人で椅子に座って泣きそうな顔をしているイルカを。
どれほど心配させただろう。オレにとってこんな事は日常茶飯事なのに。
「…イルカは治るの?」
「まあ、お前が回復すれば自然と治るだろ。兵糧丸は飲めるみたいだし、…死ぬことはないよ」
最後にそう付け咥えた医者は手を上げると病室を出て行った。入れ替わりに、ベッドに寝かされたイルカが運び込まれた。看護師は部屋が足りないからだと言ったが、あの医者の配慮だろうか。
ベッドに眠るイルカは鎮静剤入りのビタミン剤を点滴で打たれて深く眠っていた。
(このバカ…!)
一体いつから食べず眠らずなんだ。
そんなんじゃ、オレの傍に居れないよ。