○月×日 イルカ先生の寝相が悪い。
なんとか大人しく寝て欲しいものだ。
がつっと頬を殴られて目が覚めた。見ればイルカ先生の手が頬を押し上げている。むくりと起き上がると大の字で眠るイルカ先生を見下ろした。
はっきり言って、イルカ先生は寝相が悪い。
こうして夜中に起こされるのも一度や二度じゃなかった。ベッドに潜り込んでくるのは良いが、すこしは遠慮ってもんがあってもいいんじゃないだろうか。おまけに掛け布団も独り占めだ。
すやすや心地良さげに口元を緩めて眠る顔が憎らしい。
「変化!」
イルカ先生の両手を掴むと猫に変えてやった。そうとも気付かないイルカ先生は猫の姿のまま仰向けの大の字で眠ってる。
久しぶりに広くなったベッドでゆったり手足を伸ばすと布団を被った。小さな体を引き寄せると、もぞもぞと体をくっつけてくるのが可愛い。
「おやすみ、イルカセンセ」
鼻の頭を撫でるとちろりと舌を出した。てち、と指を一舐めすると動かなくなる。
(いつもこうならいいのに……)
柔らかい毛に鼻を埋めると眠りに就いた。
翌朝、なにやら隣が騒がしくて目が覚めた。
見ればクロが両手を合わせて、「にゃ!にゃ!」と叫んでいる。
(ああ、変化を解きたいのね)
「解!」
ぼふんと煙を上げて人間に戻ったイルカ先生の片目からぽろっと涙が零れ落ちた。
「こ、怖かった……、一生猫のままかと思った……」
真剣に言うのが可笑しかった。よく眠れた上に仕返しも出来て、すっきりしながら両手を挙げて欠伸すると、イルカ先生が恨めしげに見ていた。
「カカシさんが俺を猫にしたんですか?」
「ウン」
「……や、やっぱりカカシさんは俺が猫の方が良いんですね……!」
「やかましいわ!アンタがそれをいうな!」
「いてっ!」
べしっとその頭を叩くと、イルカ先生がオレを見た。
「オレだって、たまにはゆっくり寝たいです」
寝相の悪さを説明すると、叩かれた頭を押さえながら頬を赤くした。
「……猫でいいから、これからも一緒に寝ていいですか?」
「…………」
猫でなくていいから、大人しく隣で寝て欲しいオレの気持ちが伝わるのはいつのことなのか。