←text top緋に染まる 8
初めて押し這入ったイルカの中は火傷しそうに熱く、きゅうきゅうオレを締め付けた。あまりの狭さにすべてを収めることは出来ず、ゆっくり腰を振って更なる潜入を試みがどうしても中程で押し返された。柔らかい内側に弱い先端ばかりを締め付けられて目の前が眩む。
目を閉じて湧き上がる快楽を堪えた。慎重に動いても、深い快楽を得る前に吐精させられそうで焦った。そうなる前になんとしてでもイルカの中に這入り込みたかった。
すべてを埋め込んで、オレのものだと思い知らせてやりたい。
そんな勝手な固執に囚われて動きが強引になった。
「ぃっ・・ぅ・・・はっ・・」
無理やり腰を進めようとすると苦しげなうめき声が聞こえた。目を開けてイルカを見下ろす。
「イルカ・・?」
声が届かないほど弱っているのかイルカは荒く息を吐くばかりで何の反応も返してくれなかった。さっきまで熱く勃ち上がっていたイルカの性器も力なく項垂れている。
「イルカ・・」
動きを止めて顔を覗き込んだ。冷えた頬に手を当てると彷徨っていたイルカの視線がこちらを向いた。
「も・・、終わっ・・た?」
「ゴメン、まだ」
ひうひうと掠れた息を吐くイルカに告げると、がっかりしたように顔が歪んだ。そのあからさまな表情が可笑しくてそんな場合ではないのに笑ってしまう。上忍に対して、しかも負の感情を露にするなんて珍しい。それでなくとも閨でそんな顔されたことなんて久しく無い。
「もうちょっと付き合って」
開いていたイルカの片足を胸へと折ると、挿れたままその体を横へ倒した。ぬめった皮膚が捩れて性器に絡み付く。
「・・くっ」
それがゆっくりと元へと戻っていく様を味わってから、イルカの背中を胸へと抱き込んだ。両手をイルカの性器と乳首に滑らせ弄り倒す。空いた口で目の前の耳たぶにしゃぶり付けば、イルカの唇から甘い声が上がった。逃げるように仰け反るイルカの背中を胸で捕らえて責め立てる。
「あっ、やぁっ、あっ、んあっ、あぁっ・・」
(なんて声・・)
鼻に掛かった啼声に脊椎が蕩けた。熱く溶けた水飴がゆっくり下肢を覆うように熱が広がって腰が重くなる。
(早く・・)
逸る気持ちを堪えながらイルカが快楽に我を忘れ始めた頃、穿っていた腰を慎重に進めた。じりじりと肉がイルカの中に這入り込む。
「はあっ・・あっ・・・アッ・・!」
苦しそうな息に強めに前を弄って気を逸らしてやる。溢れた先走りで小穴を抉ると一際高い声が上がった。
前での限界が近いのかイルカの腰が揺れ始める。その動きに合わせて腰を進めた。オレ自身の先走りにイルカの中で性器が滑る。
「・・っ!」
あまりの具合の良さに呻きそうになった。どうしようもないほど気持ちイイ。ようやく思うように動けるようになったイルカの中に、夢中で腰を擦り付けた。
「あっ、あっ、あっ、あっ」
突き上げるたび、イルカの口から短い声が上がる。それが苦痛からか快楽に寄るものなのかオレには分からなかった。手の中のイルカは張り詰めているが、眉は苦しげに寄っている。それでもオレは自分を止めることが出来なくて、イルカの首筋に顔を埋めた。
「スキだよ、イルカ、・・スキ・・」
想いが余ってつい首を噛んでしまった。
「あっ!」
痛みに跳ねたイルカの首をべろんと舐めて耳元に吹き込んだ。
「イルカ・・、スキ・・スキ・・」
こめかみに口吻けると、熱に浮かされ潤んだイルカの瞳がぱたぱたと瞬いた。
「・・・すき?」
「うん、スキ。イルカ、オレの傍にいて・・」
この瞬間、驚くほどイルカの体が緩んだ。あれほどきつかった抵抗が無くなり、すんなりと奥へ道が開いた。深い挿入にイルカが仰け反る。
「んあっ、ああっ」
ぽろりとイルカの瞳から零れ落ちた涙を啜った。頼りなく開いた唇を強く吸い上げる。熱く煮え滾った腰を押し付け、イルカの熱を手の中に感じながら、心が強くイルカを求めた。
(・・哀しい人)
閨での睦言を簡単に受け入れてしまう心に憐憫の情が沸いた。全然そんな風に見えないのに、この人の心は人からの愛情に飢えている。
「スキ」
髪をかき上げ耳元に吹き込むとイルカの眦から涙が零れた。
「スキだよ・・、ねぇオレのこともスキって言って・・」
繰り返し熱を穿ちながらイルカに強請る。だけど聞こえてるはずなのにイルカは何も答えなかった。イルカの性器を強く扱く。
「ひっ!あっ、あっ・・!」
後戻りできないところまで追い上げて、射精しようと性器が膨らんだところで屹立した先端を握り込んだ。
「ああっ、やっ・・やだっっ」
掴んだ手をイルカが引っ掻く。
「やだ、やめてっ」
「だったらスキって言いな」
握った手の親指で先端を刺激する。ぐりぐりと小穴を弄るとイルカが泣き出した。
「ああーっ、あーっ、やあー・・っ」
「言いなって。そしたらイかせてあげるから」
「やあっ・・、いや・・」
ぼろぼろ泣きながらもスキと言わないイルカに焦れた。
「ねぇ、言ってよ、お願い・・」
意図せず声が震えてみっともないなと思っているとイルカが言った。
「・・すき・・っ、あっ、すきぃ・・」
その瞬間、強烈な快楽が性器を押し上げてイクかと思った。なんとか堪えて掴んでいたイルカの先端から手を離す。後は軽く小穴を刺激してやるだけでイルカが射精した。
「ああっ、あーっ、あーっ!!」
びくびくと震える体を中から感じて息を飲む。痙攣するような内壁にもっていかれそうになり、耐えようとするより先に激しく腰を穿っていた。瞬く間に限界へと駆け上がり、最後はイルカに腰を強く押し付ける。最奥に射精するとたまらなく気持ちよくて、意識が飛びそうになった。深い満足感に心も体も満たされた。
はあはあと荒い息を吐いてイルカを見下ろす。同じく荒い息を吐きながら、薄く瞼を開いて朦朧とするイルカの汗ばんだ背中に口吻けた。
「少し寝ていーよ」
体を動かしたことでくちゅりと繋がったところが鳴る。出すのが惜しくてそのままにしていると、とろりとまどろんだイルカの瞳が閉じた。汗に濡れた髪を梳いて、深い眠りへと誘う。
(起きたらこれからのことを話そーネ)
そう心の中で話しかけて、眠るイルカの背中に体を重ねた。
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