緋に染まる 6





 もっとこっちにおいで。

 思わずちちちっと舌を鳴らしそうになる。代わりに「イルカ」と呼んで、その意識をこちらに向けた。茂みの奥に隠れた子猫を誘うように、優しく、根気強く。
(オレは怖くないよ、だからこっちへおいで。)

「イルカ」

 ちゅっと唇を吸い上げれば、蕩けた瞳がオレを見上げた。開いた瞼の奥でたっぷり水を含んだ瞳がゆらゆら彷徨う。そこに戸惑いと警戒の色を見つけてほくそえんだ。
 心配なんて要らない。そのままオレの懐の中に入ってくればいい。そしたらとても大事に可愛がってあげる。オレの一番いいところをアンタにあげるから、アンタをオレにちょーだい。
 唇を何度も啄ばんだ。髪を梳き、頬を撫ぜると激しく震えていた体が少しずつ治まっていく。まだ硬さの残る体を撫ぜながら、薄く開いた唇から舌を差し込んだ。つるんとした歯を舐めて、その奥へと進む。ぬるっと舌先が触れ合うと、驚いたようにイルカが身を震わせた。奥へ逃げようとする舌を追いかける。
「ふぅ・・ん・・っ」
 口を塞がれたイルカの息が鼻から漏れて甘く響いた。逃げた舌を根元から掬って擦り合わせる。くちゅくちゅと唾液の絡まる音に興奮して、深く深く唇を重ねた。胸の上に置いた手に激しく暴れるイルカの鼓動が伝わる。その手を横に滑らせると、手の平に小さな粒が触れる。
 イルカの乳首だ。
(ここに触れたらどうなるだろう?)
 男も同じようにカンジのか疑問に思いながら指先で触れるが、イルカは特にそれには何の反応も返さなかった。
(やっぱり男はカンジないのか・・)
 そう思っても柔らかな乳首は触り心地がいい。夢中で舌を絡めながら指先で捏ねたり引っ掻いたりしていると次第にそれは硬く尖ってこりこりと指先を押し返した。
(舐めてみたい)
 ふいに浮かび上がった欲求に、重ねていた唇を離して胸に顔を埋めた。舌で尖った乳首を転がして舐め上げる。ぐねぐねと硬さを押しつぶすと、イルカが顔を上げてこっちを見た。
「あ・・?」
 ぼうっとした表情は何をされているのか理解していないのかもしれない。舌を出してべっと舐めあげると、ようやくイルカの頬に赤みが差して体がわなないた。
「あ・・っ、なにして・・・?」
 なに、なんて愛撫に決まってる。ちうっと唇に含みなおして舌先で擽れば、ひくんとイルカの体が跳ねた。
(うーん、イイ反応)
 気を良くしてむしゃぶりつけば、刺激から逃げようとイルカが身を捩ろうとした。逃げる肩を押さえ込んで執拗に責める。
「あっ、やぁ・・っ」
 逃げ場を失ったイルカが胸を逸らして喘いだ。初めて聞く甘やかな声音に理性が焼ける。腰に熱が溜まって、早くと願った。
(早く中に這入って、体を重ねたい)
 その先にある快楽を思うと気持ちが急いた。
 片手でイルカの体を隠していた着物を肌蹴た。下に何も身につけていなかった体はあっさりその素肌を晒した。
「あっ」
 冷たい空気に触れ、裸を晒していることに気づいたイルカの体が羞恥に赤く染まった。肩を押さえていた手を跳ね除けて、うつぶせになって体を隠そうとする。そんな初心な仕草に簡単に煽られた。イルカの両手を片手で頭上に押さえると膝の上に乗り上げる。仰向けに押さえつけるとその体に視線を這わせた。
 思いのほか白く滑らかな肌は赤い着物に一際映えて目に映った。濡れて尖った乳首は酷く扇情的だが乾いた方は慎ましくて早く同じ色に染めてやりたくなる。鍛えられ引き締まった腹筋とその中央にあるおへそは、――少しだけでべそだった。
 可愛いおへそにくすりと笑みが零れる。それを聞きつけたのか、ぎゅっとイルカが目を閉じた。堪えるように口の端がわななく。
 空いた手で頬を軽く撫ぜ、唇に触れながら視線を戻した。黒い茂みと更にその下にある薄紅色の性器へ。そこは緩く勃ち上がって快楽を訴えていた。
「キモチ良かった?」
 聞けば、罪に打たれたようにイルカが震えた。横に背けた顔がくしゃりと歪んで喉から嗚咽が漏れ始める。
「イルカ、イルカ」
 どうして泣くの?
 背けられた顔を戻して宥める様に唇を重ねた。
「泣かないで」
 泣いても止めてあげられないし、イルカにも気持ちよくなって欲しい。
 勃ち上がったイルカの性器を手の中に包んだ。まだ柔らかなそれを強めに扱く。
「アッ!ンっ、・・っ」
 咄嗟に上がった声を唇を噛んでイルカが堪えようとする。それでも手の動きを早くしてイルカの快楽を煽った。
 何もかも忘れて、オレに溺れて欲しかったから。




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