漆黒に染まる 10





 何が始まるのだろうと思った。イルカが必死な顔で、俺に覆い被さってくる。イルカから口吻けられるのは嬉しい。さっきだって、謝罪の代わりに強請ったぐらいだ。
 だけど、オレを押し倒してどうするつもり?
 張り詰めた前を解放してやろうとしたのに、いらないらしい。
 カチャカチャとベルトを外して前を寛げようとする。
(脱がしてくれるの?)
 オレも勃ち上がり掛けていたから、ちょっと恥ずかしかったけど、イルカの好きなようにさせた。何が始まるのか、興味の方が強い。
 チャックを下ろしてズボンを下げると、パンツも下ろされた。イルカより先に脱ぐなんて初めてかもしれない。
 イルカが顔を赤くして、じっとソコを見ている。
(イヤン、恥ずかしい…)
 それだけで反応しそうになるのを我慢していると、イルカがいきなりソコに顔を伏せようとした。何をしようとしているのか分かって頭を押さえた。
「そんなコトしなくていーよ。まだお風呂に入ってないし。それよりオレにさせて」
 可愛らしく見えるよう小首を傾げると、イルカが泣き怒りの顔をした。
「お、俺だって、カカシさんを気持ちヨクしたいです!」
 ばっと頭を掴んでいた手を払うと、いきなり顔からダイブした。噛み付かれるんじゃないかって勢いに、一瞬ヒヤリとするが、イルカは犬のように舌を伸ばして前をペロペロ舐めた。ぎゅっと目を閉じているのに複雑な心境にさせられたが、好きな人に舐められてカンジないワケ無い。
 ゆらりと頭を擡げると、イルカが手を添えて先端に舌を這わした。柔らかな先端を何度も舐められて、足が跳ね上がりそうになる。
「イルカ、シてくれるなら口に含んで」
 先端への刺激を回避したくて強請れば、イルカは舌を伸ばしたまま俺を見上げた。
(うわっ! 反則…)
 ドクリと前が膨らんで、イルカの手を押し返す。イルカが吃驚した顔をしたけど、ゆっくり口を開くと、その口の中に俺の熱を銜え込んだ。
(くっ…)
 初めて侵したイルカの口内は熱く、含まれただけで蕩けそうになる。どっと腰が重くなって、無理に突き荒らしたい衝動が込み上がった。だけどじっと我慢して、イルカの口内を味わう。
 舌の動きはぎこちなかったけど、ざらっとした舌や口蓋に包まれて気持ち良かった。
 後ろに手を突いて、イルカの様子を視姦する。イルカの可愛い顔を歪ませている事実と、必死に奉仕する姿に興奮した。
(イルカ…)
 愛しさに頭を撫でて耳朶に触れると、ビクッと体を震えさせた。見るとモジモジと腰を揺らしている。さっきまでイルカも前を昂ぶらせていた事を思いだして、体を起こすと腰に手を入れて、イルカのズボンを下着ごと下ろした。
「んーっ!」
 露わになった下肢に、イルカが顔を赤くする。
「お、俺が…っ」
「後ろも自分で解してくれるの?」
 からかうと、イルカが顔を真っ赤にして口籠もる。
「ネ、続けて。スゴク気持ちイイ」
「ほんとですか」
 イルカが上気した頬に喜びを滲ませて聞き返した。
「ウン。ホント」
 喜びに、にかっと笑顔を浮かべたイルカに目を細めた。
 イルカは本当にカワイイ。
 いそいそと手を添え直して顔を伏せる。さっきより深く銜え込もうとするイルカが意地らしかった。
 イルカの純粋な魂が愛しい。
 イルカはオレの周りには居なかったタイプだ。
 付き合うようになって一緒に暮らし、周りからオレの情報を得て変わるかと思った。だけど変化したのはイルカのオレを見る目じゃなくて、自分自身を見つめる目だった。
 オレと付き合う事がなければ、一生言われることのなかった中傷を受けた。イルカの良さに気づけないバカの言う事なんて相手にしなくて良いのに。
 イルカの存在が、他の誰かに成り代わるコトなんて有り得なかった。
(本人は気付いてないけど)
 それで良いと思う。イルカの純粋さを変える要素は、オレが排除すれば良かった。
(ま、そのお陰で、イルカのカワイイ泣き顔が見れたけど)
 中傷を受けて遠離っていたかのように思えたイルカの心は、やはり一緒に暮らすうちに近づいていたようだ。以前はひっそりとしか泣かなかったイルカが、あんなに大泣きしてオレに泣き顔を晒して。
(ふふっ…)
 もっと見たくて、少しばかり意地悪してしまった。
 指を二本口に咥えると、たっぷり唾液を絡める。
(お詫びにいっぱいカンジさせてあげる)
 舌に残った唾液を掬い上げるようにして、イルカの後口に持って行った。指を傾けて唾液を垂らす。その僅かな刺激にさえ、ビクッと大きく体を震わせると、イルカはオレを見上げた。
(だから、反則だって!)
 オレのモノを咥え、腰だけ高く上げた姿がいやらしい。唾液を後口に馴染ませるように円を描くと、イルカが鼻を鳴らした。もう片方の手で後口の淵を外側へと引っ張ると、中の薄い皮膚を露わにして唾液を塗りつけた。
「ふぅんっ、んっ…、ふぁっ…」
 弱い皮膚への刺激にイルカが目の淵を赤く染めた。そのまま指を一本だけ中に潜らせると、まだ開ききっていない入り口が、オレの指をキツク銜え込んだ。中に入った指を大きく回せばイルカが身悶えた。
「かはっ…あっ…カカシさんっ、だめっ…、そんなの…だめっ…」
「もう我慢出来なくなってるの?」
 オレのモノから口を離してしまったイルカに問えば、ふるふる首を横に振った。もう一度唇を開くと、オレの熱に奉仕する。
 唾液を足して後口を緩めていくと、イルカの体が震えだし、その震えは舌先にまで届いていた。
(いつも、そんなにカンジていたの?)
「あふ…んっ…んんっ…ふぅっ…ぅっ…あ…っ、ああっ…」
 三本にまで増やした指で中を掻き混ぜると、イルカが喘いだ。堪えきれないようにポロポロと涙を零し、腰を揺らめかす。
「あっ、あっ、もうっ…」
「ウン。イルカ、おいで」
 声を掛けると起き上がって、オレの首に腕を回した。
「ホラ、そんなんじゃ、出来ないデショ?」
 膝を立ててしがみ付くのに、腰をポンポンと撫でてやると、体を離したイルカがオレの腰を跨いだ。
(おや…?)
「イルカ、自分でスルの?」
 聞いてやると、恥ずかしそうにしながら「うん」と頷いた。
「うれしい。じゃあシて」
 後ろに手を突いて上体を反らすと、イルカはオレの腹に手を突いて腰を下げた。
 イルカの広がった足や、勃ち上がったモノが丸見えで、まさに絶景だった。
 イルカの足の間から、オレの熱が這入っていくか窺っていると、互いの濡れた側面が滑り合ってツルンと逃げた。
「イルカ、手を添えないとダメだーよ」
 教えてあげるとイルカがはっとオレを見て、それから膝を立てて後ろに手を回した。
 ゴクリと喉を鳴らして生唾を飲み込む。
 イルカは俯いてオレの熱を掴むと、自分で後口に導いた。
「…イルカ、自分で広げて」
 つい欲が出た。カッと頬を染めるのに、やってくれないかと思ったが、イルカはぎゅっと目を閉じると自分で後口を広げた。それから腰を下ろすのに、鼻血が出るんじゃないかと思うほど、興奮した。
 恐る恐る腰を下ろすイルカに、先端にチュッと窄まりでキスされる。それからぐぅっと腰を下ろすと、広げた入り口からオレの熱を飲み込んでいった。
 狭くて熱い腸壁に包まれる。
(ぅ…はっ…)
 絞り込まれるように飲み込まれていって、秘かに息を詰めた。イルカにシて貰うのが、こんなにイイとは。
「う…、はぁっ…、はぁっ…」
 対するイルカは苦しそうだが、確実にオレを飲み込んでいった。イルカはぺたんと腰が合わさるまで頑張ると、くたりと体から力を抜いた。
 挿れるだけで疲れてしまったイルカの体を引き寄せると、唇を合わせた。
(お疲れさーま)
 オレの熱が体に馴染むまで休ませる。ちゅっちゅっと唇を啄み、涙で濡れた頬を舐め上げると、パタパタとイルカが瞬いた。
「…カカシさん、シないんですか?」
「スルよぉ?」
 どうやらイルカのガンバリは、ここで終わりらしい。最後まで動いて、オレをイかせるところまで考えていないところがイルカらしかった。
 くすりと笑って鼻先に口吻けると、ずんと下から突き上げた。
「あっ!」
 慌ててオレの肩を掴んだイルカの腰を支え、繋がりを深くするべく肩を掴むと下に引き下げた。同時に突き上げると、結合が深くなる。
「あっ! あぁっ…あっ…」
 連続して突き上げると、イルカが甘い声で啼いた。
「ひゃっ…あっ…きもちイイ……」
「気持ちイイの?」
 トロリとしたイルカが、思わず漏らした言葉を重複すると、きゅっと後口が締まった。
「あっ、だめっ…」
「なにがダメなの? こうスルの、ヨクない? イルカ、ここ好きデショ?」
「あっ…アァッ…あっ…んっ…あぁっ…」
 腰を回して前立腺を擦りあげると、放りっぱなしだったイルカの前から、たらたらと白濁した先走りが零れていた。
「ホラ、イルカの気持ちイイって。いっぱい白いの零してるよ」
 肩を掴んでいた手を離して前を扱くと、イルカの腰が揺らめいた。
「あっ…イイっ…あーっ…」
 そんなに良いなら、もっとヨクしてあげたくなるのが男の性だ。濡れるイルカの先端を、ぐりぐりと親指で潰すと小穴を穿った。泉のように湧き出る先走りを小穴の淵に塗りつける。
「うあっ、あっ、あぁっ…」
 ヒクヒクとイルカの中が痙攣して、オレを締め付けた。
「だめっ…、そんなにしたら、イっちゃう…っ」
 イルカの手が俺の手を上から押さえた。
「アレ? もうシなくていいの? それともイルカ、自分でシたいの?」
 イルカの熱から手を離すと、逆にイルカの手で握らせた。上から手を被せて数回扱いてやるが、手を離すと違うと思ったのか顔を曇らせた。しょぼんとしたイルカに内心吹き出しつつ、空いた両手で腰を掴むと大きく回した。

「アッ!」
 途端に可愛く啼いたイルカの唇を吸った。
(イルカはオレがシてあげないと、ダメだーね!)
 男冥利に尽きる。恥ずかしがり屋だけど、快楽に素直なイルカの反応はオレを喜ばせた。もっといろいろシたくなる。
「イルカ、今度はあっちを向いてお尻をあげて」
 回していた腰を高く持ち上げると、ぬるりと光ったオレの熱がイルカの中から抜けて、イルカが「あっ」と物足りない声を上げた。
「さ、早く」
 体を押して促すと、イルカは四つん這いになって尻を向けた。べたべたに濡れた太股と後口に目が釘付けになる。膝立ちになって自身を掴むと、イルカの後口に押し当てた。ひくりと動いた窄まりに、一息に腰を突き挿れる。
「アァッ」
 ガクリ崩れたイルカの腰を引き寄せて抽送を開始した。座位よりも楽にイルカの中を穿てる。
「あぁっ…あっ…あぁっ…」
 意識を飛ばしたような甘い声で啼くイルカの背中に覆い被さり、前に手を伸ばした。
 ぐちゅぐちゅに濡れた前を扱いてイルカを高める。尖った乳首を転がすと、イルカの中が締まった。
「やぁっ…あっ…ふぁっ…あーっ…」
 抽送を早くして、イルカのペースを乱した。
「ダメ…アッ…カカシさんっ…だめぇ…っ、だめぇ…っ」
 痙攣し始めたイルカに、最後の追い上げを掛けた。最奥まで届くように腰を突き出すと、イルカの尻がパンパン音を立てた。
「アーッ! イクっ…、アァーッ!!」
 手の中でイルカの熱が震え、びゅるるっ!と噴き出た精液が指先を濡らす。中が痙攣するようにオレを締め付け、それに抗うように熱を穿つと、一気に高みへと持って行かれて熱を解放した。
 目眩のするような快楽の中で、イルカを強く抱き締める。
そうでもしないと体がバラバラになりそうな気がした。
 射精の余韻が引いていくと、はぁはぁと息を荒げながら、抱き締めていた腕から力を抜いた。
「イルカ、大丈夫?」
 汗だくになって疲れ切っているイルカを緋色の布団に横たえて、汗で頬に張り付いた髪を払ってやった。
「イルカ…」
 はふはふと忙しなく呼吸する唇に口吻ける。
「好きだーよ」
 改めて告白と、イルカがじわりと涙を浮かべた。
「カカシさん……、俺も! 大好きです!」
 それだけで充分。
「イルカがそう言ってくれると、オレはいつだって幸せになれるんだーよ。もっとオレを信用してね」
 それだけ伝えると、イルカは涙を零しながら、「はい」と応えた。


 それからもう二回ほど挑んで眠りに就いた。明け方、起きたイルカがこっそりオレに聞いてきた。
 ――付き合ってる事を、みんなに言ってもいいですか? と。

「そんなのオレ、とっくに言ってるよ」
「えぇっ」
 驚くイルカが可愛くて、更にもう一回挑んでしまった。




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