漆黒に染まる 7





 仕事を終えて、待ち合わせの場所へ行くと不機嫌そうなカカシさんが居た。歩き出しても何も話さず、俺の方を見ようともしない。
 いつもなら、その日あったことを楽しそうに話してくれるのに。
「……あの、どうかしたんですか?」
「別に」
 そっけない態度に傷付いた。
「カカシ、さん…?」
「……」
 今度は返事もなかった。いよいよ嫌われてしまったのかと哀しくなった。
 それでもカカシさんが向かう先は俺の家だ。
(まだ大丈夫…、でも家で別れを切り出されたらどうしよう)
 不安に激しく胸を揺らしていたら、家に帰り着いた。
「イルカ、シよ」
 部屋に入るなり、カカシさんが俺の腕を掴んだ。真っ暗な廊下から寝室へ、引き摺られるように移動しながら体が震えた。
 カカシさんとスルのが怖かった。、また痕を残されたら、今度は言い逃れできない。
「あ…、カカシさん、俺……っ」
 どさっとベッドに突き飛ばされて、、無表情なカカシさんを見上げた。怒っている気がした。額当てを外して、煩わしそうに口布を下ろすと、カカシさんがのし掛かってくる。
 シたくないとは言えなかった。言えば、終わりの気がする。カカシさんと別れたいワケじゃない。だから拒否の言葉を飲み込んだ。
 力を抜くと、じっとカカシさんが俺を見ながら頬を撫でた。
 嫌じゃない。俺だって、本当はずっとカカシさんに触れられたかった。近づいて来る唇に瞼を閉じると、深く重なった。潜り込んできた舌に舌を絡み合わせると、じゅっと体が火照った。服の上から体中をまさぐられて、発火しそうになる。
「あっ…」
(カカシさんっ、カカシさん…っ)
 カカシさんの激しさに、必死に付いていこうとした時だった。カカシさんの唇が首筋に触れる。
 刹那、俺はカカシさんを思いっきり突き飛ばしていた。しまった、と思った時には、カカシさんがこれ以上ないほど険悪な顔で俺を見ていた。
「…どうして拒むの」
 低い問い掛けに体が震えた。話せば話すほど、破滅に近づいていくのが分かっていた。
「…ごめんなさい」
「そんなこと聞いてない。どうして突き飛ばしたか聞いてるの。答えてよ。もうオレに抱かれるのイヤ? オレの事、嫌いになった?」
「違います!!」
 否定したけど、その後の言葉が続かなかった。
 どう言えば良いのだろう。理由なんて、俺の女々しい言い訳ばかりだ。そんなのカカシさんに聞かせたくない。
 黙っていると、カカシさんが強引に俺を引き寄せ、組み敷いた。
「あっ!」
「もういいよ。言う事無いなら、黙って抱かれな」
 かっと頭の中で何か弾けた。
「嫌だ!」
 飛び起きて、カカシさんから距離を取った。
 そんな言い方あんまりだ。そんな抱かれ方、したくない。
「カっ、カカシさんは、俺の体が目当てなんですか!?」
「はぁ?」
 カカシさんは心底呆れたと言わんばかりに鼻を鳴らした。
「体だけなら、女抱いた方がよっぽど楽デショ」
「だったら、そうしたらいいでしょう! 無理してうちに来て貰わなくて大丈夫です。どこへでも好きなところへ行け!!」
 わぁっと嵐の様な感情が込み上げて、カカシさんを怒鳴り散らしていた。

 頭が冷えたのは、背を向けたカカシさんが玄関から出て行ってからだった。




text top
top