漆黒に染まる 4





 最近イルカの様子が変だった。妙に萎縮していると言うか、よそよそしいと言うか……。
 理由は考えてみたけど、分からない。
 もしかして嫌われたのかと思ったが、抱き締めると体から力が抜けるから違うだろう。
 それとなく理由を聞いてみたが、イルカは言わない。
 だったら自分で原因を見つけて解決するしかない。
 それとなくイルカの周囲に目を配った。
 まさかと思うが、イルカに手を出したり、虐めたりしている輩がいるんじゃないだろうな。
「オレ、アカデミーのイルカ先生と付き合ってるから。手を出したら殺すよ? 今ここにいないヤツにも言っといてネ」
 上忍待機所で宣言すると、何を今更とばかりに視線を逸らされた。
 うんうん、そうだよね。オレ、いっつもイルカの話してるもんね。
 これで暗部と上忍には釘を刺したから、馬鹿な真似をするヤツはいないだろう。
 あとはイルカの周辺だけだ。手っ取り早く職員室と受付所で宣言してしまいたいが、イルカはどうもオレと付き合ってるのを恥ずかしがる傾向があるから、了解を得てからの方が良いだろう。
 勝手な事して、イルカの機嫌を損ねたくない。


「イルカ、今日の晩ご飯なぁに?」
 トントンとまな板の上で何かを切っていたイルカの背後から腰に腕を回してに纏わり付いた。
「あっ、カカシさん、危ないですよ。包丁を使ってる時は近づいたら駄目だって言ったでしょう」
「危なくなんかなーいよ。だってオレ、気を付けてるもん」
 子供っぽいことをして、ワザとイルカに怒られた。イルカは本気でオレのことを怒ったりしないけど、そうすることで本来のイルカが顔を覗かせる。
 家に帰ってきたばかりのイルカはぎこちない。過剰なほどのスキンシップでもって、イルカを解きほぐした。
 何がイルカを苦しめているのだろう。
(オレに言ってくれればいいのに……)
 切なくなって、イルカを抱き締める力を強くすると、イルカの体からくたっと力が抜けて、オレに凭れ掛かってきた。えへ、と悪戯っぽい顔して、オレを見上げるイルカの目元に口吻けた。
(イルカはこんなに可愛いのに……)
 甘えきってくれないイルカがもどかしい。


「あっ…あぅ…あ…っ、カカシ、さん…もうっ…」
「だぁーめ。もうちょっと付き合って」
「ひっ! …あぁっ…」
 汗だくになって仰け反るイルカを責め立てた。優しくしたいと思うけど、日頃のもどかしさがこんな時に表れた。

 もっとオレに甘えて欲しい。
 もっとオレを頼って欲しい。
 もっと、もっと……

 そう願う気持ちが形を変えて、手加減出来なくなる。
「アッ! あっ…、カカシさんっ、もうだめっ…、もうだめぇ…っ」
 ぽろぽろと泣き出したイルカの涙を吸い上げる。繋がった所がくちゅくちゅと粘ついた音を立てていた。
(何回出したっけ…?)
 数えてみるが定かじゃない。キモチ良くて、まだ止めたくなかった。射精が近いイルカにきゅうきゅう締め付けられて目眩がした。
「イルカ…」
 首筋に顔を埋めると、イルカが背中にしがみ付いた。汗ばんだ首筋を舐め上げきつく吸い上げると、イルカがビクビクと震えた。
「キモチいーい? もうイキたい?」
「アッ…イイ…っ、イ…っ、イクっ…もうイキたい…っ」
「ン.じゃあ前擦ってあげるね」
 そう言って、ぐずぐずに濡れたイルカの熱を握ると強く扱いた。
「―ッ!!」
 声も出せないほど感じているイルカの背中が綺麗に反り返る。オレの背中に回ったイルカの手が、快楽に振り落とされまいと爪を立てた。
 鋭い痛みもイルカが付けたものだと思うと快楽に変わる。
「アー、アーッ、カカシさんッ! カカシさん!!」
 最後はオレの名前を呼んでイルカはイった。腹に弾ける熱い飛沫に、オレもイルカの最奥にまで腰を押し付けて射精した。オレが吐き出す間、イルカの手は緩むことなく一緒にカンジてるのが窺い知れた。
 荒い息を吐きながら、汗と涙に塗れたイルカの顔を掌で拭ってやると、ようやくイルカの体から力が抜けた。
「キモチ良かった?」
 とろんとまだ遠くを見ているイルカに聞くと、こくんと頷く。その様が可愛くて、イルカの唇に口吻けた。
(どうしよ、またシたくなってきた)
 ちゅ、ちゅっと音を立てて口吻けながら、イルカのご機嫌を伺った。


 翌朝、イルカがなかなか洗面所から出てこないなと思っていたら、首筋に付けた痕を気にしていた。
 謝ると、イルカは笑って許してくれたけど、その日から、抱かせてくれなくなった。




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