緋に染まる 10





 最初、紅い着物の背に流れる黒髪に目が釘付けになった。次いで振り返ったイルカの頼りなげな風情と憂いを帯びた瞳に。
 そこに涙が溜まっているのを見て柄にも無く慌てた。理由を聞けば尻が痛いと言う。そのあからさまな言いようが可笑しくて笑ってしまったが、治療を申し出た後の彼の慌てようは可愛くて、ついからかってしまった。
 柄にも無いと言えば、終わった後に相手の体を清めてやったことも、おにぎりを握ったのも初めてだ。自分のためにすら作ったことのないおにぎりを記憶を頼りに握ってみれば出来はかなり悪かったけど、それでも美味しそうに食べてくれたイルカに愛しさが湧いた。
 だけど羽織らせただけの着物は簡単に肌蹴て、その下の肌を露にした。紅い着物の隙間から覗く胸元や腿に、オレは簡単に欲情した。
 邪な想いを隠してした告白は、断られること無く受け入れられて本当の幸せを知った。

 口に含んだ乳首を舌先で弾くとイルカの体がビクビク跳ねた。くぐもった声に視線を上げれば、唇を噛み締め快楽に堪えようとする。そんな仕草に煽られて、指を添えると舐めながらぐにぐにと押し潰した。そこがイルカの感じるところだとオレはもう知っている。
「ひゃっ、あぁ・・っ、ゃあっ」
 上がった声に満足して、指を残すともう片方に移動した。こっちは触れるか触れないかぐらいの愛撫を施す。細く息を吹きかけると乾いた乳首が刺激を待ちわびるようにつんと勃ち上がった。繊細な刺激がもどかしいのかイルカがもじもじと体を揺らす。そんな無意識の媚態に煽られて、唇にするように深く口吻けると尖った乳首を舐り回した。
「ああっ、はぁ・・んっ・・あっ・・」
 がくがく震えるイルカの背中を支えると指と口での愛撫を続ける。悶えるイルカはさっきまでのおにぎりを頬張っていた無邪気さは欠片も無く、淫らでいやらしい。
 視線を下げれば正座したイルカの足と性器が視界に入った。そこは快楽を感じて姿を変えている。
 唇を離すと乳首の先から舌先まで糸が引いた。ぷつんと切れて小さな唾液の玉が乳首に戻っているのを見届けてからイルカの股間に頭を伏せた。先端に軽く口吻ける。不思議と汚いとは思わない。ただその瞬間、イルカがすごく感じ入った声を上げたから唇を開いて口の中に招き入れた。
「アアッ、アッ、だめ・・っ」
 ぎこちなく背中を押し返される。逃げようとする腰を強く捕まえてしがみ付くと深く深く咥え込んだ。
「あっ!」
 ぱさぱさっと着物越しの背中にイルカの髪が揺れる。
「だ・・ぇ・・っ、出・・て・・」
 きっと首を横に振っているのだろうが、構わず舌を這わせると頭を上下させた。ぐんとイルカが大きく育つ。それが嬉しくて夢中で口を動かした。続けていくうちに口の中に苦味が広がる。いつの間にか背中を押す手の代わりに、イルカの重みと熱く湿った息が背中に触れていた。
「ああ・・はあ・・っ、んあっ・・あ・・」
 吹きかけられる甘い息に体中が熱くなる。硬く張り詰めた性器を口から出すと手で撫ぜて滑りを拾った。浮き出た血管に唇を這わせながら手は正座した太腿の間を潜らせて、さらに奥を目指す。
 触れた瞬間、イルカの腿がぴくっと震えた。背中に掛かる重みが増してイルカの体が強張る。体を丸めて縋り付いているイルカが容易に想像できた。
 さっきここが痛いと言っていた。
 でも「ひどくしない」とは嘘でも言えなかった。どんなに優しくしても慣れないイルカの体には負担が掛かるし、引くつもりも無い。
 ちゅっと性器への愛撫を再開すると濡れた指で後口を撫ぜた。根元を扱きながらよりカンジやすい先端を舐めてイルカの気を散らす。
「ふっ・・う・・ん・・あっ・・あっ・・」
 やがて性器が硬さを取り戻し、イルカの唇から啼声が漏れ始めた。溢れた先走りが後口にまで届く。その滑りを借りて入り口を撫ぜ、柔らかくなってきた頃を見計らって一本だけ指を中に挿入れた。ひくっとイルカの体は震えたが、熱くて柔らかな襞はみっしり纏わり付いて隙間なく指を包んだ。その柔らかさに陶然となりながら襞を探る。どこかに男がカンジるところがあると聞いたことがあった。
「う、あ・・」
 嫌がるようにイルカが腰を引く。その瞬間指が抜けかけて、何かが指先に触れた。
「ああっ!」
 イルカが甘い叫び声を上げた。慌てて抜けそうになった指を戻して襞の奥を探る。
(確か・・この辺・・・)
 指を折り曲げて触れる突起をぐりぐり抉る。
「あっ!あっ!やあっ・・っ!」
「・・・見つけた」
「やだっ、やっ!やめてぇ・・っ」
「どうして?気持ちイイでしょ?」
 もう片方の手の中で張り詰めたイルカに確信する。そこはもう扱く必要も無いほど硬く屹立していた。
 慣れさせる為に指を増やす。性器を模して指を抽挿させた。抜き差しするたびにくちゅくちゅと卑猥な音が鳴る。
「ああっ・・あっ・・ああっ・・!」
 強く突き上げるとイルカの性器から白濁した液が零れた。
「あっ、あっ、あっ、やだ・・っ、イっちゃ・・っ、イっちゃうっ・・」
「いいよ、イって」
 ぶるぶる震えるイルカの性器を咥えなおすと吸い上げた。すでにそこは三本の指を咥え込んでいる。
「ヒッ!だめっ・・だめぇ・・っ、離・・て・・はな・・ああ・・っ」
 我慢が出来なくなって抽送を早くした。舌先で鈴口を抉る。大きく膨れた性器の先端から勢い良く精液が噴出して口の中に溢れた。
「あああっ!あっ!ああぁっ」
 まだ溢れてくる精液を手で扱いて出してやる。最後の一滴まで搾り出すと、口の中に溢れたものを飲み込んだ。後口から指を引き抜くと、薄く汗に濡れた太腿に頬を摺り寄せた。
「・・・気持ち良かった?」
「・・・・・」
 言葉は無かったけど、背中にこくりとイルカが頷くのを感じて嬉しくなった。得意な気持ちでいっぱいになる。目の前にある項垂れた性器に口吻けてから、ぐったりしたイルカの下から抜け出た。
 上気して、とろりと潤んだイルカの瞳に満足する。
 準備は万端。
「じゃ、今度はオレの番ね」




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