やさしい手 1
七班との任務が早く終わりどうしよっかなとぶらぶら木の葉商店街を歩いていたら見慣れた黒い尻尾がコンビニから出てきた。大きなコンビニ袋を2つ持ってテクテク歩いている。
「イルカセーンセ!」
知らない人でもなかったので声を掛けた。
「あ、カカシ先生。お疲れ様です」
今お帰りですか、とにこっと笑う笑顔が何だか眩しい。
「ハイ。お買い物ですか?」
尋ねると嬉しそうに袋を持ち上げた。
「はい。今日ナルトが来るって言うんで」
そう言えば帰り際にそんな事をナルトの奴言ってたな。
袋を見てみるとコンビニ弁当が2つ。そして下ろされたもう一つの袋も同じ形をしていた。
コンビニ弁当を4つ?
「お弁当ですか?」
「はい。いつも一楽のラーメンなんでたまには違うものをと思いまして」
はにかんだ様にぽりぽりと頬を掻いた。
「そうですか・・・」
なんだか違う・・・ような気がする。
「あ!カカシ先生がここにいらっしゃるってことはナルトの奴もう来てるかもしれない」
それじゃぁ、と駆けて行くイルカ先生を見送った。
翌日、任務中のナルトの動きがどーも鈍かった。
「ほら、ナルト!早くそこ運びなさいよ」
「・・・ドベ」
サスケに言われてムキーっとなったナルトを呼び寄せた。
「オマエね、どうして今日はそんなに鈍いのよ」
「なんかよー胃がもたれちゃって」
は?ガキが言うせりふか?
「オマエね、何いってんの?」
「だってよ、だってよ、イルカ先生ってば昨日と同じ弁当朝も食わんだもん」
「・・・・・・・・」
「なんか飽きちゃって」
その言葉に昨日のコンビニ弁当を思いだした。
はーっと溜め息を零すナルトにま、頑張んなさいよと送り出した。
その日の夕方、たまには自炊するかと商店街をぶらついていたらまた黒い尻尾が見えた。何故かオレはこの尻尾に反応してしまう。
「イルカセンセ?」
「あ!カカシ先生・・・」
「・・・・なにしてんの?」
イルカ先生はコインランドリーで悪戦苦闘していた。どうやら乾燥機のフタが閉まらなくなったらしく両手で押さえていた。
「・・・・手伝いましょうか?」
「あ・・いぇ・・・なんとか・・・」
ならないだろう。それは。
近づいて見てみると乾燥機の中にはぎっしりと脱水された衣類が詰まっていて更にはみ出していた。
「アンタ、ムチャしすぎ。こんなに詰め込んだら閉まるもんも閉まらないでしょう?」
びっくりしてついイルカ先生をアンタ呼ばわりしまった。
「え・・・そうなんですか?洗うのは一回で出来たんで乾燥も一回で出来るのかと思ってました」
「ほら、ここに容量が書いてあるデショ。この分しか入らないんですよ」
トントンと数字を指すとへーっと関心したような声を出す。
「カカシ先生って物知りなんですね」
いや、そんな尊敬の眼差しで見られても。
「これで全部なんですか?」
「いえ、まだあるんです」
えっ?と思って洗濯機の方を見てみると意表をつく量だった。中にはまだ2/3残っている。
この量を一回で洗ったのか!?すごいよそれは!よく回ったな洗濯機!ってか洗えてるのか!?一体何日分だよ!
呆然と見ているとイルカ先生がお恥ずかしいと小さな声で言った。
「オレ、機械に弱くって」
そっちですか!恥ずかしいのは!
「イルカ先生、いつもどうしてるの?洗濯」
「えっと手で洗ってるんですけど最近忙しくって・・・・」
中忍ってそんなに給料少ないの?
喉まで出掛かった言葉は飲み込んだ。
「・・・とりあえず分けて乾燥させた方がいいですよ」
「そうですね!」
ニコニコしながらはみ出た洗濯物を取り出しているイルカ先生を見ていると洗濯機を買ってあげたくなってしまった。