眠れない夜 6
「できたよ」
耳元で囁かれる。
きっと、目を開けて見ることを促されたんだろうけど、とてもじゃないが出来なかった。いつまでも目を閉じているとカカシさんの手が動き出す。だけどそれはすごく変な感じで、カカシさんの手の感触がとても遠い。
いやだ。
「もう、とって・・」
「このままイってみせて」
甘く言ってカカシさんは手を動かし続けた。嫌だと首を振っても聞いてくれない。
「ふうっ・・うぅ・・はっ・・」
中心を弄られれば熱くなる。だけどそれを吐き出すには刺激が足りなかった。感覚が鈍くなったみたいにいくら擦られてもいつもみたいに感じない。酷くもどかしくて頭の中が掻き乱された。体の奥に蟠る熱を吐き出したくて堪らない。それなのに行き場のない熱を煽られるばかりで苦しくて目じりに涙が浮かんだ。後ろ手にカカシさんの肩を掴んで引っ張った。
「やぁっ‥とって、も・・とって・・っ」
「このままじゃイけない?」
ひくりと喉を震わせ頷くとカカシさんが体を支えていた腕を離した。
やっと取って貰える。
かすんだ頭でほっとしていると思わぬ刺激に仰け反った。
カカシさんの手が性器の付け根をぬるっと撫ぜた。大きく足を広げて薄くなった皮膚がその感触を敏感に拾い、ますます性器を滾らせた。
「ひいっ!やだっ、もうやめてっ」
泣いて懇願するが、会陰を撫ぜた指がその奥へと潜り込んで悲鳴を上げた。指は濡れているのか抵抗なく進み、今ではすぐに見つけられてしまうイイところをぐっと擦り上げた。
「ああっ、あっ、ああっ・・」
強烈な刺激に目の前で火花が飛ぶ。カカシさんが激しく手を動かすと抽挿する度にクチャクチャと卑猥な水音が立った。連続してそこを擦られると甘い波が何度も押し寄せる。耐えていた体は瞬く間に上りつめ、一際高い声を上げるとコンドームの中に精液を吐き出した。
「ひっ・・ああ・・っああ・・っ」
硬度を失っていく性器をカカシさんの手が根元から搾り上げる。そうして中に残った精液もすべて出し終えるとカカシさんが漸く手を緩めた。
体中が快楽の余韻に浸って熱い。
ひうひうと息を吐き出して呼吸が落ち着くのを待っている間にカカシさんがゴムを外した。ぬるっと外されるそばから膜の中で籠もっていた熱が逃げてひんやりする。ぶるっと体を震わせると、カカシさんが肩に置いていた顎を上げて、ちゅっと頬に口吻けた。
今までずっと見てた・・?
気付いた事実にかっと頬を滾らせると、更にカカシさんがとんでもないことを言った。
「いっぱい出たね」
目の前に精液の入ったゴムを翳し、にこにこ見ている。
「ぎゃあー!なに見てんですかっ!?」
手を上げて取り上げようとすると、ひょいと逃げた。手を高く上げて届けなくすると、片手でくるんとゴムを回し入り口を結んだ。
「なにしてんですか、早く捨て――」
「やーだよ。勿体無い。お守りにするんだから」
「あほかーっ!んなもん持ち歩くなっ!てか返せ!ええい――」
手っ取り早く火遁で燃やしてやろうと印を結びかけると、ぎゅっと手を掴まれる。残った手を伸ばして取り上げようとすると、カカシさんがさっと手を翻した隙にそれは手品みたいになくなっていた。
「え、ない?どこやったんですか?どこ?」
掴んだカカシさんの手を返す返すして探すが見つからない。
「もう捨てましたーよ」
「うそだーっ」
叫んだ瞬間体を返された。上に乗っかったカカシさんに全身で押さえつけられる。
「次はオレの番。ね、どれにする?」
目の前に出された48手コンドームに目を白黒させた。
「あ・・あ・・」
「選ばないんならオレが決めちゃうよ?」
返事を待たずに、ぴっと一つ剥がすと残りを床に落とした。
「わわっ」
一体今からなにが始まるんだ!?
恐々としている間に、やたら色っぽい顔したカカシさんの顔が近づいて唇を塞いだ。
「んー、むぐーっ」
「コワクなーいよ。やさしくするから・・」
そんなこと心配してなくて、やらしいことされるのが心配なんだよ!
言ってやりたいのに、深く口吻けられて意識がぼーっと遠ざかる。
その後の事は、一夜の夢の中のこと。
翌朝、パタパタと動き回るカカシさんに目が覚めた。早起きなのを珍しく思いながら布団の中から見ていると、気付いたカカシさんがこっちに来た。
「おはよ、イルカセンセ。よく眠れた?」
やさしく髪を梳く手にうっとりする。眠気が再び襲ってきて、起きるにはまだ早いと目を閉じかけると、戸惑いがちなカカシさんの声が届いた。
「あの・・イルカ先生、眠いところゴメンね、箱の中ってコレだけしかなかった?他に頼んだのが入ってないんだけど・・」
一気に眠気が吹っ飛んだ。ばちっと瞼を開ければ目の前に箱が差し出される。中には当然俺が残したものしかない。
「さ・・さぁ?それで全部だったと・・思いますけど・・」
掠れた声で途切れ途切れに答えると、「そう」とカカシさんが答えた。
「明細書には入ってることになってるのに…」
どうやら下に落としたのはまだ見つかってないらしい。きょろきょろ辺りを見回して探しているカカシさんには申し訳ないが、これ幸いと目を閉じて眠ろうとすると、――じりじりとカカシさんの気配が変わった。
それは他人なら気付かないような僅かな変化。
だが俺には分かる。カカシさんは今、激しく怒っている。
「カ、カカシさん・・!」
「ん?イルカ先生はまだ寝てていーよ。出かけてくるけどすぐに帰ってくるから」
「どこ行くんですか?」
「ちょっとヤボ用でーす」
にっこり笑って立ち上がったカカシさんの手には箱に付いていた送り状が握られていた。瞬時に悟る。
乗り込むつもりだ。送り元の会社に。
無実の会社が潰される!滅ぼされる!!
慌てて起き上がってベッドの下を探した。服の下に隠れていた2箱を掴んで玄関に向かうカカシさんの背中に叫んだ。
「カカシさん!ありました!ごめんなさい、俺、落っことしたの忘れてました!!」
「あ、そうなの?」
戻ってきたカカシさんに箱を差し出すと、「なーんだ」と嬉しそうに受け取った。
しゃがみこんでた俺をベッドに戻すと隣に潜り込んで、箱を開けると中身を検分し始めた。
その隣で、『うすうすくん』や『つぶつぶくん』の説明を受けながら、心の中で俺が涙していたのは言うまでも無い。