ソワソワ 1
食後のお茶を啜りながらカカシさんが体を揺らす。
両手で湯飲みを掴んで右へ左へゆらゆら、ゆらゆら。
自覚があるのか無いのか。
そしてぴたっと止まると何かを言いかけるように口を開きかけては、――肩を竦めて窓の外を見る。
そんなカカシさんの前で俺は梨の皮を剥いていた。
卓袱台の上に新聞を敷いて、ごつごつした梨の表面に包丁を滑らせ白い実を露わにしていく。
ラ・フランス。
いびつな形をしたブルジョワな果物。
食後に、とカカシさんが買ってきた。
丸い梨は良く食べたけど、これは初めて。
だってこいつは普通の梨と比べてバカ高い。
こいつ一個でおなじみの梨が二個買える。
質より量が重視のうみの家の食卓。
自分ではぜったい買ってこない。
だけど食べてみたかった。
旨いとうわさに聞いていたから。
そんな訳で今、ラ・フランスを前にして俺の中でカカシさんは、カカシ様に格上げ中。
だから、言いたいことがあれば言ってくれていいんだけどな。
「はい、カカシさんの」
四分の一に切ったそれをカカシさんに手渡そうとして、じっと手元を見られて居心地悪くなる。
やっぱ、皿ぐらい用意しろってか・・・。
と思っても、もう引っ込みがつかないので、ん、と差し出す。
指の背に汁が伝って、早く受け取ってくれないと滴り落ちる。
「ん、ん」
再度差し出すと、カカシさんの手よりも頭が動いて、ぱくっと梨に齧りついた。
「あ」
声を上げると、カカシさんが神妙な顔で伺うようにコッチを見て、歯を立てて奪い取ると照れた顔してシャリシャリ口を動かした。
照れるぐらいならしなきゃいいのに。
「美味しいよ、イルカ先生も食べて」
「・・・はい」
でないと、俺も照れるじゃないか。
もう四分の一を今度こそカカシさんに手渡して、自分の分を頬張る。
照れ隠しにがぶりと齧り付いて、
・・・なんだこれ。
「すごいうまい」
ふわーっと口の中に広がった甘さに感動した。
うるうるしがならカカシさんを見ると、にこーと嬉しそうに笑う。
「気に入ったのなら、また買ってきますね」
決して催促した訳じゃなかったけど、つい、頷いてしまった。
だって、コレ、本当にうまい。
「これも食べる?」
「え、でもカカシさんの・・・」
「いーよ、はい・・」
あーんとカカシさんが持っていたのを差し出されて、つい、口を開けてしまった。
そしたらもう、甘ーい空気になってしまってイチャイチャ、イチャイチャ――。
「――・・くしっ」
気づいたら畳の上に2人して転がってて、寒さで目が覚めた。
眠るカカシさんを引きずって、ベッドに押し込みながら隣に潜り込んで目を閉じる。
そういえばカカシさん何が言いたかったんだろう・・・。
半分夢の中で、思った。