こころみる人たち
8日目
朝、目が覚めると目の前にカカシさんの顔があった。
うっすら隈があるのに、満足しきった顔で寝息を立てている。
昨日の事を思うとやはり何か言ってやりたい気もするが、腰が軽くなっているので止めておく。
カカシさんが気持ちよかったならまあいいかというのもあるし、俺も堪ってた分を搾り取られて、疲れているが爽快だ。
窓からの光を避けて布団の中に潜り込む。
今日は休みなので少々ゴロゴロしていても構わない。
だけど一人で起きてるのは退屈なので、うっすら髭の伸びたカカシさんの頬に指を滑らせた。
ざりざりしてもカカシさんは起きない。
長い睫を引っ張ってみた。
ポクっと音を立ててくっ付いていた瞼が開いて赤い瞳が見えたがその目は遠くを見て焦点が合わない。
上忍のくせに寝すぎだよ。
面白くなって布団の中へと潜り込む。
ゆっくりと上下する胸に毛が生えてないか探すが、カカシさんは無毛だった。
前に乳毛が生えていたが、面白がって引っこ抜いたらそれっきり生えてこなくなった。
あれは悪いことした。
だけど俺はつるつるの方が好きだからこれでいいことにする。
銀色の下生えに視線を向ける。
こっちはふさふさ。
薄くて透けそうな色の毛の間から力の抜けたカカシさんがくたりと横たわる。
いつもこれが俺の中に、と思うと慣れていても頬が熱くなる。
ついでに息も熱くなって布団の中に熱気が籠もると、突然寝ていたカカシさんのがむくっと頭を擡げたから驚いた。
上を向くと頬を染めたカカシさんと眼が合う。
「お、起きたんなら言ってくださいよ!」
「いや・・、どうするのかなーって・・」
「どうもしません!」
照れて噛み付いたのにカカシさんは気にした風もなく、期待に視線を滲ませた。
「ねぇ・・イルカセンセ、・・シてくれる?」
強請る声にかあっと顔が火照った。
朝っぱらからなんてこと頼んでくるんだ。
と思っても、潤んだ目で見られると弱い。
カカシさんのお腹にぐりぐり額を擦り付けると、躊躇いながらも口をあけてカカシさんを飲み込んだ。
はっと腹筋が揺れて、口の中のモノが膨らむ。
ゆっくり抽挿するとカカシさんの指が髪に絡んだ。
やさしく髪を撫ぜていた手が耳の淵に触れると、ふるふるっと首筋に震えが走って目線を上げた。
熱く潤んだ瞳に見つめられて腰が熱を持つ。
やばいな・・と思っていると、カカシさんの足が股の間に滑り込んだ。
「んうーっ」
声を上げて抗議するがカカシさんは構わず足を揺らした。
「んっ、ふぅ・・んんっ・・」
カカシさんを頬張ったまま、足でそこを刺激されて瞬く間に熱を持った。
「んぅっ、んっ、あっ・・!」
たまらずぽろっとカカシさんを口から零すと、脇の下に腕を差し込まれた。
布団から引きずり出されて、カカシさんの体を跨ぐ様に促される。
「イルカ先生、上に乗って?」
ぺたりとカカシさんのお腹の上に両手を付くと、腰だけ持ち上げられ後口に熱が宛がわれた。
「あっ、まってっ、まだ・・っ!」
駄目だと思ったのに、くぷりとそこはカカシさんを飲み込んだ。
昨日の余韻で緩んだ後口は、カカシさんが手を離すと自らの体重で深く雄を飲み込んでいく。
「あ・・、あ・・、あ・・」
仰け反って背を反らすとカカシさんの腰の上に座り込んだ。
「すご・・、まだやわらかいね。キモチいい・・」
うっとりささやかれて赤面する。
行為に慣れてもそういうことを口に出されるのは恥ずかしい。
カカシさんが大きく息を吐き出すと、痛みもなく入ってきたソレが中でくちゅりと動いた。
「動ける?」
出来ない、とカマトトぶるほど浅い付き合いじゃない。
頷くと手を付いたまま腰を浮かせた。
ゆっくり腰を前後させると中でカカシさんが育っていく。
同時にいいところにカカシさんが当たって前がゆるく勃ち上がる。
カカシさんがそこに指を絡めるとゆっくり扱いた。
はぁ、はぁ、と熱を逃しながら腰を振る。
没頭してしまえば、明るい日差しの中ですべてを曝け出すことに、以前ほどの羞恥はなくなった。
付き合い始めてそろそろ二年になる。
何度も何度もカカシさんと体を重ねるうちに、こうするのがとても当たり前のことのように思えて、いつからかカカシさんとキモチいいことをして体が反応するのはとても当たり前のことのように思えて、羞恥は薄れた。
それはご飯を食べたり、一緒に寝たり、出かけたり、そんなことと同一線上にあるように思えるようになった。
「イルカセンセ、・・すごく綺麗・・」
「うっ・・」
ただし、こういうところにはいつまで経っても慣れない。
この人絶対目が変だ。
せっかく気持ちいいのに正気に返るから止めて欲しい。
「もう・・、なに言って・・」
「ホントの事だよ?揺れる髪が光を弾いてキラキラしてるし、耐えてる顔がすごくエッチでそそる。つんと尖った乳首とかぽろぽろ汁が溢れてるココだってすっごく――」
「いーうーなーっ!」
やぶへびだった。
いちいち有様を描写されて、薄れてた羞恥が色濃く蘇った。
何回体を重ねても、何年経っても、恥ずかしいものは恥ずかしい!
おずおずと体を引いて後ろ手にシーツを探す。
それが手に届く前に、とん、と肩を押された。
「え」
ひっくり返りそうになって手を突くと、不自然な姿勢に構わずカカシさんが下から突き上げてきた。
「あっ!やっ、やめっ!こら!・・この・・っ」
「黙って、舌噛むよ」
声音はやさしいのに、することは容赦ない。
仰け反って身動き取れない体を思う存分突き上げると快楽を追う。
「すごい・・、繋がってるとことか、全部、丸見えだよ・・?」
「やっ!みるなぁ・・」
「絶対ムリ、だってすっごいコーフンするもん。はぁ・・気持ちイイ、・・ね?」
聞いてくるところが憎たらしい。
そんなもん聞かなくても、それこそ丸見えだろうに。
それでも。
やっぱりカカシさんが気持ちいいと、まあいいかと思えてしまう。
もっと気持ち良くなって欲しくて体を差し出してしまう。
これってなんなんだろう・・?
と思ったら、体を起こしたカカシさんがある言葉を口にした。
「イルカセンセ、 」
耳元でこそっと囁かれた言葉に、「ああ、そうか」と納得した。
その言葉と自分の行動が結びついて、胸の奥に転がり落ちる。
そうだ、そうだ。
この感情はきっと――。
「・・俺もですよ」
言ったらちょっと泣きそうになった。
温かな想いが溢れて目の前が揺れる。
「ちょっ・・なんで泣くの!?」
「だって、カカシさんが・・」
涙目の俺を見て、つられたカカシさんが涙ぐむ。
それを見たらおかしくなって、今度は笑いが止まらなくなった。
イルカ先生の動く気配で目が覚めた。
と言っても意識の半分だけ覚醒させて半分はまどろみの中。
昨夜あんなにしたのに朝が来ると目が覚めるイルカ先生が恨めしい。
ゆっくり朝寝してくれればいいのに。
もう一度眠ってくれるのを期待して目を閉じたままでいるが、身じろいだイルカ先生に次第に意識は張り詰めていった。
イルカ先生に無防備に寝姿を晒すのは危険。
イルカ先生は無邪気だ。
だけど無邪気ゆえ、時にとても残酷なことをする。
あれはそう、まだ付き合い始めの頃。
恥じ入るイルカ先生の体を開き、その身に快楽を教えて眠った翌朝、イルカ先生を抱えてのんびり朝寝を決め込んでいた時にそれは起こった。
腕の中で身じろいだイルカ先生に目が覚めたことを知る。
ぎくんと強張り、おずおずとした視線がこちらを向く。
腕の中から出て行こうとするのを寝ぼけたフリで阻止すると、諦めたのかその体から力が抜けた。
もうちょっと一緒に寝よーね。
再びうつらうつらしているとイルカ先生が小さく動いて意識が浮上する。
ひたっと胸に頬をくっ付けるとすりすりと頬擦りしてくる。
甘える仕草が可愛いのとくすぐったいのとで笑い出しそうになるのを堪えているとぴたっと動きを止めたイルカ先生が一言言い放った。
「邪魔」
なにが?と思う間もなくぶちっとやられた。
乳輪に生えていた毛を引っこ抜かれた。
敏感な薄い皮膚に生えた太い毛を抜かれて心臓にまで痛みが走る。
内心痛みに悶絶したが、満足したように頬を摺り寄せるイルカ先生に文句は言えなかった。
だって、イルカ先生に悪気はない。
以来、胸に生えてくる毛は気付かれる前に自分で処理するようになった。
おかげで胸はつるつるだが、何故だろう。
イルカ先生って毛に反応するよね。
今も伸びてきた髭をざりざり撫ぜている。
眉毛もざりざりされてその手が睫に掛かった時、どきどきと心臓が早鐘を打った。
するすると睫の先を撫ぜたかと思うと摘まんできた。
ぴん、ぴんと引っ張られて緊張がピークに達する。
お願いだから抜かないで。
願いは届いたが睫を深く摘まむと目ヤニでくっ付いた瞼を力任せに開いた。
ポクッと空気の塊が眼球と瞼の隙間に入り込む。
普段触れないようなところまで空気が入って涙が出そうになる。
イルカ先生に悪気がないのは分かっている。
ただ無邪気で好奇心いっぱいなだけだ。
じっと耐えていると飽きたのか手を離してくれた。
目を閉じたまま瞬きを繰り返す。
空気が残って気持ち悪い。
この小悪魔め。
どうせならもっと色っぽいことして欲しい。
キスとか、キスとか、キスとか。
やってくれないかなと期待するが、願い虚しくイルカ先生が布団の中に潜り込んだ。
激しく危険信号が鳴り響く。
ここのところ胸毛チェックを怠っていた。
万が一生えていたら引っこ抜かれる。
恐る恐る目を開けてイルカ先生を伺うと真剣な表情で胸を見ている。
こ、こわいよぉ。
胸の中で泣き言を言っていると、基準をクリアしたのか視線が胸から逸れた。
ほっと胸を撫ぜ下ろす。
だけど更に潜るとイルカ先生が股間を観察し始めた。
パンツを穿いてないからそこは丸見え。
じっと見られて緊張する。
まるで視姦されているようであまり続くといけないことになりそうだ。
反応しないように意識を逸らすが、何故かイルカ先生が頬を赤らめた。
こくりと喉を鳴らし、布団の中に熱が籠もる。
視線に撫ぜられているような感覚に血が集まりだして、むくっと勃ってしまった。
弾かれたようにイルカ先生が顔を上げる。
「お、起きたんなら言ってくださいよ!」
「いや・・、どうするのかなーって・・」
「どうもしません!」
イルカ先生の唇が動く。
その赤い色に目が釘付けになる。
足の付け根が甘く痺れた。
「ねぇ・・イルカセンセ、・・シてくれる?」
甘い声を出して強請ってみる。
熟れたトマトのようにイルカ先生が赤くなった。
何か言いたげに口をパクパク開き、怒るようにむうっと唇を尖らせた。
お腹に頭をつけいやいやをするのに、ダメかな?と思いかけると、熱い口腔に含まれた。
不意を突かれて腹筋が弾む。
どくっと脈打ち、張り詰めた先端が柔らかい舌を押した。
そのざわりとした感触にますます性器が張り詰める。
イルカ先生が頭を上下させて抽挿を始めた。
温かくて柔らかくて気持ちイイ。
愛しくて髪を撫ぜればイルカ先生が小さく震えた。
熱に溶けたような瞳がこちらを見上げる。
濡れた唇から勃起して、唾液に光る自身が滑り出た。
卑猥な光景に下腹で欲望が渦巻いた。
あ、あ、イルカせんせ、もっとシたい。
気持ちイイこと、もっとシたい。
閉じた足の間につま先を割り込ませると、脛でイルカ先生の性器を愛撫した。
そこはすでに芯を持っていて、口淫しながらイルカ先生が感じていたことを知る。
「んうーっ」と怒った声を上げるのが、性器にびりびり響いてますますいきり立った。
乾いていた足が濡れ始めて、甘い声が上がったのを合図に布団から引っ張り出すと上に導いた。
「イルカ先生、上に乗って?」
快楽に染まり、力の抜けたイルカ先生を浮かせて後口に性器を宛がう。
「あっ、まってっ、まだ・・っ!」
制止するのも聞かず、ゆっくり浮き上がらせていた体を沈めた。
ぬぅとイルカ先生の後孔が開いて性器を飲み込んでいく。
「あ・・、あ・・、あ・・」
手を離すと仰け反りながらゆっくり腹の上へと座り込んだ。
大きく開いた太股がぶるぶる震えている。
その中心で勃ち上がったモノが蜜を零していた。
中はまだ昨夜出したもので濡れていて柔らかくオレを包み込んだ。
なんてやらしくて愛しい光景。
「動ける?」
宥めるように大腿を撫ぜるとイルカ先生が頷いた。
膝をつくと腹に手を突き腰を浮かせる。
ぎこちない動きで腰を動かし、後孔でオレを扱いた。
悩ましげに眉を寄せ、動くたびに「ふぅ・・っ、くぅ・・」と小さく声を漏らす。
動きがスムーズになってくると、その声は喘ぎ声に変わった。
いいところに当たるように自ら腰を回し、先走りを滴らせる。
中心に指を絡めると泣きそうな顔になった。
だけど手を止めることはしない。
快楽を追いかけて一生懸命な様はいじましくて、たまらなく扇情的だ。
それでいて光を浴びたイルカ先生はとても清楚に見える。
つんと尖った乳首は可愛く、一定のリズムで揺れる髪はキラキラ輝く。
健康的な肌が光の中で躍動する様に目を奪われた。
「イルカセンセイってすごく綺麗・・」
「うっ・・」
うっとりと呟けば、何故かイルカ先生が動きを止めた。
さっきまであんなに気持ちよさそうな顔してたのに、まずいものでも食べたように顔を顰める。
「もう・・、なに言って・・」
「ホントの事だよ?揺れる髪が光を弾いてキラキラしてるし、耐えてる顔がすごくエッチでそそる。つんと尖った乳首とかぽろぽろ汁が溢れてるココだってすっごく――」
「いーうーなーっ!」
ぺちっとお腹を叩くとイルカ先生が腰を引いた。
ぬぬっと抜け出る感覚に慌てるが、手を後ろに伸ばしたのを見て肩を押した。
逃がす気はない。
「え」
膝立ちのまま腰を突き出すように後ろ手を着いたイルカ先生をすかさず下から突き上げた。
「あっ!やっ、やめっ!こら!・・この・・っ」
「黙って、舌噛むよ」
浮かせていた腰を下げると、イルカ先生の後口から抜け出る自身を見ることが出来た。
突き上げると、すべてが飲み込まれる。
血が沸騰した。
イルカ先生が身動きできないのをいいことに激しく抽挿を繰り返す。
あまりの快楽に声を漏らしそうになる。
「すごい・・、繋がってるとことか、全部、丸見えだよ・・?」
「やっ!みるなぁ・・」
「絶対ムリ、だってすっごいコーフンするもん。はぁ・・気持ちイイ、・・ね?」
イルカ先生が答える事を拒絶するようにぎゅっと口を閉ざし、赤く染まった目元を逸らす。
それでも体位を変えることはしなかった。
本当にイヤなら着いた手を崩せばいいだけだが、オレがしたいようにさせてくれる。
体を差し出してくれる。
イルカ先生はいつだってオレを許してくれる。
そんなイルカ先生がとても大切で、とても愛しい。
ふいに、今ならと思った。
『今』なら伝わるかもしれない。
大っきらいな言葉だけれど、他にこの気持ちに当てはまる言葉を知らない。
眠ってるイルカ先生に呟いてみて、その言葉があまりにも嘘くさく響いて自己嫌悪に陥ったことがある。
だけど、今なら正確に伝わるかもしれない。
そんな気がする。
イルカ先生の背中に手を回して引き起こした。
膝の上に座ったイルカ先生が首に手を回し、肩に頭を乗せた。
耳元に唇を寄せ、どうかこの気持ちがそのまま届いてくれることを願いながら言葉を口にする。
「イルカセンセ、あいしてる」
肩で息をしていたイルカ先生の呼吸がぴたっと止まった。
緊張のあまり指先が震える。
でもちゃんと言えたと思う。
痛いほどの沈黙の後、「・・・俺もですよ」と静かで温かな声で告げられた。
伝わった。
オレもイルカ先生に愛されている。
こんなに幸せで嬉しいことってない。
胸がいっぱいになって息をするのも苦しくなる。
ずずっと鼻を啜る音が聞こえ、慌てて顔を覗きこむとイルカ先生が泣いていた。
「ちょっ・・なんで泣くの!?」
「だって、カカシさんが・・」
ぽろぽろ涙を零しながらイルカ先生が笑う。
照れたように幸せそうにぽろぽろと涙を零す。
つられて涙を浮かべると、今度はおかしそうに笑い出す。
「なんでカカシさんまで泣くんですか」
「だって、イルカ先生が泣くから・・」
「俺・・泣いてません・・笑ってるんです。うれし・・から・・」
「うん」
イルカ先生が嬉しいとオレはもっと嬉しくなる。
額に口吻けて泣き止むのを待つが。
溢れてくる涙を必死に拭いながら肩を揺らすから、繋がってるところも揺れておかしな気分になる。
動きたくてたまらなくなって、イルカ先生を押し倒すとゆるゆる腰を動かした。
目の淵から大粒の涙を零しながらイルカ先生がオレを見上げて笑顔を浮かべた。
「ねぇ、カカシさん、俺のことすっごく気持ちよくして・・」
にっこり笑いながら強請られたことに全身の血が沸騰する。
「うん、いーよ」
唇を重ねて舌を差し出せばイルカ先生が甘く吸い上げた。
イルカ先生のいいところを擦りながらもイってしまわぬように強さを加減をする。
互いの手は背中に回してしっかり抱き合った。
昨日の続きをしよう。
どこにも触れずに、ここだけの快楽で。
イルカ先生が望むように、終わりの無い快楽を。
いつまでもいつまでも。
ずっと二人でたゆたっていよう。
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