苺ミルク 6




 その言葉通り、カカシ先生は俺の足の間を覗き込むと、一生懸命指を動かした。教えた通りにジェルを継ぎ足しながら中を濡らして窄まりを解していく。指の通りが良くなると、カカシ先生がチラチラと俺を見た。
「イルカセンセ、もう一本、指挿れていーい?まだ痛い?」
「いえ、痛く無いですよ。挿れてください」
 やりやすいように後ろに手を突いて上体を反らした。腰を突き出すようにすると、カカシ先生がフンッ!と鼻息を吐いて、後口に二本目の指を添えた。ジェルを継ぎ足しぐっと押し込むと、さっきより圧迫感はあったけど、指はすんなり這入って、カカシ先生を喜ばせた。
「這入った!イルカセンセ、這入ったよ。痛くない?」
「ええ」
 頷くとカカシ先生がゆっくり指を引いて、また差し込む。滑りが良いのを確認すると指を抽送させた。体温に溶けたジェルがくちゅくちゅと音を立てる。腸壁を擦られて、快楽の兆しに体がさざめいた。
「んっ…」
「キモチイイ?」
「ええ…」
 まあ、敏感な所に触られてるからなと思いながら返事をすると、カカシ先生は指をバラバラに動かして中を探った。
「…ちょっと待ってネ」
 滑る指先が襞を掻き分けて柔らかな腸壁を擦る。見逃さないように丹念に指が移動して、シコリを捉えた。
「ふぁっ…、あっ…、あっ!」
「あった、ここデショ?」
「あっ!あぁっ!」
 ぐぅっと腹側に指を押されて痺れが走った。ぐん!と中心が頭を擡げて、カカシ先生の目の前で揺らいだ。
(うわっ…!)
 さすがの俺でもソコが生き物みたいにブラブラするのは恥ずかしい。手で隠そうとすると、カカシ先生が先に捕らえて上下に扱きだした。
「あっ!…だめっ、あ、あぁっ…」
 燻っていた快楽がはっきりした形になる。前と後ろを同時に刺激されて、ぐんと性感が高まった。
「カ、カカシ先生!そこばっかりしないで…、俺…イっちゃいそうです」
「…イっていいよ?」
「ヤです!カカシ先生、さっき俺の中でイキたいって言ったじゃないですか。俺だってカカシ先生を中に挿れてイキたいです」
「ウン!」
 唇を尖らせた俺にカカシ先生は嬉しそうに笑って、中心から手を離した。
「あっ!…でも他の所を触るのはいいです。その方が…俺も気持ち良いし…」
「そうなの?ウン、分かった」
(う〜、ここまで言わせるなんて…っ)
 カカシ先生ってホント、最初に付き合ったのが俺で良かったなぁと思った。何にも知らなすぎる。女なら絶対嫌がられる。
(普通、男なら初体験でもアレコレ知ってるもんなんだけどなぁ…。そういや、カカシ先生イチャパラ読んでるのに…)
 あの18禁本を読んでいて、何故ここまで性に対して無知なのか不思議になった。
「イルカ先生、指をもう一本挿れていいですか?」
「あっ?はい!」
 少しばかり行為に上の空になっていた俺に、カカシ先生が口をへの字に曲げた。またオレがヘタクソだから、と言い出しそうな顔に慌てる。
「違いますよ!カカシセンセ、…あっ!」
 ワタワタしていると、ぐいっと肩を押されて後ろに転がった。すぐに覆い被さってきたカカシ先生が唇を塞ぐ。
「んっ!…んぐ…」
 何か言おうとしたら舌を差し込まれて深く絡んだ。増えた指が狭い入り口を押し広げて這い上がってくる。
「んっ!…ふぁ…っんーっ!ぅんーっ!」
 ヤバイぐらい感じて眉を寄せた。長い指で体の奥を満たされて目蓋の裏に熱が籠もる。痛みはあったが、それ以上に快楽を感じて腰が浮き上がった。
「あっ…はぁっ…!」
 唇が離れて、ぷはっと口を開いた。はぁはぁと息を吐いて熱を散らそうとしたが、すぐに唇が塞がる。貪るように口の中を掻き回されて、嵐のような口吻けに頬がぽーっと頬が火照った。力尽くの行為は嫌いなのに嫌じゃない。それどころかカカシ先生に組み敷かれて、すっぽりとその庇護に包まれた気がした。体から力が抜ける。カカシ先生がとても男らしく思えた。快楽とは別の心地良さに包まれる。
 カカシ先生が俺より年上で、大人の男だったことを思い出した。だが、うっすらと目を開けて見上げると、
「イルカ先生、よそ見しちゃイヤです…!」
 拗ねた目で睨まれて、目が覚めた。
「ご、ごめんなさい…」
(あれ…?)
 俺の勘違いだったのか、いつものカカシ先生がいた。純真で純情な可愛いカカシ先生が。俺を感じさせようと必死に指を動かしながら、構ってくれと口吻ける。
(一瞬、カカシ先生がすごく『男』に思えたんだけど…?)
 気のせいだろうか?
 そんな疑問も中を掻き回されると忘れてしまった。性感を刺激されてビクビクと体が跳ねる。込み上げる快楽に我慢が出来なくなって、カカシ先生の腕を掴んだ。
「……カカシ先生、そろそろ挿れていいですよ」
「ホント?!」
 拗ねていた目がパッと輝いた。指を引き抜くと、いそいそと体を起こして俺の膝裏を押し広げた。腰の位置を合わせて後口に先っちょを宛がう。
「じゃあ、挿れるね」
 子供そのものの顔で宣言すると腰を進めた。ぐっ、ぐっと何の技巧もなく突き進もうとする姿は拙く、やはりいつものカカシ先生だった。
「アッ、スゴイ…」
 きゅうっと眉を寄せて、感じ入った顔でカカシ先生が呟いた。
「あっ!…はぁっ…」
 スゴイと思うのは俺もで、有り得ないほど深く侵されて腰が浮いた。無意識に逃げようとする俺の腰を、カカシ先生が捕まえて熱を捩り込む。
「ひゃ…っく、あ…、だめっ…あー…」
 ただ挿れられただけでイきそうになる。背を反らして前を滾らせる俺をカカシ先生がじっと見ていた。早く解放して欲しい気持ちと、心ゆくまで掻き混ぜて貰いたいと願う淫らな気持ちが沸き上がる。
「あ…シて…、カカシ先生…動いて…」
「…ウン」
 ふわりと口許を緩めたカカシ先生が可愛く頷いて腰を引いた。ずるっと腸壁を持って行かれそうな衝撃に喘ぐ。
「あ…っ、あ…!」
 再び押し入られると、ぬぬーっと壁を擦られて快楽のさざ波が走った。気持ち良くて堪らない。次第にカカシ先生の動きは速くなり、激しく揺さぶられて、瞬く間に快楽の坩堝に突き落とされた。
「あっ、ア!…イイ…っ、アッ…!」
 ズチャ、ヌチャと卑猥な水音が繋がった所からひっきりなしに上がった。カカシ先生は加減を知らない。俺の善いとこばかり狙う動きにカーッと腰が溶けた。
「アッ、アッ、アッ!…だめぇっ…イクッ!」
 射精感が高まり、このまま――と思ったとき、ピタッとカカシ先生が動きを止めた。逆巻く快楽に体が悲鳴を上げた。
「やぁ…っ!なんでぇ…?」
「ハッ、ハッ…、オレ、まだイキたくないです…」
「……!!」
(だったら最初から加減しろよ!!)
 全速力で突っ走っといて、その言いぐさは何だと怒鳴りつけたかった。でも息が絶え絶えで、呼吸するだけで精一杯だ。
「カ、カシ、先生、あの…、それならもっと、ゆっくり…、あ!あっ!…ひっ!」
 また全力で駆けだしたカカシ先生に背中が仰け反った。感電したみたいに動けなくなる。
「あ…んっ!アッ…あひっ…アーっ」
「イルカ先生の声、ヤラしい…」
 興奮した面持ちでカカシ先生が囁いて、胸に顔を伏せた。尖りきった乳首にちゅっと吸い付いて舌で愛撫する。
「あっ…だめっ…アッ…あぁんっ…」
 胸に吸い付く頭を退けようと頭に手を掛けたら、すっとソコから離れた。ホッとしたのも束の間、カカシ先生は唾液に濡れた乳首を指で捏ねながら、反対側に吸い付いた。
「ひゃっ!ア――…!」
 声も出せないほど感じて硬直すると、カカシ先生が無邪気に聞いてきた。
「イルカ先生、気持ちイイ?ココ、スキだよネ?」
 感じすぎて、違う違うと首を横に振ると、カカシ先生の顔色が曇った。
「ウソ、前に気持ちイイって言ったもん」
 カカシ先生は証明しようと強めの刺激を与えてくる。キチと歯先で甘噛みすると、ちゅっと吸いながら引っ張り上げた。小さな突起は元に戻ろうとして、細く開いた歯の隙間から滑り落ちた。敏感で薄い皮膚を歯先で扱かれて、ビリビリッと電流が全身を走り抜けた。その間にも、火の付く勢いで後ろを穿たれる。
「アッ…アアッ…」
(ヤバイ…)
 溜まった快楽の大きさに首を振った。これ以上は嫌だ。自らのコントロールを失うことを恐れてカカシ先生の背を叩いた。
「カカシ、先生!もう、イク…!イク!」
「まだ、あとちょっと…」
 ぐわんと大きな波が押し寄せた。体の輪郭が溶けて、カカシ先生と繋がったトコしか自分が無くなっていく気がした。 
「あ、…だめぇ…!も…、さわって…、前…さわって…!」
 言いながら、自ら腰を上げてカカシ先生の腹に擦りつけようとした。だけど上手く当たらない。
「やぁっ!も…!…ねが…っ」
「…っく」
 カカシ先生の手が俺の中心を掴んで扱きだした。前と後ろの同時の刺激に、腹が水飴みたいにうねった。体が痙攣を初めて、きゅぅと中にいるカカシ先生を締め付ける。狭くなった腸壁をカカシ先生に掻き分けられて、体が焼けそうなほど痺れた。
「ハッ!…イルカセンセ…っ」
 カカシ先生が凄く甘い声で喘いだ。その声が脊椎を痺れさせて、パシッと頭の中で白い光が弾けた。カカシ先生が俺を穿つ速度をいっそう速め、射精を促すように前を強く扱いた。
「ア…!ア…ッ!」
 びゅくびゅくと前が弾けるのを感じた。でもその後に、もっと大きな快楽が押し寄せた。背中に在った布団が消えて、すっと吸い込まれる気がした。
「アッ!お、堕ちる!あ…っ!」
 縋るものを求めてカカシ先生の背中にしがみついた。それでも堕ちる感覚は止まらない。平衡感覚を失いぐるんと目が回った。
「ア…ッ、やだ…、こわい…っ、あっ!アーッ!」
 ジタバタする俺の背中にカカシ先生の腕が回った。痛いほどしっかり抱え込まれる。そうしてぐんっと中を深く抉られて、どっと押し寄せた快楽に飲み込まれた。全身を砂糖漬けにされたような甘く濃い快楽が俺を満たす。
「ふぁ…ッ、アッ…」
 カカシ先生がぐうっと腰が押しつけて、ビクビク震えるのを感じた。砂糖の波が収まらない。どうにかなってしまいそうだった。
「あ……、はぁ…はぁ…はぁ…」
 ようやく波が去ったとき、俺は脱力して呼吸をする事しかできなかった。カカシ先生もぐったりして、俺の肩口に顔を埋めていた。元の大きさに戻ったカカシ先生のが後ろからくちゅんと抜け落ちる。続けて溢れ出すものに尻が濡れても動けなかった。
(…凄かった…。これが絶頂ってやつか…?)
 今まで俺は充分イってるつもりだったが、そうではなかった。こんなに深い快楽が在るなんて。
(……初めて男に抱かれた。)
 ネコでも決して主導権を渡さなかった俺が、カカシ先生に飲み込まれてしまった。
「…参った」
 ぽつりと呟くと、顔を伏せていたカカシ先生が顔を上げた。何故か泣きそうな顔して、俺の顔を必死で撫でる。
「イルカ先生、ゴメンネ。オレ、また酷くしちゃった?体キツイ?どっか痛い?」
 体を起こして俺の上から退こうとするのを引き留めた。浮いた体を回したままの腕で引き寄せて体を密着させる。
「イルカセンセ?」
「もう少し、このままで……」
 くっついていたい。
「痛く無い?」
 心配そうに見つめる瞳にこくんと頷くと、カカシ先生がホッとした顔をした。言おうかどうしようか。カカシ先生がこつんと額を寄せて淋しそうな顔をしている。
「……カカシ先生、あの、すごく気持ち良かったですよ」
「ホント!?」
 ぱあっと顔を輝かせるカカシ先生に言って良かったと思った。頬がほわっと桃色に染まり、面映ゆそうに笑う。
「前より上手くなったかな?」
 上手くなったどころか、今までしたセックスの中で一番良かったのだが、ただ頷くだけでカカシ先生は非常に喜んだ。
「でもイルカ先生…、コワイって言ったのどうして?オレ嫌なことした?」
「してません。それに怖いなんて言ってません!」
「え…?言ってたよ…?」
「言ってません!カカシ先生の聞き間違いです!」
 かあっと頬が火照った。最中に口走ったことを言うなんて反則だ。
「でも…」
「だーまーれー!」
 まだ何か言いたげなカカシ先生の頬を摘んで、きゅーっと横に引っ張った。そして、ぎょっ!とした。カカシ先生の頬が血まみれだ。いや、血に塗れていたのは俺の指で、はっとしてカカシ先生の背中を見ると、深く爪で抉った跡が幾筋もあった。
「あ!わー!カカシ先生痛く無いですか!?」
「え?ウン、なんともなーいよ」
 焦る俺に対して、背中を見てもカカシ先生は平然としたものだ。
「消毒…!」
「それより」
 起きようとした俺をカカシ先生が引き留めた。
「イルカセンセ、もう一回シたいです…」
 上目遣いで見つめられながら、ちゅっと血に濡れた指先を口に含まれ…。
 嫌なんて訳が無く、もう一度事に挑んだ。




 後日、カカシ先生のイチャパラを開いてみた。かなり際どいことが書いてあったはずだが?と思いながら開いたら、ごそっとくっついたページがある。
「カカシ先生、このページなんですか?くっついてますよ?」
「ああ、ソレね…」
 なんでもこの本は、カカシ先生が子供の頃に『恋』について尋ねたら、上忍師の方がくださったそうだ。「この本で勉強しなさい」とのことだが、子供にはまだ早い部分があるので18禁のとこは、糊でくっつけてカカシ先生に渡したらしい。
 てっきりこの本をおかずにして、剥けたんだと思ったのに。
「カカシ先生、もう大人なんだから開いてみようと思わなかったんですか?」
「先生が、好きな人が出来たら開けて良いって」
(ははぁ、先生もまさかカカシ先生がこの年になるまで初恋が来ないと思わなかったんだな。)
「…なにが書いてあるのかな?もう見ても良いよね」
 カカシ先生が好奇心の抑えきれない顔で糊を剥がそうとするが…、
「あぁっ!」
 ビリッと本が乾いた音を立てるのに悲壮な声を上げた。
(そりゃま、そうだわな)
 どうにかして開けようとするカカシ先生に声を掛けた。
「無理じゃないですか?もう新しいの買った方がいいですよ」
 すると、カカシ先生が頬を赤らめもじもじした。
「……本屋さんで買うのは恥ずかしいです」
「…ふふっ」
 まったくカカシ先生は可愛いな!
 ネットで買えることはしばらく黙っていよう。
 

end
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