恋ごころ -後編-
「…気持ち、イイですか?」
完全に勃起したカカシ先生の性器を手で扱きながら聞けば、こくんと頷いた。開いた唇がはふはふと荒い息を吐いた。邪魔なパジャマを下着毎足から引き抜く。
「カカシ先生って童貞って聞いてたのに、ちゃんと剥けてるんですね。どうしてですか?自分でも、こうして触ったりしたんですか?」
思春期過ぎた男が自慰するのなんて当たり前だ。だけどカカシ先生は首筋まで赤くして、羞恥に顔を隠した。肌まで淡くピンク色に染まる。
「教えてくださいよ。最初っからこんな風になっていなかったでしょう?」
ココと先端に指先で円を描けば、ギクンとカカシ先生の体が強ばった。とろりと先端から先走りが溢れ、指を汚す。
(ふぅん)
カカシ先生って少々Mの気がある。そして潔癖症だ。だから誰とも体を重ねて来なかったのか。
「教えてくれないんですか?」
「………」
貝のように黙り込んでしまったカカシ先生の雄を再び咥えた。敏感な先端を舌先で何度も舐めると、後から後から先走りが零れた。管の中身をちゅっと吸い上げて喉を鳴らせば、顔を隠していたカカシ先生が恐る恐る手を除けた。
「イルカせんせい…、飲んだの…?」
「…さぁ?」
気になるなら、自分の目で確かめればいい。
カカシ先生と目を合わせたまま、先端から雄を飲み込んでいく。温かな口の中にカカシ先生を迎え入れると、見ている前で頭を上げた。ずるずると口の中から出てくる雄にカカシ先生の目が釘付けになる。ゆっくり同じ動作を繰り返すと、カカシ先生の息が切れ切れになった。太股が小刻みに震えだし、限界が近そうだった。
「イルカせんせ、イルカせんせぃ…」
甘えた声で何度も呼ばれ、腰が最後の瞬間を強請った。伸ばされた手が髪に触れる。
「イルカセンセ…、あっ」
完勃ちさせたまま唇を離すと、カカシ先生が泣きそうな声を上げた。
「…カカシ先生、狡い。俺だって気持ちヨクなりたいです」
濡れた口許を手の甲で拭って拗ねてみせた。怒った素振りでぷいっと横を向くと、荒い呼吸を繰り返していたカカシ先生が体を起こした。
「ゴメン、イルカ先生。オレ、何をしたらいい?分からないから教えて?」
震える声で乞われて、にっこり笑った。
「カカシ先生、ジェル持ってないですか?」
「ジェル…?」
「分かんないかな?…潤滑剤とか、そういうの」
「じゅんかつ…?…ゴメンなさい、無いです」
「えぇ〜」
オロオロと泣きそうな顔をするのが可笑しい。
「じゃあ、軟膏とか…」
如何にも妥協した風を装って言えば、ぱあっとカカシ先生が顔を輝かした。
「あります!それならあります」
ベッドを下りると、俺が脱がせ掛けたパジャマを肩に引っかけたまま大急ぎで部屋を出て行った。パジャマの裾から真っ白なお尻が見え隠れした。
(…あの人あれでも里の誉れなんだよなぁ)
半ケツしてる姿なんて誰も思い浮かべないだろう。隣の部屋からがしゃんと何かをひっくり返す音が聞こえてくる。
「ありました!イルカ先生、ありましたよ!」
フルチンで駆けてきたカカシ先生が、嬉しそうにチューブを差し出した。
「えらいな、カカシ。…あ」
思わず子供を誉める口調で誉めてしまったが、カカシ先生は怒るどころか、にこーっと満面の笑みを浮かべた。
「オレ、えらい」
ベッドに上がったカカシ先生がぎゅーっと俺を抱きしめた。
「…………ほら、カカシ先生。続きしますよ」
なんだろう?今、変な気持ちが沸いた。
「オレ、何をしたらいいですか?」
「カカシ先生は横になっててください」
「ハイ」
寝転がるカカシ先生を尻目に服を脱いだ。胸の中がもやもやしたが、気持ちを切り替える。チューブの蓋を開けると、軟膏を指に取った。
「イルカ先生、なにするの?」
「いいから、ちょっと向こう向いててください」
後口に指を当てると軟膏を塗り込めた。ちらちらと全身に(特に下半身に)カカシ先生の視線を感じたが、見たければ見ろだ。中に指を入れて、滑りが無くなるとまた軟膏を指に取った。
「…イルカセンセ、ソレ…、オレがしちゃあダメ?」
「駄目です」
素気なく断るとカカシ先生は口を尖らせたが、前を擦ってやるとすぐに目を蕩けさせた。
「はあ…イルカせんせ…」
カカシ先生の甘い声が俺を熱くする。そろそろいいかと指を引き抜くと腰を上げた。
「カカシ先生、このまま挿入れていいですか?」
ゴムなんて絶対持ってないだろうが一応聞く。きっと聞かれた意味も分かってないだろうが、こくこく頷いたのを見て、後口にカカシ先生の先端を宛がった。窄まりにカカシ先生が触れたのを感じて、ゆっくり腰を下ろした。
「あっ、イルカセンセ…」
カカシ先生がきゅっと眉を寄せたけど、そのまま突き進んだ。ぬぬぬと熱が壁を擦り、いつもならこれぐらい、の位置に来たが、まだ終点じゃなかった。更に腰を下ろして未知の世界へ突入する。
(深い…)
「あっ…」
ビクンと感じて声を上げれば、カカシ先生も震えた。
「イルカせんせ、気持ちいーの?」
「ええ…まあ…」
なんとか全てを埋め込んで、ぺたんと腰を付けると、はあっと息を吐き出した。凄く深いところまで挿入っていた。文字通り、串刺しにされた気分だ。体に馴染ませたくて、じっとしていると、カカシ先生がはふはふ息を吐いた。
「イルカせんせ、すごく熱い…。ジンジンする。中が動いて…飲み込まれるみたい…」
「…んなこと、言わなくていいんです…!」
かあっと顔が熱くなって、カカシ先生を黙らせようと体を前に倒した。乱れた呼吸を繰り返す唇を塞いで舌を差し込む。
「ふぁ…」
ちゅくっ、ちゅっと水音が立つと、体内のカカシ先生が震えた。動きたくて堪らないように腰をもぞもぞ揺らし、切ない声を漏らす。泣きそうな顔で快楽を耐えるのに、意地悪したくなって乳首に顔を伏せた。
薄紅色に色づいた果実を唇で摘んで吸い上げる。てっきり気持ち良さによがると思ったのに、カカシ先生は俺の頭を撫でた。
「イルカ先生可愛い。赤ちゃんみたい…」
(なんだと!)
こんなに尖らせてる癖に性感帯ではないのか、カカシ先生は全くここではカンジていなかった。
(俺を赤ちゃん呼ばわりとは…!)
不名誉極まりないので、早々に腰を揺らして泣かせる事にした。きっと、今までカカシ先生が受けたこと無いような快楽を与えられる。
体を前に倒したまま腰を前後に揺らすと、カカシ先生が息を詰めた。
「ぅわっ、なにコレ…、待って…!」
わたわたと暴れる手に指を絡めて押さえつけると、連続して腰を揺らした。
「あ…、…っ、…!」
カカシ先生が堪えるように歯を噛み締めて首を横に振った。繋がったところが擦れ合って、溶けそうなほど熱くなる。俺も気持ち良くなって、勃ち上がった性器から溢れた先走りが竿を伝った。
腰を浮かせると上下に細かく動いて自分の良いところにカカシ先生を擦りつけた。お漏らしをしてるみたいに性器の先が熱くなってトロトロになる。
「あ…!あっ…あ…っ」
「は…っ、イルカセンセ…もっと…」
挿入が浅くなった分、物足りなくなったようでカカシ先生が強請った。動きを変えて腰を大きくグラインドさせてストロークを長くする。この動きはカカシ先生のお気に入りだったようで、繋いだ手に指が食い込むほどの力が入った。カカシ先生も先走りを零しているのか、結合したところがくちゃくちゃ派手な水音を立てた。
「ぅっ…ぁっ…」
カカシ先生の背が撓り、射精へと駆け上がろうとしているのに気付いて動きを止めた。
「はぁっ…、ぁ…、どうし…て?」
「だって俺、まだイきたくないんですもん」
苦しそうに目を眇めるカカシ先生ににっこり笑う。カカシ先生がやや落ち着いたのを見計らって動き出すと、カカシ先生はすぐに上り詰めそうになった。その度に動きを止めて、寸止めを繰り返す。
「もうダメっ…!イルカせんせい、いきたい…!」
カカシ先生の全身がガタガタ震えていた。さすがにこれ以上は限界と感じて、繋いだ手を片方離すと自分の前へ持って行った。
「俺より先にイかないでくださいね」
虚ろになったカカシ先生に、俺の声が届いているのか分からないが、腰を揺らすと同時に前を扱いて快楽を追った。高みを目指して抽送を早くすると、ぎりっと歯を噛み締める音が聞こえた。下を見るとカカシ先生が歯を噛み締めて、必死に耐えていた。
(…可愛い人だなぁ…)
本気で言ったワケじゃない。それでも必死に俺の言いつけを守ろうとするのが可愛い。
ポロリとカカシ先生のこめかみを、涙とも汗ともつかぬものが流れた。体を倒してちゅっと目元を吸い上げると、カカシ先生の手が背中に回った。しっかり俺を掴んで離さない。さっきまで自分で扱いていたモノがカカシ先生との間に挟まって、腰を揺らすと自然と硬い腹筋に擦れて気持ち良くなった。
「あっ!あっ、あっ…」
カカシ先生に自身を押しつけるのが止められない。パシパシと目の裏で火花が散った。限界を目指して駆け上がる。
「アッ…イイッ…イく…っ!…あぁっ!!」
「…くっ!」
びゅるるっびゅくっと前から白濁を噴き零すとカカシ先生も硬直した。腹の中でカカシ先生の雄が全開にしたホースみたいに撓って熱を吐き出す。腸壁に叩きつけるような衝撃を感じてカカシ先生の我慢を思った。イきたくて仕方なかっただろう。俺の背中に爪を立て、何度も吐き出す。
カカシ先生が全部吐き出すのを待って顔を上げた。軽く腰を揺らして快楽の余韻を引き延ばしてやると、眉間に皺を寄せていたカカシ先生の顔が甘く蕩けた。目を開けると、照れたように笑う。
「…きもち、よかったです」
「それは良かったです」
ふふふ、と笑い合うとカカシ先生の唇を啄んだ。こんな充実したセックスは久しぶりだ。そこそこに満足して、繋がりを解こうと体を起こすと、カカシ先生も起き上がった。
「ん…?カカシセンセ?」
「おぼえました」
「へ?うわっ!」
繋がったまま押し倒されて、カカシ先生を見上げた。
「イルカ先生、オレおぼえました」
なにを?なんて聞く必要なかった。カカシ先生がいつの間にか力を取り戻した雄を抜き差しさせる。
「ちょっ…!もう終わり…」
「オレ、頑張りマス」
「頑張らんで…うあっ…アッ…」
ヌクヌクヌクと抽送されると腸壁が熱を持った。さっき俺が頑張った所を執拗に擦られる。俺の足を広げると結合を深くした。
「あ!」
「…本当に挿ってる」
カカシ先生の手が確かめるように繋がったところに触れる。
「ひゃっ…やめ…っ」
そこは敏感な所だから触れて欲しくなかった。セックスの間にコントロールを失うのは嫌だ。だけど俺が感じてるのを知るとカカシ先生は執拗にソコに触れた。
「でもイルカ先生、気持ちいーって、前、勃ってるよ?」
「ああっ!…だめっ」
大きな手が性器を包んで、軽く上下させた。
「イルカ先生の硬くなってる」
「…っ!」
カカシ先生が無邪気な顔で、いちいち俺の反応を確かめる。確信すると、動きは的確なものに変わった。力強い抽送で俺を翻弄する。
さすがと上忍と言うか、カカシ先生はもの凄く物覚えが良かった。応用力もばっりちで、
「イルカ先生はココ気持ちいーの?」
「ひぁっ…あっ!…あっ!」
コリコリと指先で乳首を弾かれて、嬌声を上げた。
カカシ先生にとって初体験は探求に尽きなかったようで、行為は深夜まで続き、――これ以上イけないとこまでイかされて、息も絶え絶えになって眠りに就いた。
目蓋の向こうに光が透けて見えた。眩しい。朝だ。全身の気怠さに、もう一度眠りに籠もろうとして気付いた。
誰かが唇に触れている。
そうっと軽く押すと離れて、ちゅっと吸い上げる。頬にも同じように触れて、目蓋に移った。前髪を梳かれ、額に唇が触れる。すーっと鼻筋を下りて、鼻先を啄むと、また唇に触れた。
「イルカ先生、スキ」
小さな小さな声が聞こえた。心臓がきゅっと痛くなって、目蓋の裏側が熱くなった。
今まで迎えたことの無い、優しい朝だった。寝返りを打って温かい方に体を向けると、カカシ先生の胸に顔を押しつけた。
「イルカ先生、起きたの?」
大きな手が頭を撫ぜる。ますますぎゅっと顔を押しつけたら、カカシ先生がくすぐったそうに笑った。
「イルカセンセ、…オレ幸せです。初めてスキになった人と恋が出来て…。夢が叶いました。初めての人と恋人になれるなんて嬉しいです」
「…え…?」
呆けて顔を上げた。目の前には、朝日より眩しいカカシ先生の笑顔がある。微塵も俺が恋人だと、疑いのない眼差しで見ている。
そんなつもりなかった。すぐに捨ててやるつもりだった。一晩寝たぐらいで恋人面するなと言えば、目的が達せられる筈だったが――。
カカシ先生の顔が近づいて来ると、顎を上げた。目を閉じると唇が重なって、ちゅっと濡れた音を立てた。
「幸せにします。一生大事にします」
一回寝ただけなのに、プロポーズみたいなことを言ってしまうカカシ先生の純情ぶりに、あーぁと思うが、
「……そうしてください」
「ウン!」
このまま、騙しておくことにした。醒めない夢があってもいいじゃないか。
朝靄の中をカカシ先生と歩いた。出勤するまでに時間があったから、家に帰って着替えようとしたら、カカシ先生がついてきたのだ。
強請られて手を繋いで歩く。誰も見てないからいいかと思った。
靄の向こうに人影が透けて見えた。それより濃い煙に気付いた時、「あ!」と声を上げた。ヒゲを蓄えた口許に、咥え煙草が現れる。
「アス兄!」
朝帰りだったのだろう。俺を見るとバツの悪そうな顔をした。だが、俺の隣にいるカカシ先生と、繋がった手を見た時眉を顰めた。
「イルカ…?お前、また!?」
「うわっ!ごめ…いや、ちが…!」
アス兄の手が振り上がって、条件反射的に手を上げて頭を庇うと、さっと体が後退した。
「カカシ!」
「止めてよね。いくらアスマでも、イルカ先生叩いたらただじゃ済まさないよ。もうオレの恋人なんだから」
カカシ先生の抑えた殺気が辺りに立ち込める。
「……本当なのか?」
疑わしげなアス兄の視線に、カカシ先生の腕の中からぶんぶん頭を振った。
「カカシ先生と、付き合うことにした」
「ネー!」
「…(いつものじゃなくて?)」
「…(うん)」
浮かれて桃色のチャクラを飛ばすカカシ先生を横目にアイコンタクトを交わすとアス兄が振り上げた手を下ろした。納得してない顔は、きっとオレがいつもみたいにカカシ先生を摘んだと思っているのだろう。
(…けど違うんだ)
そう思ったら、ぽーっと頬が熱くなった。カカシ先生を好きになってしまった。ダサくて可愛いカカシ先生が、俺の心に住み着いてしまったのだ。カカシ先生は優しい。カカシ先生となら幸せになれる。
「さ、イルカ先生。早く帰らないと遅刻しちゃーうよ?」
「はい。それじゃあアスマさん、これで」
「お、おう…」
(…さよなら、アス兄)
まだどこか疑わしげな顔をしているアス兄に、バイバイと心の中で手を振った。
これまでの恋心に別れを告げても、もう胸の中に痛い所はどこにもなかった。
← end