特権





 パジャマの下だけ穿いてガシガシ髪を拭きながら居間に行くと先に上がったイルカ先生が卓袱台を叩いた。どうやら座れと言う事らしい。いたずらっ子みたいな顔して何企んでんだか。
 イルカ先生の前に座り、ちょっと拝借と飲みかけのビールに手を伸ばすと、がしっとその手を握られた。両手でオレの手を包み込んで持ち上げると肘を突く。そして放り出していた足を正すとオレの目を見てきた。何時にない神妙な様子にこれから何が起きるのかと淡い期待が込み上げてきてオレも正座した。
「カカシさん」
「はい」
 イルカ先生の真剣な表情に心臓が跳ねる 。
「チャクラなしでお願いします」
「はい?」
 何を?
「go!」
 ふぇ?っと思うと同時に腕に力が加わった。
  腕相撲!
 咄嗟に腕に力を入れて堪えた。あと2cmの隙間を残して留まる。
  いきなり何を挑んでくるんだよ、このヒトは。
 グイグイ押してくるのを中央まで巻き返して押しまくった。が、イルカ先生もなかなかやるもので、ここから先がなかなか進まない。握り締めた互いの手と手の間でじっとりと汗が滲んだ。
 ちらっとイルカ先生を見てみると赤い顔をして歯を食いしばっている。その表情が男前でちょっと見惚れた。腕の筋肉が力を入れるたび形良く盛り上がって俺のとは違うなと思った。 時折ふっ、くっと止めている息を漏らすのにドキドキしてしまった。オレはどんな時でもイルカ先生に欲情するように出来ているらしい。
 それから暫くの間、膠着状態が続きお互いの腕が震えだした。さすがにこの状態は辛い。でも。ココは負けれない。絶対に。男のコケンに係わる・・・いやイルカ先生も男なんだが・・・何が何でも負けられない。
 更に力を入れて押すとちょっとだけ腕がオレの方に傾いた。イルカ先生が辛そうに眉を寄せる。その表情に小狡い作戦がいろいろ浮かんだがここは真剣勝負で勝利せねばと思い直す。
  そして、
 グッ
  権利を、
 ググッ
  モノにせねばっ!
 グググー!
 一気に押すとイルカ先生は力尽きたのか手の甲をつけた。イルカ先生の指から力が抜けて離れると指の後がくっきりとついていた。
  やった、勝った。
 手を離して汗ばんだ己の手のひらを見た。ぐっと痺れた手を握り勝利を噛み締める。
  良くやった、オレ!
 あぁーっと溜め息を吐くとイルカ先生がごろんと転がった。全力疾走した後の様にはぁはぁと荒い息を吐いている。
「カ・・カシさん・・・強い・・です・・ね。」
 途切れ途切れに言うのに腰がじんと痺れた。
 限界だった。
 卓袱台を横にずらすとイルカ先生の上に圧し掛かり、
「じゃぁ、オレ勝者なんでイルカ先生に何でも出来ると言う事で」
それだけ言うとちぅっとイルカ先生にキスをした。
「んんーーーっ!な・・・で・・そ・・・なるんですかっ」
 慌てたイルカ先生がオレの下でもがいたが構わずキスした。オレを押し退けようと腕を突っ張ったが、痺れているのかあまり力が入ってなかった。
 
 その日のエッチはやたら燃えた。


→この手の中に