いつかあなたに 16





むくうと体を起こして、すぐに異変に気付いた。
たらりと腹の上を流れる、何か。
それが何かなんてことは考えなくても分かった。
慌てて着ていた服で腹を拭うが、下も。
履いてるつもりだったズボンは膝まで下ろされ下肢が剥き出しになっていた。
「わ、わあ、わあっ」
更に慌ててズボンを引き上げようとするとカカシさんの手が止めた。
「どうせだから脱いじゃお?」
「ぇ・・・?」
どうして?という疑問は、勢い良く上着を脱いだカカシさんを前に飲み込んだ。
服を脱ぎ去る際、顎を上げたカカシさんの白い喉に目を奪われて言えなかったというのもある。
上半身裸になったカカシさんを見たらもっと何も言えなくなった。
途端に緊張して心臓がばくばくする。
固まっている間にカカシさんの手が俺の服の裾を持って持ち上げた。
「ホラ、手を上げて」
「は、はい・・っ」
なんとなく男同士だし下だけ脱いだらいいんじゃないかと思わないでもなかったが、そんなのはあまりにも即物的かと思い直して両手を上げた。
中途半端に脱げ掛かっていたズボンも引き抜かれる。
素っ裸になって所持を無くしていると、目の前でカカシさんがズボンを脱いだ。
銀色の茂みとその下にあるものに視線を向けそうになって慌てて逸らす。
おろおろとしていたらカカシさんが肩を押した。
布団に逆戻りして、裸の肌が重なる。
「え・・カカシさん、俺が・・」
「うん、触ってくれるんデショ?」
うんうん頷きながらカカシさんを見た。
とろりと甘い笑顔を浮かべたカカシさんが顔中に口吻けてくる。
「・・・触って」
唇を触れ合わせながら強請られて、かあっと体が熱くなった。
イったばかりだというのに下肢が反応しそうになる。
俺はもういいんだよ、と自分のに言い聞かせながらカカシさんの体に手を伸ばした。
最初に触れたのは腰。
硬い脇腹に手を這わしてカカシさんの体を探った。
それから背中。
すべすべした背中は傷一つ無くてカカシさんの強さを思わせた。
前に回って胸に触れる。
手の平に小さなカカシさんの突起を感じて、そこにカカシさんがしてくれたみたいに触れた方がいいのか悩んだ。
そうするにはものすごい照れがある。
まごついていたらカカシさんの舌が口の中にぬるっと入ってきた。
つるつる滑る舌先で口の中を擽られる。
「ふぁっ・・あ・・っ」
くすぐったい様なそれでいて気持ちいいような感覚に声を上げると軽く舌先を噛まれた。
「イルカセンセ、早く・・」
早く、だなんて言われたことない俺だ。
かあっと頭に血が上って、迷っていたこともそっち除けでカカシさんの下肢を目指した。
隆起した腹筋を下って茂みに指先が触れる。
さわっとそこに指を潜らせてカカシさんの熱に触れた。
ふぅと揺れる息がカカシさんの唇から零れる。
恐る恐る指を這わして、握りこんだ。
そこはすでに息づいて芯を持っている。
「はっ・・、イルカセンセ・・」
甘える猫みたいな仕草でカカシさんが擦り寄ってくる。
それに勇気を得て、握り締めた手を上下させた。
ぎゅッぎゅっと扱いてカカシさんの快楽を煽る。
ぐんと手の中のものが張り詰め、カカシさんが感じているのを知った。
「うっ、・・気持ち・・イ・・」
眉を顰めたカカシさんが熱っぽい息を吐いた。
ぐっと頭を引き寄せられて強く唇が重なった。
息も吐けない位激しく舌を絡められる。
そうしながら首の辺りを押さえていたカカシさんの手が体の上を滑った。
辿り着いたのは俺の下肢で中心に手が触れる。
「あっ、俺は・・」
いいと言おうとしたのに、カカシさんの手は俺を包んで動き始めた。
「アッ・・、は・・っ」
強く扱かれて瞬く間に腰に熱が溜まる。
互いの熱い息が唇でぶつかって、そのまま駆け上がるものと思っていたらカカシさんの手が離れて睾丸を柔らかく揉んだ。
こりこりと弄ばれて射精感が募る。
刺激が足りなくて腰が揺れるとカカシさんの指があらぬ所に当たった。
(わっ!)
羞恥を感じて腰をずらす。
だけどカカシさんの指はそこにひたりとくっついたまま俺の動きに付いて来た。
「カ、カカシさん・・?」
動揺して呼びかけると、閉じていたカカシさんの瞼が開いた。
その瞳の奥を見て確信する。
ワザと!?
その瞬間、頭の中に大きく浮かんだ漢字二文字を慌てて消した。
いや、まさか、そんな。
ちがう、ちがうと大きく腰を引こうとしたらカカシさんが足を絡めた。
あらぬ所に触れていた指がそこの表面を撫でる。
「ひ、ぁっ」
確信的な指の動きに確信した。

変態だ!この人!

今になって気付くなんて。
遠くから見てるだけじゃあわからなかった。
(ど、ど、ど、どうしよう・・!?)
動揺しながらもぎゅうと尻を窄めて抵抗するが、
「緊張しないで・・」
見当違いなことを言われて泣きそうになった。
「怖くないから、力抜いて・・?」
出来るか、そんなこと!と踏ん張るが、前を弄られると体の力が抜けて緩めてしまった。
その瞬間、体の中にカカシさんの指が入ってくる。
「!!」
驚きのあまり声も出なかった。
何で!?何でそんなところに!?
吃驚している間もカカシさんの指は奥へと進む。
大した痛みがないことも俺を驚かせた。
行き着くところまで進むとカカシさんの指は引き抜かれた・・かと思えば抜け出る前にまた奥へと戻ってきた。
それを繰り返されて、その動きに嫌でも俺はカカシさんが何をしようとしているのかに気付いた。
(いやいやいや、無理だから!そんなこと!!)
こういうときはどっちかが女体化とかするもんじゃないのか??
男同士というのはてっきりそういうもんだと思っていた。
「ま、待って、カカシさんっ、俺がおん・・・ああっ!」
いきなり目から火花が飛び散った。
それぐらいの快楽がカカシさんが指を動かしたところから生まれた。
「・・これか」
なにが!?と聞く間もなくカカシさんがソコを連続して擦り上げる。
「あっ!やっ、ひゃめっ、ひっ・・ああっ・・、ああっ・・っ」
じゅくっと性器の先端が潤んで先走りが溢れた。
溶かした水飴のような重い快楽が下肢に纏わりつく。
口から漏れる言葉は意味を成さず、甘ったるい喘ぎだけを零した。
ぐっと突かれると今にも性器が弾けそうになる。
つま先まで足をぶるぶる震わせてその瞬間を待った。
だけど一向に訪れない。
何かが足りなくて射精出来ずにいた。
それでもカカシさんの指は中を突き上げてくる。
出口のない快楽が体の中で渦を巻く。
あともう少し、もう少し強く突いてくれたらイけるかもしれない。
そんなもどかしさから勝手に腰が揺らいだ。
足りない、足りない・・。
もっと、もっと・・。
「もっと、シてほしい?」
俺の心を読んだようにカカシさんが言う。
ただイきたくて、がくがく頷けばカカシさんの指が抜けた。
「やっ、なんでぇ・・っ」
失った快楽に泣き声を上げれば、両足が胸に付くほど持ち上げられ大きく広げられた。
体を折りたたまれる苦しさにぐぅっと喉が鳴る。
さっきまで指で嬲られていたところに熱いものが押し付けられた。
それが何か理解する前に、ぐぐっと強い力でもって灼熱の棒が体の中に押し込まれた。
狭いところをめいっぱい広げられて苦しくなる。
「ぁっ!・・やぁっ・・たすけ・・・」
恐怖で喉を引き攣られると中を進んでいたものが動きを止める。
「イルカセンセ、イルカセンセ、だいじょーぶだよ、ちゃんと息して」
優しい手が頬を撫ぜて、ぷうっと口に息を吹き込む。
手を伸ばして必死にカカシさんにしがみ付きながら助けを求めた。
「ひっ、ひっく・・、助けて・・、カカシさん助けて・・っ」
「泣かないで、大丈夫だよ。男同士はココで繋がるんです。ちゃんと出来るようになってるから。気持ちイイところ、あったデショ?」
カカシさんが何度もオレの頬を撫ぜて言い聞かす。
「怖いことしないから。オレに任せて。ね?」
愛しい、愛しいと顔に口吻けられてカカシさんを見上げた。
柔らかく撓んだ瞳が俺を見つめる。
「・・カカシさぁん」
顎を上げればすぐに唇が重なって、俺はカカシさんを信じた。
カカシさんが望むなら、もうどうなってもいい。
それを伝えるために、カカシさんの目を見て瞬きすると、ふわっと笑ったカカシさんが真剣な顔をした。
止まってた動きが再開して、俺の中に入ってくる。
少しづつ中のものが進むたびにカカシさんの眉がきゅっと寄った。
カカシさんがカンジている。
その事実が感動を呼んで目の前を滲ませた。
ぬぬっと体の深いところまでカカシさんが入り込んで来る。
「・・全部、入ったよ。わかる?」
やがて尻の肉にひたりとくっ付いたカカシさんの肌を感じた。
(・・すごい、全部入ってる。)
俺の中に。
カカシさんのが。
カカシさんの大事なところが。
ひっくとしゃくり上げると体が引き攣って中にいるカカシさんを強く感じた。
中のものがひくりと息づいて震える。
「あ・・」
うんと頷くと目に溜まった涙が零れて、カカシさんの指が拭った。
「動いてい?」
頷くと、中のカカシさんがずるっと抜け出た。
すごい違和感に顔が歪みそうになる。
だけどぐっと突き上げられると不思議な安心感に満たされた。
ゆるゆると抽挿を繰り返していたカカシさんの動きが次第にリズムを刻み始める。
腸壁を擦る動きにお腹の中が熱くなっていった。
「はっ・・、あ・・、はぁ・・っ」
カカシさんの動きに合わせて呼吸する。
慣れ始めるとカカシさんが体を起こして、強くお腹の中を突き上げた。
「あっ!」
挿入で萎えていた前がびんと勃ち上がる。
足を掴んでいたカカシさんの手が離れて前に絡んだ。
「硬くなってきてる・・」
「ひゃあ・・っ、あっ、あっ・・」
確かめるように擦り上げられて仰け反った。
下肢がどろりと重い快楽に包まれる。
俺が感じているとわかるとカカシさんが激しく動き出した。
前を後ろを同時に擦られて快楽のうねりに流されそうになる。
「ああ・・っ、カカシさん・・、かかしさぁん・・っ」
「イルカ、センセッ」
ぐっぐっと腰を突き上げられる度に前から先走りが零れた。
腰から下の感覚が失せて、ただ快楽を受け止める器になる。
くちゃくちゃと繋がったところが立てる水音と互いの荒い息遣いが部屋を満たす。
「ア!イク・・っ、あっ!ああぁっっ!!」
何度も最奥を穿たれて前から精液を噴き零した。
射精している間もカカシさんの動きは止まらない。
過ぎるの快楽に意識を飛ばしそうになったとき、体の奥に熱い液体がビュクビュクとかけられるのを感じた。
カカシさんの動きが止まって、持ち上げられていた足が下ろされる。
ずるっと抜け出るカカシさんに体を震わせながら喘いだ。
激しい呼吸に喉と肺に痛みが走る。
体を横に丸めて息を整えているとカカシさんが背中に覆いかぶさった。
顔に張り付いた髪を剥がして濡れた髪を後ろへと梳いてくれる。
肩やこめかみにカカシさんの唇を感じて心地よさに目を閉じた。
疲れきった体が意識を手放そうとしている。
そのまま眠ろうとして、尻の狭間に触れるカカシさんの手にびくりと震えた。
「・・なに・・?」
戸惑っている間にカカシさんの指が中に潜り込んでくる。
ぐっと入り口を広げて宛がわれた熱に戦いた。
「やっ!むりっ・・!もう、むりぃ・・、っ!やぁ・・っ」
カカシさんの熱がぬぬぬと滑らかに滑り込んでくる。
はっと息を零すとカカシさんがゆっくり動き出した。
「ゴメン、あと一回だけさせて・・」
ひーっと泣き出すとカカシさんの手が俺のを扱き出した。
宥めるつもりだったのかもしれないが、射精しすぎてその刺激が辛い。
いやいやと首を振ってもカカシさんの動きは止まらなくて、あと一回のみならずその行為は明け方まで繰り返された。

翌朝、屍と化した俺の体を朝日が照らした。




* *




以来、時折上忍の底なしの体力に戦きながらもずっとカカシさんと一緒にいる。
時に優しく、時に喧嘩したりして。
あの日、――カカシ先生とカカシさんが一つになった日がカカシさんの誕生日だったと知ったのは、随分あとになってからだった。
意外とロマンチストなカカシさんはあの日を運命の日だねと言った。
俺とカカシさんの気持ちが重なった奇跡の日だと。

そして今日、もう何回目になるのかカカシさんのバースデーケーキを手に家へと帰る。
また俺たちはご馳走を食べながら、あの時の事を懐かしく思い出すだろう。

あの時俺はカカシさんを失いたくなくて影を実体にと望んだ。
禁術まで望んだがそんなもの必要なかった。
ただ相手を想い、まっすぐに自分の気持ちを伝えればいいだけだった。
それを教えてくれたカカシさんに俺はずっと感謝している。
未だ変わることのない愛しさとともに。


end
text top
top