○月×日 イルカの顔がまともに見られない。

 夢を見ていた。いや、こんなこと夢でしか有り得ない。
 火照る体に異変を覚え、眠りから覚めて頭を上げると思わぬ光景が目に飛び込んで来た。イルカが猫の姿でオレの足の間に蹲る。
「…な、なにやってるの…?」
 質問としてはかなり間抜けだ。聞くまでもなく何をやっているかは一目瞭然だ。
 イルカが、オレの股間を舐めていた。
 足の付け根でそそり立った中心を、赤く小さな舌でてちてち舐める。ざらざらの舌に敏感な皮膚を擦られて息を詰めた。
 グロテスクな肉塊の向こうにイルカの愛くるしい顔があって、その対比に目眩がする。猫に性器を舐めさせるなんて変態行為は止めさせなければと思うのに、オレの体は非現実的な光景に興奮して快楽に飲まれた。
 ずっと抜いてなかったせいもあるだろう。久しぶりに感じる舌の感触にイルカを止めることが出来ない。
「…っ、……っく…イルカ…」
 思わず名前を呼ぶと、オレの声を聞いたイルカがグンと伸び上がった。背を高くすると、張り出た先端や窪みをちろちろ舐める。  イルカの前足が玉を踏んで呻いた。柔らかな肉球に堪っていた快楽が押し出され、先端に向かって甘い痺れが走った。押し寄せる快感に先走りを滲ませると、イルカの舌が掬い取った。
 おいしいと言わんばかりに、てちてち、てちてち舐める。敏感な鈴口ばかりを舐められて射精感が込み上げるが、
――物足りない。
 イルカの小さな舌では射精するには至らず、目を閉じて快絶を堪えた。
(…もっと、強い刺激が欲しい。)
 そう思った途端、熱い舌が先端を舐めた。
「え…?」
 今までと違う感覚に閉じていた目を開けると、人間のイルカがいた。大きくなった姿でオレの足の間に蹲っていた。裸の腰を高く上げて、何故か、何故か、そのお尻から黒い尻尾が生えている。
「イ、イルカ!?」
「にゃぁーん」
 オレをからかっているのかイルカは猫の声で鳴いた。ご丁寧に黒髪の間からは耳まで生えている。ゆらんと一降り黒い尻尾を揺らすと、イルカは「にあーん」と口を開けて、オレの屹立を飲み込んだ。
 滾った性器を熱い口に覆われて息が跳ねる。
「ぅはっ…、イ…、イルカ…っ」
 口いっぱいにオレを含んだイルカが頭を上下させてオレを煽る。視覚的に非常に興奮する光景だった。
 でも何故か射精が訪れない。それどころか快楽まで遠退いてもどかしくなった。
「イルカ、もっとして…」
 イきたくてイきたくて仕方ない。あまりのもどかしさに目を開けると――…。
 白い天井が見えた。清々しい、朝の光が満ちている。
「…………………」
 あまりの変化に頭がついていかない。
(ゆ、夢…!?)
 だけど、体を覆う熱はあった。股間からも快楽が込み上げる。
「…っ?!」
 ばっと布団を捲ると、寝ぼけたイルカ(猫)が朝勃ちしたオレの性器を邪魔そうに前足で避けていた。


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