結局オレがイルカ先生の手放せたのは夜明けになってからで、朝まで付き合わされたイルカ先生はぐったりベッドに沈んだ。終わりがけ、半分キレぎみだったのが気になるが、イルカ先生が眠ってしまったので真相は確かめられなかった。
 早く起きないかと頬を突く。すると「ふにゃん!」と怒って猫パンチみたいな拳骨を飛ばした。軽く避けて伸びた腕をたたむと腕の中に囲う。
 オレは一生モノの大事を手に入れた。












○月×日 前から気になっていたが、時々イルカ先生がオレを『ご主人さま』と呼ぶ。
       猫だった時の名残か最近の流行かと気にしなかったが、どうも違うらしい。
       イルカ先生はどうにもオレに甘えたくて堪らなくなった時、『ご主人さま』と呼ぶ。
       オレの愛情を深く乞う時、オレをそう呼んだ。
       恥ずかしい。
       だけど、そうやって無心に甘えられると、愛しくて堪らなくなる。

       …でも、外で呼ばれると回りに変な顔で見られるから止めさせよう。
       ご主人さまは家の中限定だ。


text top
top