「……ったく、散々だよ」
 真っ暗な夜道、ぶつくさ言いながら家に戻った。もう二度とあの銭湯には行けない。
「……ったく!」
 腕の中の小さな塊がびくっと震えた。イルカ先生は申し訳ないと思っているのか、耳をぺたりと伏せて腕の中に顔を隠していた。小さな体が震えている。思わず憐憫の情が湧くが、――ここは厳しくしなければならない。
 家に帰り着くとクロをソファに置いた。
「元に戻ってください」
 見下ろしてビシッと言うと、クロは首をヨコに振った。考えてみれば、このまま変化を解けば、イルカ先生はまっぱだ。タオルを掛けるともう一度同じことを言った。それでもクロは首を横に振る。かあっとなりながらも寝室に向かって毛布を取ってくるとクロに被せた。
「いいかげんにしなさいよ!さっさと戻りなさい!」
 怒鳴りつけると、チャクラが乱れてたのか変化が解けた。ぼふんと音がして毛布が盛り上がり、中から素足が2本伸びて床に着いた。
「……ごめんなさい」
 毛布を剥くと項垂れた頭が出て来た。
「ごめんなさい、カカシさん………」
 水っぽい声で謝られて、怒りが削げた。なんとか奮い起こそうとしたけど、駄目だった。
「……もういいですよ」
「でも…っ!」
 うるっと潤んだ目で見上げられて動揺した。まだ濡れた髪を下ろした顔はいつもより幼く、罪悪感で苦渋に満ちている。それでなくても全裸の体を毛布で隠して、扇情的な格好をしていると言うのに。
「ああ、もう!」
 オレだって今日一日、イルカ先生に煽られっぱなしなんだよ!
 風呂場で興奮していたのは、何もイルカ先生だけじゃない。
 がばっと毛布を捲ってやると、「あっ!」と叫んだイルカ先生が顔を真っ赤にして体を隠そうとした。
「ダメ、見せて。オレに悪いと思うんだったら、言うとおりにして」
 厳しく言いつけると毛布を掴んだイルカ先生の手が緩んだ。
「……ごめんなさい」
 潤んだ瞳から涙が零れ落ちた。それをぺろりと舌を伸ばして舐め上げると頬に口吻けた。唇にはキスしてやらない。怒ってる訳じゃないのに、何故かイライラしてイルカ先生を虐めたくなった。
 足下に跪くと毛布を開いた。目の前に晒される中心に羞恥してイルカ先生の膝が震えた。その膝に手を当てるとソファの上へと押し上げた。
「あ…」
 下ろそうとするのを目で戒めると、イルカ先生が動きを止めた。目が熱に潤むのを見て、もう片方の足も上げた。
「…カカシさぁん」
 羞恥心に震えながらも、イルカ先生は大きく開かれた膝を閉じようとはしなかった。足の付け根で息づくそこは、緩く勃ち上がっている。
「またココをこんなにして。恥ずかしくなーいの?」
 言葉でいたぶると、イルカ先生はぎゅっと目を閉じた。無関心で居られぬよう、つーっと指先でそそり立つ中心に触れてやる。
「あ…っ、…んっ!……やだ……っ」
「ふぅん、嫌なんだ」
「あっ、ちがう…っ」
 縋り付く視線に満足して、中心から手を離すとその下の袋を揉み込むように合わせた。
「ひゃっ……あぅっ…うぅんっ…」
 半勃ちだった中心がぴんと天を向いた。とろりと先端から溢れた汁が竿を伝って流れ落ち、指先を濡らした。切なげな息がイルカ先生の唇から漏れて、オレの鼓膜を焼いた。
「はぁっ…アッ…くぅぅっ、んぁっ…あ…、…カカシ、さん…っ」
「なぁに?」
 イルカ先生が望むことに気付いていながら知らん顔した。直接的な刺激を与えず、際どい所ばかりを撫で擦る。オレが無関心を装うと、一旦は口を閉じたもののすぐに目を潤ませてオレを見た。
「あっ…はあっ、…っん、あんっ……、あ、……っ、お、ねが……っ」
「だから何?」
「ひっんっ、おねが…、……って、…さわって…ほしっ…、あっ、ひ…っ、ひぃっく、カカシさん……、あ…、…ご主人さまぁ…」
 その瞬間、堰き止められていた川が流れ出すように、すっとイライラが消えた。ぽろぽろ涙を零すイルカ先生が可愛く見えて、濡れた頬に手を伸ばすと涙を拭う。
「…バカ、何泣いてるの」
「だって…、ぅうっ…」
 泣きながら握った拳で頬を拭おうとするのに、手首を掴んで退けると唇を寄せた。涙を吸い上げるように頬を啄めば、濡れた瞳がオレを見上げる。
「ひっく…、ご主人さま、もう怒ってないですか?」
「最初から怒ってないって言ってるデショ?」
 イライラしてたのはイルカ先生に対してじゃない。イルカ先生がオレを想うより、オレの方がイルカ先生を想ってる気がして苛立っていた。オレばかりがイルカ先生をスキみたいでイヤだ。 だけど、テカテカした上にしょっぱい唇に口吻けると、泣いていたイルカ先生の頬がほにゃっと蕩けた。両腕が首の後ろに回ってしがみつく。
「ご主人さまがスキです!スキ…!」
 必死に訴えられて、イルカ先生の見えない所で苦笑を漏らした。今なら分かる。オレはただ、イルカ先生がオレを必要とするところを見たかっただけだ。
 後ろ髪を掴んで顔を上げさせると唇を合わせた。鼻が詰まってふがふがするイルカ先生の唇を塞ぐと苦しそうにしながら、必死にオレについてこようとする。舌を求めて口の中を掻き回せば、おずおずと差し出す。こんな可愛い人が他にいるだろうか。
 イルカ先生の上に乗り上げ、ソファの背に押しつけると腹の間に手を差し込んだ。さっきまで中途半端な刺激しか与えなかったイルカ先生の雄に手を絡めると上下に扱いた。


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