境界線
「うぅ、さむい。イルカセンセ、なんか 服貸して」
「いいですよ。その辺の、てきとーに着て頂いて・・・」
「うん」
ごそごそと箪笥を漁っていたカカシ先生が、「これにしよう」と取り出したのは俺が家着にしていたトレーナーだった。色落ちして、首周りどころか袖までよれよれ。その上、所々解れてて、もういい加減捨てようと思いつつも着慣れてるのが楽で家に一人でいる時に着ているやつだった。
「なにもそんなボロボロの着なくても。もっとマシなのありますよ」
「ううん。コレ。コレがいい。ダメ?」
「駄目じゃないですけど・・・―――」
(―――って、もう着てるし。)
いつものパジャマの上からトレーナーを着込んだカカシ先生は、寒さがましになったのか一人ホクホクしている。
「そろそろ、暖房器具出したほうがいいかもしれませんね。朝、寒いですし」
「うん。オレも家に行って冬の服取ってこよ」
そう言って枕代わりの腕に顔を押し付けるようにして転がった。それを珍しい事もあるもんだと見下ろす。
(いつもは膝枕と煩いくせに。)
「なんか、こういうのってイイね」
「はい?」
「イルカ先生も・・・オレが服持ってきたら着ていいからネ」
「はあ・・・」
うつらうつらしながらカカシ先生が言った。
「そういうのって・・・境界線がなくなったみたいで・・・」
最後まで言わず眠りにおちた。
(またそんなこと言ってる。)
思ったけど、想像してみて。
(ほんとだ。)
カカシ先生への愛しさが積もった。