大人向きです









甘い夜 前編









きしりとベッドの軋む気配で目が覚めた。
薄く瞼を開けば、月明かりを背に銀色の影が透けて見える。

――おかえりなさい。

条件反射のように言葉にしようとすれば、開きかけた唇にぴとっと冷たいものが触れた。
小さな球に押されて唇が形を変える。

「?」
「口、開けて」

音の無い声で促される。

唇でじわりと溶け始めたそれの香りが鼻先を擽る。
理解して唇を開けば、押し込むようにカカシさんの指も入ってきた。

「噛まないで、ゆっくり溶かして」

指を含んだまま見上げるとカカシさんが楽しげに笑う。
舌と口腔で温めるように包み込めば、カカシさんの指はするりと抜け出た。

口の中で溶けるのは甘いチョコレート。
きっとバレンタインだから用意してくれたのだろう。
自分は甘いものは苦手だから要らないって言ったくせに。

「ただーいま」

塞がっている口の変わりにカカシさんへと手を伸ばす。
額をつき合わせるように覆いかぶさるカカシさんの頬や肩に触れ、無事を確かめるとちゃんと視線を合わせてくれる。

(よかった。ケガしてない)

安心して口の中に意識を集中させると、カカシさんの視線が唇と目を行ったり来たりしてにんまり笑う。

何を企んでいるのか。

一週間ぶりに会うというのにキスも抱きしめることもせず、ただ上からのぞきこむだけ。

あやしい。

口の中のチョコに混ぜ物を危惧してしまうのは忍の性。

(媚薬系だったらどうしよう…)

体の変化を注意しながらチョコを舐めていると、中からつるっとしたものが現れた。
舌先で探れば、それはシャクリと形を崩して液体が溢れる。

「!」

思わず飲み込めば喉をするりと滑って胃へと届く。
炎を灯したように熱くなる胸に、はっと息を吐き出せば喉の奥から芳しい香りが溢れた。

「あ…」

中から溢れたのはお酒。
それもとてもいい酒だ。

「おいしい?」
「はい、とっても…!」

酒気に頬を熱くしながら答えるとカカシさんが嬉しそうに笑う。
その子供のような笑顔に胸を擽られながらお礼を言おうとして、――カカシさんの次の言葉に固まった。

「よかった。じゃあ、オレにもちょーだい?」
「え・・?」

(要らないって…)

でもそれはチョコが、ってことだったのか?
本当なら三日後に帰ってくるはずだったカカシさんを想うと、「ごめんなさい」は言いたくない。

(どうしよう…)

焦りで体を熱くしていると、両手で頬を挟まれ唇が重なった。
いきなり深いところまで舌を差し込まれ、驚いてる隙に口の中のいたる所を舐められる。

「あ・・ふっ・・」
「あま・・」

僅かに唇が離れてカカシさんはそう言ったけど、止める気配は無くて、舌の上に残っていたチョコの甘みをすべて奪い尽くすまでそれは続いた。

満足したカカシさんが舌を吸い上げながら離れたときには、あまりにも長く口吻けられていたため唇はじんじんして熱を放ち、体も火照って熱くなっていた。
尾てい骨のあたりから背骨がおかしくなって、磁石のプラス同士が反発するように一つ一つの骨が浮き上がってぞわぞわする。
もぞもぞ体を動かすと布団の中にカカシさんの腕が潜り込んで腰を抱いた。
甘えるような息が鼻から漏れる。
カカシさんの背中に腕を回して体を寄せるが、――だけど、それだけ。

カカシさんはニコニコするばかりで何もして来ない。

どうして?と言いそうになる口をぐっと閉じる。
そんなはしたない事言い出せない。
だけど体も心もとっくにカカシさんに欲情していて焦れて仕方ない。

だって仕方ないだろう。一週間ぶりだったんだから!

「カカシさん…」

名前を呼んで背中に回した手でぎゅっと服を掴む。
するとカカシさんが圧し掛かってきて、安心して広い胸に顔をうずめようとしたらカカシさんの体はすぐに浮いて、窓辺に手を伸ばすと置いてあった小箱からチョコを摘んだ。
戻ってきた手が口元に来るのに唇を開きかけるとチョコが唇から数センチのところで止まる。

「食べたい?」

頷きかけて、伺うように覗き込むカカシさんの視線にふわーっと頬が熱くなった。

食べる?でもなく、食べたい?と聞かれたことに。

食べたらその先にあるさっきのキスのことを当然のように想像していた。
ここで「うん」と頷くのは、まるでそれを強請っているようですごく恥ずかしい。

だけど本音のところではさっきみたいにして欲しい。

すごく、すごく、して欲しい。

「…カカシさん」
「なぁーに?」

困り果て、カカシさんを見上げても自分から動いてくれる気配はない。
カカシさんの指の間で溶け始めたチョコの香りが鼻腔を擽る。
指の間を滑り始めたチョコにカカシさんの視線が逸れると、思わず。

その手を掴んで口元へと運んだ。

指ごと口に含んで吸い上げると、ちゅっと音が鳴った。
心臓がばくばくしてチョコの甘さも分からないでいると、指と唇の隙間から柔らかいものが滑り込んできた。

「んっ!ふぁっ、あっ・・」

指に押されて内側から口を開かされる。
大きく開いた口にカカシさんが押し付けるように舌を差し込んで指と一緒に口の中を掻き回した。
閉じれなくなった唇の端から唾液が溢れ出し、頬を伝う感覚を嫌って顔を背けようとしたが許してくれない。
深く唇を合わせたまま、腰を抱いていたカカシさんの手が下りて内腿を撫ぜた。
大きな手がぐっと腿を揉むと外へと広げるように押してくる。

「あっ・・、カカっ・・さんっ」

押されて出来た隙間へ性急とも言える動作でカカシさんが体を割り込ませてくる。

「イルカセンセ…アナタ、・・ヤバすぎ・・」

重なった体を揺すり上げられて悲鳴を上げた。
中心はとっくに熱を孕んでいた。
硬い腹筋で押しつぶすように擦られて、このままイってしまいそうなほどの快楽を得る。
だけど、まだイキたくない。

「んぁっ、やっ!・・い・・っしょ、じゃないと・・、や・・っ」
「いいよ、イって、いいから・・」
「いやだっ、やぁ・・っ」

体を硬くして震えながら射精感に耐えていると、体を起こしたカカシさんがすごいスピードで俺の服を剥ぎ取りだした。

(わかってもらえた)

嬉しくなって笑みを浮かべると、服を脱ぎかけてたカカシさんが眉尻を下げて困ったように笑う。
再び覆いかぶさってきたカカシさんが頬に口吻けられて、弾みで目からぽろっと涙が零れた。

「ガマンできる?」

涙を啄ばみながら聞いてくるカカシさんに頷き返して頭を枕に沈めた。
足を広げられ、口に含んで唾液を絡めたカカシさんの指がお尻の狭間に降りてくる。
俺の限界が近いのを知っているから余計な愛撫は一切無かった。
馴らすように入り口で円を描いていた指が中へと入り込んでくる。
一度根元まで埋めて引き抜くと、もう一度唾液を絡めて今度は中を広げるように埋め込まれた。

「んっ、ん・・っ」
「大丈夫?イルカセンセ・・」

苦しくなってきて上手く返事も出来ない。
中を掻き回されるとそれだけで体が熱くなってもう達してしまいたくなる。

「カカシ・・さん、も・・、・・っ」
「まだだよ。もうちょっとガマンして」
「は・・く・・、カカ・・さん、はや・・、ひっ・・、ぁっく」
「イルカセンセ・・、そんなに煽らないで・・」

思考が上手く働かず、早く、早くと繰り返した。
イってしまわないように中を解すカカシさんの愛撫はもどかしいばかりで辛くて涙がぼろぼろ零れた。

「・・ゴメン。ちょっとだけガマンしてね」
「な・・に・・?あぁっ!」

カカシさんが勃ち上がった根元を手で締め付け、中の指を増やした。
纏めた指を出し入れされ、体の中に飽和しそうなほど熱が溜まる。

「アッ!アッ!やだっ!もうイれて・・っ、・・イれてっ!!」
「・・・イルカセンセっ」

ぐちゃぐちゃに泣いて懇願すると指が引き抜かれ、ぬめりを纏った熱が入り口に触れた。
体を折り曲げるように膝を押し上げられ、ぐぅっと圧し掛かってくる体重と一緒に熱が入り込んできた。
奥まで熱が届くと同時に根元を締め付けていた指が外され、数度熱を叩き付けられただけで耐え切れず前を弾けさせた。
絶頂を迎える間だけは動きを止めていてくれたカカシさんが快楽の余韻に浸る間も無く動きを再開する。

「ひぅっ、あぁっ・・、ま・・って・・、ま・・っ・・」
「ムリ。イカせて・・」

カカシさんが切れ切れの息で言うと激しく腰を打ち付けてくる。
掠れた甘い声に体が震える。
中の感じるところをぐいぐいと擦られるとイったばかりだと言うのに中心が力を取り戻し始めた。
それに気づいたカカシさんの手が前に絡む。
ヌルヌルのそこを扱かれ、先端の小穴を苛まれる。
死にそうに呼吸が苦しいのに、体は再び絶頂へと駆け上がろうとする。

「うぅ・・、アあぁ・・やめて・・、死ぬ・・・しぬ・・」

うわごとのように呟いて首を振れば、カカシさんの手が髪を撫ぜた。
唯でさえ苦しいのに唇を唇で塞がれて体が痙攣する。

「いっしょにイこ。オレといっしょに・・」

そのとき湧き上がった幸福感をなんと言えばいいんだろう。
その時はもう泣いていたけど、違う涙が溢れて必死にカカシさんへと手を伸ばすと抱きついた。

置いていかれないように、ただ一緒にいることだけを考えて。



後編→
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