箱
突き上げられて湿った息が漏れた。
穏やかな抽送にじわじわと腹の奥が歓喜する。「ふっ・・う・・あ・・っ」
切れ切れの声に、潤んだ視界の先にいるカカシが口角を上げた。
ゆっくり引き抜いて、体を押し上げるように突き上げるから勃ち上がった所がふるんと揺れた。「かわい・・」
カカシの視線の先は俺の性器だ。
何度言っても止めない意地の悪さにむぅと口を尖らせると、気付いたカカシがへらっと笑った。「ホラ見て、イルカのココ。気持ちイイって」
ココ、と示す様に体を揺すられて前がふるふる揺れる。
「もうっ、やめっ・・!」
それでも本気で怒れないのは、カカシが意地悪からそうするのではなく俺のその姿を見て喜んでるのを知っているからだ。
欲情した俺を見て、カカシが嬉しいと笑う。
怒って見せた俺に構うことなく、カカシが膝裏を掴んでいた手で大きく足を割って繋がった所を露にした。
ゆっくり腰を引かれると腹の中が空になる。
薄く引き延ばされた粘膜はみっちりと肉棒に纏わり付き、熱に追い縋った。「あっ・・、やっ、やあ・・っ」
腰を上げて熱を飲み込もうとしても、足を押さえつけられて叶わない。
先だけ含まされた状態で身悶える俺を堪能してから、カカシが俺の鼻先に顔を近づけた。「もっと?」
「んっ!もっと・・もっとぉ・・」
「ん。」
「あっ、あっ」ぐぐっと熱棒を捻じ込まれると射精感が込み上げる。
前が何度も勃ち上がって今にも吐き出しそうになった。「アッ・・、イクっ・・イク・・ッ」
「まだだよ」
「ひゃあぅ、ああっ・・!」ぐりっと腹の中を大きく抉られれ目の前に光が散った。
カカシの言葉通り快楽は満ちているのになかなか射精出来ない。
激しい抽挿にじんじん痺れた性器の先っぽから先走りを撒き散らして喘いだ。
ぐちゃぐちゃに腹の中を掻き乱され、あまりの快楽に体中が痙攣した。キモチイイ、キモチイイ。
頭の中はそれだけでいっぱいで、だらしなく開いた唇からは唾液が零れた。
カカシが卑猥に腰を回す。
その度に体が跳ねて限界を訴えた。「も・・イクっ・・、もう・・い・・」
「だぁーめ、もう少し付き合って」イヤイヤと首を振って性器に手を伸ばすと、カカシが押さえつけていた足を肩に掛けて手を取った。
「や!」
「おねがい、もう少しだけ・・」もう片方の手も取られてシーツに縫い付けられる。
そうして動けなくしてから中のカカシが先端で前立腺を擦り上げた。「ああっ・・ああっ・・」
「ホラね、まだキモチ良くなれる」コリコリとそこだけを執拗に擦られて大量の先走りを零した。
マグマが溜まったように腹の奥が熱くなる。「アアッ・・イきた・・、イ・・きたい・・っ」
啼いて強請れば、ちゅっと唇の上で音が弾けた。
「しっかり捉まってて」
肩にあった足を外して腰へと導く。
そこに足を絡めてカカシの体を引き寄せた。もっと・・、奥に・・。
頂戴と目で訴えるとふわっと笑ったカカシの手が背に回った。
しっかり抱きしめられて、律動が始まる。
駈け上がるための動きに呼吸を合わせた。
狭い腸壁を激しく擦られる。
カカシの熱棒から快楽が溶け出して腸へ染み入る。
ぐちゅぐちゅと泡立つ水音と荒い息遣いに耳からも犯される。「あ、あ・・、カカシ・・カカシぃ・・」
自らも腰を振って絶頂を目指した。
「はっ、スゴい・・キモチい・・」
熱い息が唇に触れ、貪るように重なる。
舌を差し出し、背に手を回すと律動は更に激しくなった。あ、あ、あ!
声にならない息が喉の奥で弾ける。
「――!――っ!」
「っ!」最奥を一際深く穿たれて、塞がった唇にくぐもった声を上げて弾けた。
びゅるる、びゅるっと噴出す前に後ろをきつく締め付けてカカシも弾けた。
開放の衝撃に動きも呼吸も止める。
やがて引いて行く熱に快楽の余韻に浸りながら、先に動いたのはカカシのほうだった。
唇を離して招き入れていた舌を開放する。
口を開いたままぜいぜい喘ぐ俺の濡れた口の周りを舐めて世話を焼き始めた。「だいじょーぶ?」
労わる声音に何もしないでいると涙の跡も啄ばむ。
ぐちゅっと湿った音を立てて、カカシが腰を引いた。
ぬるんと滑る感触に体を震わせると、顔に張り付いた髪を後ろへと撫で付ける。「少し、寝る?」
頬を撫ぜる手が気持ちよくて目を閉じるとカカシが俺の頭を抱え込んだ。
ちゅ、ちゅっと額を啄ばまれる。「なんか今日のイルカすごかったね。エッチくて、キモチよかった・・」
上機嫌で言って髪を撫ぜる。
恥ずかしくなって赤くなった顔はカカシの胸に押し付けて隠した。
くすくすと笑う声が聞こえる。カカシだけが俺のこんな姿を知っている。
13で初めてカカシと肌を重ねてから、俺は他の人肌を知らない。
それから10年、カカシだけが俺を抱いた。
俺はカカシしか知らないけれど、自分のしていることが恥ずかしいことだと知っている。
時々、カカシが傍からいなくなったらと考える。
この先一人になったら、こんな風に誰かと一緒に過ごしたりするのだろうか。
そこまで考えて想像を打ち消した。
他の人となんて考えられない。
他の誰かにこんな姿を見せるなんて出来ない。
不安が重く胸を塞ぐ。
カカシはいつまで俺の傍にいてくれるだろう・・。「・・眠っていいよ」
優しい声が耳に届く。
背中を抱きしめる手にほっと体から力を抜いて意識を沈ませた。
今は、カカシはこんな俺を受け入れてくれている。眠りに落ちる前、そっと鼻の傷に触れる手と暖かな唇にほんの少し哀しくなったが瞬く間に眠りに落ちて、哀しいことの蓋を閉ざした。